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加藤はいね文章スタイル入門
面白い文章を書きたい。
前に書いた通り、自分の読みたい面白い文章を自分で書けたら最高だ。
「面白い文章って、どんなの?」と問われたら、ネット界屈指の面白文章、「私の時代は終わった。」の加藤はいね先生のブログを挙げる人も多いのでは? 知らんけど。ともかく私は先生のブログが面白くて好きだ。
しかしながら令和元年現在、先生のブログの更新頻度は年1回以下だ。最終更新は2年前の令和マイナス1年である2017年。先生の文章をもっと読みたい。
じゃあ、加藤はいね先生風の文章を書けばいいじゃん、と。
先生のような文章を自分で書いて自分で読めばいい。
どうやって書くか?
「加藤はいねのような文章が書きたい」と頭の悪い検索をしても、結果は自身の面白みが足りないがゆえ他の面白いブログの紹介する記事ばかり。「加藤はいねの正体は?次の更新は?顔は?恋人は?」なんてタイトルの「いかがでしたか?」ブログがいつでてきてもおかしくないくらいの情報不足だ。
なんとかして加藤はいね先生のような文章を産み出せないか。
ネット界において最も切り込んだ文章を書くやまもといちろう氏曰く、
佐々木:珠玉のエピソードならもちろんそうだと思うんですけど、今日の趣旨的にこの加藤さんの文章、スタイル、書き方の何がそれだけ優れていて、これだけ面白いんでしょうか。
やまもと:量産ができないですよね。量産して読み流してアハハという感じの人ではまずない。非常に綺麗につくりこまれた美術品をみるみたいなニュアンスですよね。
(ウェブで読める“名文”をたくさん集めた--ウェブ時代の文章読本より より)
確かに。真似できないのかもしれない。それでも量産を試みたい。
はいね先生をガンダムとしたら、せめてジムを量産したい。
はいね量産の暁には連邦などあっという間に叩いてみせます。
というわけで、文章上達道に入門し始めたばかりの私ですが「加藤はいね文章スタイル」の入門書を書いてみます。これを読んで、自分も含め量産型はいねになる人が増えることを期待しつつ。
よく出る言い回し
まずは基礎。文のお尻につく語尾から。
~のね、~よね
もうとにかく、貞子関連のもの、だいたい廃れてるわけ。
ビデオはないし、ブラウン管終わるし、井戸とかね、もう知る人ぞ知る。
貞子に先見の明が、全っ然ないのね。
(幻の「貞子VS伽椰子」 より)
〜わ
私のまわりの女子たちが、「キャッキャッウフフ」言いながら、まあいわゆる捕食されていく中、驚くほどの、この無事。
ほんと、巨人の食わず嫌い王にメニューとして出るわ。
奈良漬くらいのポジショニングで出るわ。
(魂のよもぎ蒸し! より)
~って
ミッチーサッチーのケンカに山本美月ちゃん放り込むって、もうね、絶対解決しないでしょ。火に油、焼け石に水、ヤムチャって言葉がよぎるわ。事務所がよく許可したよ。
(幻の「貞子VS伽椰子」 より)
~わけ
映画「進撃の巨人」を、あんまり凄くなかったって言う女子たちがいるわけです。3Dメガネ1つで、あんなに巨人たちがワラワラ飛び出してくるっつーのに!
私なんて、眼鏡なくてもめちゃめちゃ3Dで生きてるわけです。
間違いなく3Dの独身女子なわけです。触れます。語れます。
(魂のよもぎ蒸し! より)
~つって、~つってね
じゃあオマエ誰?っつってね。
全員がこっち見たよね。
そっからはもう死んだ田原総一朗みたいになってね、まあ「働いてて一番つらかったこと」みたいなトークテーマではね、「今かな」つってたよね。おのずと。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
〜けど
奈良漬と言えば、
最近、なんていうか、うちのウォール・マリアが臭う気がするんですけど。
(魂のよもぎ蒸し! より)
語尾を変えるだけで、だいぶ加藤はいね先生になれるってわけ。
次、先生の文章の見どころは巧みな比喩なんだけど比喩のあとの助詞ね。
(比喩)~くらい
他の研修が「ナースのお仕事」でいうところの「あ〜さ〜く〜ら〜!」くらいのテイストだとすると、「一時救命」の研修は「海猿」の「生きて還る!」くらいテイストが違う。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
