京都の神社・仏閣の秘密??

Ⅰ本研究の目的
本稿は京都市における神社・仏閣を対象として、その立地に関する地理的要因・文化的要因を明らかにし、京都市内に立地する神社仏閣の特性を考察することを目的にしている。
神社仏閣は、日本人のアイデンティティを構築するにあたって重要な場であり時代とともに変容を見せてきた。京都市内でも広隆寺や下鴨神社といった古くからの神社仏閣が現在にも存在し、京都市の歴史を見ると神社仏閣が時代ともに変化し人々のよりどころとして構築された。また、地域住民の場だけでなく風水などといった精神世界的な部分も取り入れ構築している。このような、神社仏閣が人々の文化的側面だけでなく地理的側面を含めて立地が行われ神社仏閣は多くの自然環境を鑑みたうえで景観を作り上げている。本稿では神社仏閣に比較的存在する湧水に着目し分析を行う。

Ⅱ 研究方法
調査対象地域は京都市であり、本研究ではIタウンページから神社仏閣をWATER - YGO-JAPANから湧水の位置情報を抽出した。基盤の地図はe-Statや国土数値情報センターから得たもの使用した。これらの空間情報をArcGISに使用し分析を行う。

Ⅲ 結果
Iタウンページの神社仏閣数は1020件であり最低でも、町までの位置データが加えられている(図1)。

図1

その後、1神社・2仏閣・3神社仏閣融合・4その他と情報を加え建物用途別の分析を行う(図2)。

図2

全般的に見るとやはり洛中に隣接する神社仏閣が多いようにわかる。また、図2のように建物用途別で分析を行ったもの神社仏閣の立地に大きな差はなく以後、神社仏閣とまとめて考察を行う。その後、神社仏閣分布にカーネル密度推定を行い(図3)

図3

分布の密集地を浮きでたせたうえで湧水・河川のデータを加えることで神社仏閣密集地と水場の相関性を出そうと試みたが湧水に関してあまり相関性は見ることができなかった(図4)。

図4

次に洛中に集中して分析を行う。洛中の場合は河川の先端または河川のほとりに神社仏閣が建設されていることが比較的多くみられる。また、神社仏閣の分布に関しては上京区・中京区・下京区に該当する地域に特徴的な分布が見られた。また、御土居のデータを加えると強い相関がみられた。

Ⅳ 考察
湧水に相関がみられなかった要因として正しいデータを得ることが難しかったことが考えられる。日本国内で湧水や湧水帯のデータが少なく分析が難しい。河川の相関がみられたことは京都市内には様々な庭園がありその中で水を使うことが比較的多いことや古来より身を清める際に清流を使いなど神や仏に対する敬意の現れとして水が使われてきたことが考えられる。洛中の神社仏閣の分布は御土居との関係性が考えられる。御土居とは豊臣秀吉が,長い戦乱で荒れ果てた京都の都市改造の一環として外敵の来襲に備える防塁と,鴨川の氾濫から市街を守る堤防として,天正19年(1591)に多くの経費と労力を費やして築いた土塁です(京都市情報館2021/07/15)。この御土居は洛中洛外を明確に区切るもので区画整理も行われた。この区画整理として寺町が作られたことなどから現在神社仏閣密集地が形成されていることにつながっている。結果として、京都市の神社仏閣分布に関して湧水との相関性は見ることができない。しかし、河川のとの相関性はみられた。また、文化的側面として御土居は神社仏閣の立地に関して大きな影響を与えたことが地図から読み取れる。

お土居図

参考文献・参考Website
日本史研究会編『豊臣秀吉と京都:聚楽第・御土居と伏見城』山中亜希2003/03/01
「城壁のない都市」京都の都市農業 末原 達郎
近世京都の名所案内記の順路設定にみる「洛中」「洛外」認識 菅井 聡子
京都市情報館 史跡御土居 2021/07/15
https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000005643.html
聚楽第と御土居 2021/07/15
史跡 御土居 文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課
https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000005643.html

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