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エビデンスと直感


人の属性には、不変なものと変化するもの(可変)がある。

DNAは不変だけど、お腹の脂肪は変化する。

肉体の死を避けることはできない。という不変性を持ちながら
生きている間は年齢とともに肉体は変化する。病気にもなり、死を早めることもある。
常に変化する。

では、「心」はどうか?
人は子供が生まれると必ず育てる。小さな赤ちゃんの笑顔を見ると笑顔になる。
深い愛のつながりの為には、命をかけて守ろうとする。多くの人が社会を「より良くしようと考えている」
同時に、人を騙して詐欺をしたり、相手を叩きのめすようなこともする。

肉体も、心も不変の設計図を持ちながら、同時に環境によって変化し続ける(可変)ものだと思う。

さて、昨今ストレスが注目されている。
ストレスチェックなるものが国から提供され、ストレスが高いことで様々な課題が発生するから、会社のストレスを測定しましょうという趣旨だと理解している。
(私の会社は3年連続ストレスチェックで日本一ストレスの少ない会社に選ばれている)

ストレスの少ない状況が幸福
ストレスの多い状況が不幸、と仮に定義したとする。

1000人にアンケートをして、
「人前で話すことはストレスですか?」と質問をし
90%がストレスであると答えた場合、

「なるべく人前で話す機会を減らすべき。」

という施策は正しいだろうか?

結論から言うと、「そんなわけない。」と僕は思う。
端的に結論を言うと、人の心は可変だから。

人前で話すことは、周りの目を気にしてしまう、本人の可変な「自己肯定感」みたいなものに影響を受ける。
日本が「同調圧力が強い国」という可変な背景も手伝って、

「人前で話すことがストレス」9割という結論が導き出される。

「なるべく人前で話す機会を減らすべき。」
という施策ではなく

「組織の同調圧力を減らす努力」
「メンバーの自己肯定感を高める努力」

をすることの方が意味があると僕は思うが、どう思うだろうか?

同調圧力や、自己肯定感という、心の可変領域にアプローチする。

では学術的に、統計的に「どんな環境がストレスか?」を調べようと思ったとき
どのようなアプローチが適切だろう。

やはり、1000人に
「人前で話すことはストレスですか?」と聞くしかないと思う。

「現時点で1000人中9割の人がストレスであると感じていますよ。」
原因とか対策はちゃんと何が可変か考えてくださいね。と思いながら。

私達の会社が
エンゲージメントの高い状況にある。
活力が高い状況にある。
社員のウェルビーイングが高い状況にある。
心理的安全性が高い状況にある。
ストレスの少ない状況にある。

を例えばのゴールに設定して

その為には
朝礼をやっている
誕生日を祝っている
目標管理をしっかりしている
業務外の時間を一定量取っている

目標を達成している会社は、8割◯◯をやっている。

「だから、◯◯しよう。」

という施策に僕は「そんなわけない」と思う。

かといって、その◯割がストレスを感じている。というデータに意味がない訳では無い。
特にデータの対象が不変を扱っているか、可変を扱っているかは重要な視点だと思う。

データは測定することで、変化を測ることのできる貴重なものだ。
リーダーが直感的に打った打ち手の変化を測定する。なんとなく感じている課題の裏付けや、より良い成果が出ているチームの背景をチェックするための参考にもなる。

データを見て、データの裏に流れる人の可変な気持ちの流れを掴むことで適切な打ち手が打てるのだと思う。

エビデンスは思考停止の機能をもつ。
「人前で話すことを9割の人がストレスに感じています。その対策として」と、会議が始まると

思考は表面を上滑りする。
数値化されることで議論や思考が深まらなくなるリスクをリーダーは十分に理解しなくてはいけない。
それは直感力というものの範囲な気がする。


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西坂勇人/GCストーリー
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