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自分が考える良いカジュアル面談
これは Engineering Manager Advent Calendar 2024 3日目の記事です。
先日仕事でお世話になっている Findy さんのイベントに参加させてもらった時に、「岩崎さんは20人連続カジュアル面談からの選考希望ですごい!」という話になり、カジュアル面談について少し話す機会があったので改めてまとめてみたい。
上の話は正確には24人連続選考希望で25人目で途切れてしまった。Findy 以外の採用媒体も合わせると通算選考希望率は8割くらいだと思う。それなりに高い方だとは思うが、決して自分は話すのがうまいわけでも人間的な魅力があるわけでもないので、自分でもなんだか不思議な感じがする。
元々大々的に公開するつもりはなかったのですが、せっかくなのでアドベントカレンダーに参加してみました。自分にとっては当たり前でも一般的にはそれほど当たり前でないこともあるかもしれないですし、少しでも誰かの参考になれば幸いです。
良いカジュアル面談とは
自分が考える良いカジュアル面談とは、面談を受ける候補者のことを第一に考えるカジュアル面談である。その点において、カジュアル面談は相互理解の場であり候補者と会社は対等であるという考え方からは少し外れるかもしれない。もちろん候補者と会社が対等であることに異論はないのだが、もし会社側のゴールが候補者に良い印象を持ってもらうことであるならば、より候補者の側に立つべきであるとは思う。
準備
カジュアル面談をするにあたって、自分は候補者の情報は隅々まで必ず目を通すようにしている。プロフィールだけでなく、ブログがあればブログも読むし、 GitHub があれば GitHub のリポジトリも眺める。その人がどういう考え方を持っていて、どういうキャリアを歩んでいて、これからどういう人生を生きていきたいのかを想像する。趣味が書いてあると話のネタになるので嬉しい。15分〜30分くらいはこれをやる。
自己紹介とアイスブレイク
どのカジュアル面談でも最初は自己紹介やアイスブレイクから始まると思う。当たり前かもしれないが、礼儀として必ず自分から自己紹介するようにしている。そして自分の自己紹介が終わったら、相手にも簡単に自己紹介してもらう。すでにプロフィールには目を通しているのですが、もしよかったら自己紹介をお願いできますでしょうか、という感じで。
自己紹介にとどまらず、面談や面接においてこの双方向性は意外と大事なんじゃないかと思う。バランスが難しいのだが、一方的にこちらから話してばかりだと相手に興味がないように思われてしまうし、逆に質問してばかりだと面接っぽさが出てしまう。それも相手を尊重してない気がする。
自己紹介では大体最後に(これは余計かもしれないんですがという感じで)趣味を付け加えるようにしている。そうすると相手も趣味を話してくれたりするので、アイスブレイクに持っていきやすいし、どことなく親密感が出るからだ。
アイスブレイクは上記の趣味の話か、事前に候補者のプロフィールを眺めて話題にできそうなこと、聞いてみたいことを話している。例えば
・旅行がお好きなんですね!自分も旅行が好きで最近はここに行きました。最近はどこかに行かれましたか?
・めちゃくちゃ登壇されていてすごいです!登壇するようになったきっかけは何かあるんですか?
といった感じだ。趣味の話は必ずしもお互いに共通するものでなくてもいいと思っていて、知らない話を聞かせてもらうのもそれはそれで楽しい。
最後に、こちらからいいねやスカウトを送った人の場合は、なぜその人にいいねやスカウトを送ったのか、どこに魅力を感じてどういうポジションで活躍してもらいたいと思っているかを改めて話す。これも大事。
面談
自己紹介とアイスブレイクが終わって、いよいよカジュアル面談の本題に入る。ここでは一定のフォーマットを用意しつつも、候補者によって自由に内容を変えられるようにしている。例えば、会社紹介資料を使って説明してほしい人にはそうするし、すでに資料は読んでいるから早速質問したいという人には質問してもらう。事前に質問をもらっている人には(もちろん事前準備済みの)質問への回答から始める。一般的には会社紹介資料を使って簡単に説明させてもらい、その後で相手からの質問に答えるというパターンが多いように思う。
説明中はついつい一方的な一人語りになりがちなので、「何かあれば途中でも気軽に聞いてくださいね」と添えている。もし候補者の人が興味を持ったパートがあれば、時間配分を変更してそちらを厚めに話す。
クロージング
一通り説明と質問が終わって時間が余ったら、逆にこちらからもいくつか質問させてもらう。面接みたいになっちゃって申し訳ないのですが、こちらからも質問させてもらってもいいでしょうかという感じで。先述の双方向性にも繋がるのだが、やはりお互いにやりとりした方がコミュニケーションが弾む印象がある。
