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ジレンマが浮き彫りにするナラティブの重要性

こんにちは。GCRMパートナーズの杉山です。
今回は、ジレンマについて書いていきます。

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世の中はジレンマに満ちている

「ジレンマ」と言う言葉、皆さんはもちろん聞いたことがあると思いますが、それを聞いて頭の中に何を思い浮かべますか?
 
人材育成業界で有名な中原淳先生は、その著書の中でジレンマを
『 どちらを選んでもメリットもデメリットもあるような2つの選択肢を前にして、それでもどちらにするかを決めなくてはならない状況
と定義されています。
「にっちもさっちもいかない」そんな「タフなシチュエーション」とも書かれています。
 
これらももちろん正しい定義ですが、これからのリーダーの皆さんは、2つの選択肢のどちらかを決めるジレンマではなく、その2つの選択肢の両方を選ばなければならない状況に陥ることが多くなるように感じています。
別の言い方をすれば、白または黒を選ぶのではなく、その中間のグレーのグラデーションのどこかを選ばなければならない状況に置かれていくのではないか? と思うのです。
以下に、その例をいくつか示してみます。

たとえば、ESG。
昨今、企業は、株主や投資家などのステークホルダーに 「 わが社は、ESGについてはこれらの取り組みを行うことで、世界の持続可能性に貢献しています。」と、明確に開示する必要があります。
さらには、取引先からESGに関わる一定の項目を満たしていることを、取引の契約条件の1つに指定されることもあることでしょう。

一方で、自社のビジネスに目を向けた場合、ESGのすべての取り組みに対応していては、自社のビジネスが立ち行かなくなることもあり得ます。

リーダー達は、ESGに関連する数多くの項目から、自社が対応すべき項目を選択し、さらに、それをいつまでに、どのレベルで対応するのかを意思決定し、社内外のステークホルダーに周知する必要があります。
つまり、リーダーには「 やるか、やらないか 」ではなく、「 なにを、どこまでやるのか 」という説明をする責任が生じます。

別の例で言えば、多様性。
組織の中に多様性が存在することの重要性に疑問を持つ人は、もはやいないと思われます。「多様性のあるチームからイノベーションが生じやすい」ということはすでに周知の事実であり、また、働き方の多様性も含めた「個」の尊重の必要性もあちこちで目にすることでしょう。

一方で、「多様性」と「わがまま」はある意味で紙一重。人が10人いれば、10の異なる意見が存在することは当然のことであり、そのすべてを尊重していたのでは、チームとしての統制が取れず、結果として成果を出すことに支障が生じることもあり得ます。
そうならないためには、チームリーダーは多様性を担保しつつも、同時にチームとして成果をあげる方法を考えなければなりません。

前述のESGの例と同様に、「 この部分は多様性を認めるが、これらについては、多様性は認めることは難しい。その理由は、XXXです。 」というような、リーダーの意思決定が必要になり、またその説明責任が生じてくるのです。

ナラティブの重要性

このように、「 やるか、やらないか 」のジレンマではなく「 なにを、どこまでやるのか 」というジレンマの場合、その白か黒ではない、グレーのグラデーションの「 この濃度 」に決めた理由や今後の進め方を、チームにわかりやすく説明することの重要性は、より高まります。
なぜなら、チームのメンバーが、その意思決定の内容を同じレベルで理解し、実行して、初めてビジネスとしての結果に繋がるからです。

チームのリーダーは、「 詳細まで言わなくても、何となくわかるよね 」というハイコンテクストな説明ではなく、例えば昨日そのチームに配属された人でも正しく理解できるような、誰にでも理解できるローコンテクストな説明をする必要があります。
さらに、その説明はロジカルであり、聞いている人に納得してもらえるような説得力を持たせる必要があります。
リーダーはどのように話すべきでしょうか?

そのような語り方、語る内容、語り口を「ナラティブ」とよび、これは、これからのリーダーの持つべき重要スキルの1つと考えられています。

背景が異なる相手に対しても、誰もが理解できるわかりやすい語り方ができる。また、説明内容を理解してもらうだけでなく、聞き手がその内容を納得し行動変容に至り、最終的にビジネスの成果に繋がることが、このスキルの究極のゴールです。

話し手責任のコミュニケーション

「言わぬが花」や「言わぬは言うに勝る」などのことわざがある日本。
他国に比べて単一民族の人口構成比が高いこともその要因の1つかもしれませんが、「皆まで言うな」という文化があることは否定できません。
しかし、これからのビジネスを考えると、
「皆まで(100%)明示的に伝える(なんなら、念のため、120%くらい説明する)」
と言うマインドセットへの転換が必要な時期に来ているのかもしれません。
そのような研修プログラムのニーズも、少しずつですが高まってきています。

グローバル標準では、一般的には聴衆が内容を理解したかどうかは「話し手責任」と言われており、もし相手に正しく伝わらなかったとしたら、それは話し手の言い方が悪かったこと。
話しが理解できなかったのは聞き手が悪いという日本の「聞き手責任」の考え方とは真逆であることも、ナラティブの重要性が増してきたことに関与していると思われます。

 

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