「オルドル」は秘密の合い言葉 ― F・クープラン《クラヴサン曲集》に寄せて
私事で恐縮だが、わが母校では学校関係者全体を指して「社中」という言葉を使う。茶の湯か邦楽でもたしなまない限り会話に出てくるような単語ではない。それなのに「社中」なる言葉を使い続けるのは、わが母校が気障だからということもあるけれど、理由はそれだけではない。集団の中で特別の意味を与えられた言葉を使うことが、関係者の連帯感を強める。どんな集まりにもあり得る、ありふれた性質だ。
ところが、そんなありふれた事柄も、いざ外から眺めるとミステリアスに映るもの。「オルドル」という言葉もそういったもののひとつだろう。「オルドル」とは組曲のこと。組曲は舞曲をいくつか集めたまとまりで、時代により作曲者により、様々な舞曲や小品が加えられたり省かれたりした。
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