終了の時間になったら、最後に候補者の方への感謝と改めて一緒に働けたら嬉しいこと、よかったら他のメンバーにも会ってほしいことを伝える。もちろん無理して嘘を言う必要ないが、もし本心からその人のことを素晴らしいと思っているのであれば、率直にちゃんと伝えるようにしている。
これは当然採用を確約するものではないけれど、候補者にしても自分のことを褒められ必要とされる感覚は悪いものではないと思う。少なくとも自分だったら嬉しい。逆にお互いいまいちフィットしない印象であったとしても、貴重な時間を割いていただいているわけなので、丁寧に感謝を伝えるようにしている。
全体を通して
加えて、全体を通して候補者が話しやすい空気作りを意識している。リラックスして話せるように笑顔で柔らかい話し方を心がける、リスペクトを持って丁寧に接する、ところどころで進め方は大丈夫ですかと気遣うなど。ちゃんと相手の話を聞いて話を広げたり、相槌を打って共感することも大事だと思う。経験上、少しくらいオーバーリアクションで楽しみながら話す方がお互いにとっていい時間になるように感じる。逆にあまりに淡々とし過ぎてしまうと、候補者に「私と話していて楽しくないのかな」と思われてしまうかもしれない。
とはいえ、自分も話すことは決して得意ではないし、いくら場数を踏んでもよく緊張してしまうのだが、そういう時は「本日はリラックスして話せればと思います!と言いつつ緊張してしまってすいません…笑」という感じになる。あるいはそれはそれでいいのかもしれない(すいません)。
恋愛と採用
最後に、二つほど余談を書きたいと思う。一つ目は恋愛と採用について。自分は恋愛と採用は似ていると思っている。言い換えると、好きな人に気持ちを伝えるように、候補者に接するようにしている。
例えば、自分の自慢話ばかりで相手に全く言及しない告白があったとしたら、それは私じゃなくても良くない?と思われてしまうだろう。これはカジュアル面談でも同じだと思う。自分(自社)の魅力を伝えつつも、しっかり相手に向き合い相手の魅力についても伝えることが大切だ。
また、色白で黒髪でスリムな女性が好きなので付き合ってください!(例です)というのも変な話だと思う。そうではなくて、あなたが好きだし必要だと伝えなくてはいけない。これは採用も然りだと思う。入り口でこういうエンジニアを探していてスカウトさせていただきましたは良いが、最後のクロージングでは他でもないあなたと一緒に働きたいんだと伝えるようにしている。
また、スカウトメールでいきなり候補日程が添付されているケースがあるが、あれを見ると「好きです!付き合ってください!僕の来週のデート日程候補はなんとかで…」と言われているようで、なんで承諾する前提やねんと思ってしまうところがある。が、これはおそらく少数派らしい。
心理学と採用
二つ目は心理学(あるいは文化人類学)の話。自分はあまり小手先のテクニックは好きではないのだが、一般論としてこういうのはあるよねということで。一つ目はラポール形成について。
心理学でいうラポール形成とは、相手と信頼関係を築くためのある種のテクニックのようなものだ。上で触れた尊重や肯定なんかもそうなのだが、その中で自己開示が重要であるとされている。
カジュアル面談で自分の話(ここでいう自分の話とは会社紹介ではなく自分という人間の話)をするのに違和感がある人はいるかもしれないが、ところどころで自分自身がどう思っているか、どういうモチベーションで今の仕事をしているかなどについて話すことで相手との距離が縮まる実感がある。
二つ目は返報性(文化人類学的には互酬性)について。返報性あるいは互酬性とは「何かをしてもらったら相手もその何かを返したくなる」という自然な心理作用のことである。例えば、感謝されたらこちらも感謝したくなるし、罵倒されたらこちらも罵倒し返したくなるという心理状態を指す。
これはカジュアル面談に限った話ではないが、自分が良い時間にしたいと思って丁寧に接していれば相手もそれに応えてくれ、結果的に良いカジュアル面談になっている印象がある。相手にしてもらいたいことがあったら、まずは自分からやってみよう!
終わりに
以上、カジュアル面談について自分が考えるあれこれを改めてまとめてみた。特に重要なのは「相手を第一に考えること」と「双方向性」だと思う。
この記事では良くないカジュアル面談については明示的に触れなかったが、仮に良くないカジュアル面談があるとすれば、それは相手の気持ちを全く考えず、一方的に自分の話ばかりする面談だと思う。そういった面談を受けた候補者はきっともし入社したとしても同じようにあまり尊重されず、一方的に命令されるのだろうなと思ってしまうに違いない。
とまあ偉そうなことをあれこれ述べてきたわけだが、決して自分のカジュアル面談が素晴らしいとは思っていない。日々試行錯誤である。ほんとうに。なぜなら人間に正解はないのだから。
皆さんが良いと思うカジュアル面談もぜひ教えてください!最後まで読んでいただきありがとうございました。