(比喩)~みたいな
あー、クイズところ変われば!って山口さんが
あれほど口酸っぱく言ってたのに。
通っぽく「関係者以外」みたいなエレベーター乗ったら、
若干、お客に見せちゃいけない内部みたいなとこに降り立った。
(明日から本気出す! より)
(比喩)~ような、(比喩)~ように
先輩講師!先輩講師!つって、もうバックパッカーのように暮らしてた私の前にリムジンが止まるような甘い誘惑。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
比喩のあとにお決まりみたいな助詞をつければ、加藤はいね先生のようになれるってわけ。あとは比喩と語尾を含んだような文章を繋げる接続詞ね。
で、〜(んで、〜)
で、まあ、私は脱ぎましたよ。
で、ピンクのを被りました。
なんていうか、首から下がテルテル坊主状態の、いわゆるよもぎ蒸しのアレです。
(魂のよもぎ蒸し! より)
もう〜
もう「引退」の二文字が頭をかすめるくらいの腰痛。
マゲがあったら、ぽとりと取れるくらいの腰痛。
(人の宮殿を笑うなっ! より)
もうね、〜
もうね、黒船きたか!ぐらいの衝撃。 ロッキー改めペリーは、もう携帯をがっつりと開きながら、 「モア コミュニケーション、モア コミュニケーション」言って開国を迫ってくっから。
(これじゃないよ、駅前留学 より)
つーか、〜
つーか、怖くてゴー☆ジャスくらいの早さで、指したんですけど。 マダガスカル!くらいに指さしたんですけど。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
スタンス
で、文章の内容ね。
主には、永遠の処女・仕事できない・大人になれないという自虐ネタと、常人には起き得ないような珍妙な出来事から構成されているってわけ。
例えばこれ。
「露出狂に合うもオドロオドロしさで撃退する」っつー普通ありえない珍妙な出来事&同僚に伝えるも誤った情報が広まるという自虐ネタ。
他にはこんなん。
自虐的処女だけど器具を突っ込まれる子宮頚がん検診をするという珍妙な出来事って話。
どれも普通の人には日常の出来事になるけど、はいねフィルターを通せば珍妙な出来事に変わっているとも言えるわね。
高度な連続比喩
んで、加藤はいね先生文章スタイルの真髄、高度な比喩表現ね。
もうね、キン肉マンでいうなら火事場のクソ力、ガラスの仮面でいうなら「恐ろしい子!」みたいな、文章スタイルの話をするなら外せないことってわけ。
「高度な」っていうのはなんつーか、比喩から比喩への連続だったり、連続であるところを一つ飛ばして比喩したり、単発比喩かと思いきや後になって帰ってくるブーメランだった、みたいな国語の授業では教えてくれないくらいのレベルってことなんですけど。
例えばこれ。
こぼれ球拾いに行って流れ弾に当たるっていう斬新な怒られ方したのね。
ああ、あのSMAPが口酸っぱく言ってた青いイナズマってこれかなってくらい、もうね炎・カラダ・焼き尽くすくらい怒られました。ゲッチュ。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
これ、「怒られる」→ (「雷が落ちる」) → 「青いイナズマ」→「ゲッチュ」っていう比喩へ飛躍なわけ。比喩が飛んだりしたり、無駄に比喩が派生していくと普通なら散らかった文章みたいになるんだけど、これを笑える文章に仕上げてくるのは加藤はいね先生の力量でしょうね。
次、これはもっと飛躍してる。
35年待ちに待った白馬の王子だってね、もうそこのタバコ屋の角まで来てると思う。
白馬なんかで言えば、もうギリ寿命ですよ。けど来るの。
なんなら王子がスーホ状態で死んだ馬の馬頭琴かきならし、ベビベビベイビーつって布袋みたいに登場するんです、あの角から。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
「白馬の王子様」→「白馬」→「スーホの白い馬」→「馬頭琴」(→「ギターっぽい」)→「布袋寅泰」
っつーコンボ。この流れるような比喩の連続は芸術ってくらい。「声に出して出して読みたい日本語」に掲載されてないとおかしいわ。
あと最後これ。
ミケランジェロが作ったんじゃない?ってくらい美しい露出狂の露出棒。
北斗神拳くらったくらいの衝撃で「だ び で っ!!!」っつって、私はもう死んでいる!
