見出し画像

幸福感のための人間関係。自分を知ることが第一歩!?#シアワセを紐解く

#シアワセを紐解く シリーズ 第4回。 前回は国によって異なる幸福観の違いについて考えました。今回は人間関係を切り口に幸福感について考えてます。どんな人間関係を構築すると幸福感をよく得られるのか、色んな視点で考察してみます。

1.幸福と人間関係

700人を75年間も研究した幸福の研究をご存知でしょうか?ハーバード大学医学部臨床教授のロバートウォルディンガー博士によるものです。この研究は、幸福のためには人間関係の質が重要だと主張しています。
https://www.ted.com/talks/robert_waldinger_what_makes_a_good_life_lessons_from_the_longest_study_on_happiness/up-next?language=ja
しかし、こちらは海外の論文。もしかしたら、日本では他国と比べて幸福感の感じ方が異なるかもしれません。今回は、まず日本の大学生を対象に、付き合いの数と質の観点から、人間関係のスタイルと幸福感の関係について研究した論文を紹介します。その後に、筆者なりの人間関係のありかたについて考察してみたいと思います。

(TEDで博士がプレゼンをしている様子です)

2.幸福感とつきあいの質と数

今回紹介するのはこちらの論文。京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子氏らが行った研究です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjesp/52/1/52_63/_pdf/-char/ja
こちらの論文の、一般的な人間関係において「その人がどんな人間関係を望むか」によって幸福感が異なることを論じた部分を簡単に紹介します。

この論文では学生のタイプを「開放型」と「維持型」に分けています。「開放型」は人間関係を広く求める人のことです。このタイプの人は、つきあう人の数の多いことが人生への満足感に関連していることがわかりました。「維持型」は既存の安定的な人間関係を維持しようとする人のことです。このタイプの人はつきあいの質への評価が、人生への満足感に関連することがわかりました。
ちなみに、「開放型」は「維持型」に比べて、より多くの人と良い人間関係を持ち、人生への満足感が高いようです。

3.人間関係で不幸にならない?

人によって適切な人間関係のあり方が異なることがわかりました。しかし、幸福であろうとすればするほど不幸に感じるリスクも増えるかもしれません。というのも、色んな調査で仕事のストレスの原因一位は「人間関係」に起因するものだということが言われています。いわば人間関係は両刃の剣であるのです。また、人間関係が深まれば深まるほど、それが失われた時には大きな悲しみが伴います。それはなるべく避けたいものかもしれません。しかし、人間関係で傷つくことは本当に不幸なのでしょうか?


4.不幸ってなんだろう?

この記事を書く前、筆者は「幸福の反対が不幸」だと思っていました。しかし、調べてみると幸福の反対は不幸ではないと言う識者が多いことに驚きました。例えば、バートランド・ラッセルは「幸福の反対は不幸ではなく、退屈である」と述べています。ケインズも、「退屈は経済的豊かさを克服した後に人類が直面する最大の危機である」(1)と述べました。一体、幸福の反対は「退屈」なのでしょうか? 人間関係で感じるストレスそれ自体は「不幸」と呼べるのでしょうか?

5.幸福感と不幸感のバランス。まずは自分を知ることがより良い人間関係を見つける第一歩かも?

幸福のためには人間関係が重要な要素の一つであることがわかりました。
そこで論文を紐解くと、人それぞれ幸福感の感じる人間関係のありかたが異なるかもしれないことがわかりました。一方で、人間関係はストレスの要因になることもわかりました。ただ、識者の言葉に耳を傾けると、ストレスそのものを不幸だと考えるには議論が必要なこともわかりました。

人間関係の数と質。それによって幸福感も変わりますが、連動して不幸に感じる機会も増えるかもしれません。
人によって言葉の意味は様々です。そうした言葉の多義性を踏まえた上で、不幸に耐えることを考慮して幸福感のある人間関係を考えると、その時の状況に応じて様々な判断がされるのだろうと思います。人間関係と幸福感の関係を一概に言うのは今回は難しそうです。けれども、幸福感も不幸感もどんな定義であれ、まずは自分のことをよく知って、自分の幸福感がわからないと、自分の、ひいては他人の幸福感を守ることは難しいのではないかと考えました。
今回は、大学生を対象にした研究を紹介しました。社会人の場合だと変わってくるのかもしれません。今後も「シアワセ」にまつわることを考えていきます。


参考文献:
(1) 袖川 芳之・田邊 健 (2007). 幸福度に関する研究 ~経済的ゆたかさは幸福と関係があるのか~ p11
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis182/e_dis182.pdf

文・構成・編集/中原まさひろ デザイン/蓮池しのぶ


いいなと思ったら応援しよう!