音盤比較 バッハ《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》
無伴奏作品の最高峰
バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」は、当時のヴァイオリン技法の粋を集めて書かれた曲。バロック期、ひとりで何役もこなさなければならないこうした無伴奏作品が作られ始めた。ドイツ語圏ではH・ビーバーやJ・P・ヴェストホフらも同種の作品を書いていた。そのうち音楽的な内容の点で頂点を極めるのがバッハの「無伴奏」だ。「楽曲への共通理解」の層、「楽譜の読み方の妥当性」の層、そしてそれらを現実世界に鳴り響かせる「身体や楽器の合理性」の層が折り重なり、演奏者の両肩に乗る。
そういった事柄がもっとも総合的に求められるのは「パルティータ第2番」の「シャコンヌ」だろう。だからこの曲集の「聴き比べ」をすると、どうしても「シャコンヌ」の聴き比べになるのは致し方のないところ。今回はこの「シャコンヌ」に加え、その手前の「ジグ」を取り上げていくつかの演奏を比較してみよう。「ジグ」の演奏を比べることで舞曲全般に対する目配りのほどを、「シャコンヌ」の演奏を比べることでひとりで何役もこなすヴァイオリニストの「名優ぶり」を浮き彫りにしたい。
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