(露出狂にあった話をします より)
1「美しいもの」→2「ミケランジェロ」→3「ダビデ像」→(4「『ヒデブッ!』っぽい」)→5「北斗の拳」→6「お前はもう死んでいる」
っていうトリッキーなコンボ。連想としてはこの数字の順の流れなんだけど、古文読む時のレ点でもついているのかってくらい、文章中では連想がいったりきたりしているわけ。どういうことかと言うと、文章の順で比喩だけそのまま抜き出すと、
2「ミケランジェロ」→1「美しいもの」→5「北斗の拳」→(4「ヒデブッ!」)→3「ダビデ像」→6「お前はもう死んでいる」
になっているわけ。この揺り返しの構成が脳みそに「面白い」という信号を発生させるに違いないわ。
高度な伏線回収
んで加藤はいね先生は、連続比喩のように短い文章の表現だけではなく、文章全体の構成でも仕掛けを入れてくるの。
例えばこれ。
引用すると長くなっちゃうので、かいつまんで内容を説明するわ。
手違いで子宮頸がん検診を受けることに
→ 検診時、スカートでくればパンツ脱ぐだけで恥ずかしくない裏技を利用しようとするも、股下があるキュロットで来る
→銭湯にてタオルで股間隠すようにキュロットを股に添える異様なことに
→検診の先生がまさかのレフェリー角田信朗似
→先生が機械で股を開くも痛すぎて限界
っていう場面でこちら。
先生も、結構じれったくなったのか、ラスト20度くらい一気にいったよね。
もう白目ですよ。
ほんと軽くキュロットとか投げたよね。セコンドがタオル投げるみたいに。
文章の後半になって、前半に出てきたキュロット添えと中盤に出てきたレフェリーの伏線が回収されるという。
キュロットが響き似ているので「カカロットー!」って叫んだり、キャロットにも似ているからステーキに人参ソテーのごとく添えてみたり、というくだりを挟んだりしているから、遠巻きの揺り返しがまた笑いシグナルを誘発するってわけ。
他の記事でもそうなんですけど。
もう全部は説明しないけど、前半の平野ノラと矢口真里という伏線が、後半にどう回収されるのかに注目して読んでほしいわ。
比喩のネタ元
最後、比喩につかわれるネタ元について。基本的には90年台・00年台のテレビやマンガがネタ元なわけ。
まずマンガ・アニメ。
ドラゴンボール
ピザ屋のお兄さん到着した時、財布出しながら、突然もっかいイクラを吐きました。
まさかのアンコール。
トナカイの角つけた細っそいお兄さんと一緒に、加藤イクラリエ見た。
イクラリエっつーか、もうなけなしの7粒くらいしか出てこなくて、
ちっちゃいドラゴンボールを、細っそい神龍の前に出した感じになったんですけど。
(この人には指一本クリスマス! より)
っつーか、ドラゴンボールに限らず、ワンピースや北斗の拳などジャンプ系は新旧問わず頻出するわ。
ガラスの仮面
他の看護師より知識もない。経験もない。引き出しもない。
でも、私ほどガラスの仮面を読んでる人はいない。
私にできるのは、15人を引き付けるマヤの演技。
ああ、月影先生・・・これがあの紅天女なのね・・
そんな感じでうちの班だけ若干ドラマティックに演習を終えて、今度は、高性能の心肺蘇生訓練用人形サトルを使っての、本格的にデモンストレーションとなった。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
ドラゴンボールとガラスの仮面は頻出表現のツートップ。誕生日にその2つを読んで過ごすくらいに。
あと少女漫画でいうと、ベルサイユのばらも何度か出てくるわ。
他にもマンガ・アニメでいうと、エヴァンゲリオン、ナウシカ、進撃の巨人などが登場してくるわ。
映画
ブログ記事に映画を見た内容とかあるし、本人「映画通」って言っているくらいですし、映画が比喩のネタ元になっていることが多いです。
例えば、
(ヨモギをグツグツ煮込んで湯気を上げつづける股下にある)土鍋は絶好調。
シュワちゃんが指を立てながら沈んでった溶鉱炉ってここじゃないの?ってくらい。
(魂のよもぎ蒸し! より)
とか。あと映画として、ハリーポッター、貞子がかなりお気に入りみたいね。
芸人
お笑い芸人比喩も知ってて当然ってくらい入ってくる。
(師長)「もう一回やってくれる」
(はいね)「えっと・・大丈夫ですかー?!わかりますかー!」
「ダメ」
「大丈夫ですかー!!」
「ダメ」
「大丈夫ですかー!!!」
もうブラジルのみなさーん!くらいの声は出した。
手でメガホンも作った。
(オッケー、キリスト。ところで、あたしの誕生日の話も聞いとく? より)
つーか、「ブラジルのみなさーん!」にはサバンナ八木の一発ギャグであることの説明すらないわけ。常識なのね。
マニアック
咽頭バージンが全然捧がらない。
おっきぃぃぃいいぃい、こんなの、はじめてぇええぇって、水揚げされたエビみたくなったんですけど。クリムゾン先生が描いたくらいビクンビクンってなってたんですけど。
(処女航海は今日も荒波! より)
もうね、多くは語れない。クリムゾン先生の知名度はどのくらいなのか。
つーわけで、こういうマニアックなネタから、紹介しなかったけどベートベンやヘレン・ケラーなどの偉人ネタまで、一度使ったネタは二度と使わないのがポリシーなのか、非常に多岐に渡ったネタ元がでてくるわけ。
まとめ
つーか、加藤はいね先生の文章スタイルだけ学んでも、芸のない新人が宴会でパワハラれてやる「おっす!オラ悟空」ってくらい陳腐なわけ。
サイバイマンにヤムチャなわけ。
2代目はいねを目指すなら、アイデンティティ田島ならクリカン方式で野村雅子の後継者になってもおかしくない、ってのと同じくらい比喩センスを鍛え抜くことが必要ね。もしくは超神水をちびりとやるとか、文章界のカリン様がいるなら。
みんなも鍛えていかない?
ほら、加藤はいねスタイルが世に増えれば、処女のままで遺伝子リレーのラストランナーかもしれない彼女も、行きた証が残り報われるってわけ。そのための加藤はいね量産計画なわけ。
さぁみんな! レッツ、ジェネリックはいね!
ってか、このまとめ自体が新人の棒読み「オラ、わくわくしてくっぞ」みたいな陳腐さよね。甲羅背負って牛乳配達ばりの修行を続けるわ。