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乃木坂46と卒業
アイドルって卒業するものなんですか?
乃木坂46二作目のドキュメンタリー映画、『いつの間にか、ここにいる』の作中で、秋元真夏に投げかけられた質問だ。
この質問に、秋元は言葉を詰まらせ、静かに涙を流した。
女性アイドルは、男性アイドルと比べてその寿命が短い。男性アイドルグループが結成と誰一人変わらぬ顔ぶれで10周年を迎える中、女性アイドルグループはメンバーの卒業加入を繰り返し、世代交代を終える。
作中でも、「卒業」の二文字はどの場面にも付いて回った。
女性アイドルが背負う宿命、卒業。
卒業っていう形なんてなくていいじゃん。乃木坂が実家で、別の仕事をするんじゃダメなのかな。 (秋元真夏)
卒業は受け止めきれてない。
みんなとは考えてることが違ったんだなって。ずっとここにいると、みんなは思ってなかった。(高山一実)
「乃木坂」でいること、「乃木坂の仲間」といることに対する切実な思い。
7年目を迎えたグループのキャプテン、桜井は、卒業「しない」メンバーの核心に迫るコメントを残す。
思い出や、好きな子がいることが乃木坂にいる理由。(桜井玲香)
ドキュメンタリーの告知記事にもあった内容だった。
一期メンバーの言葉だろうな、とは思っていたが、乃木坂46のキャプテンである桜井の言葉だったことが、一層重みをました。
一人、また一人とグループを巣立っていく初期メンバーたち。
残された者たちは、好きな人たちが去っていくことに心を引き裂かれる瞬間を、後何度経験すればいいのだろうか。
舞台やミュージカルなと、グループ外での仕事に奔走する生田が、印象的な言葉を口にする。
乃木坂にいたいという思いが年々強くなっていく(生田絵梨花)
彼女の忙しさは、ドキュメンタリーとしてその姿を記録される前から、ファンですら理解していた。
握手会をはじめとするグループ仕事の欠席、数を重ねるごとに増えていく単身での仕事。
グループ内では留まらない、彼女自身の飛び抜けた音楽の才能。恵まれた機会。
次に卒業するのは、ひょっとしたら彼女なのではないかと思っていた時期もあった。
そんな彼女が、初期から隣に立っていた戦友が、面倒を見てくれたお姉さんメンバーが次々といなくなったグループに対しなお、「ここにいたい」と思っていること。
乃木坂46は、アイドルグループとしてのみメンバーたちの心に存在するわけではないのだろう。
48系列をはじめとする大型アイドルグループには、10年を越え在籍しているメンバーもいる。
しかしその人たちは、みんながみんな「その場所が好き」で残っているわけではない。
実際に、AKB48の一期生メンバー峯岸みなみはこう語った。
今は好きなわけじゃなくて、ここから出る勇気がないだけだから。
(ドキュメンタリー legend of AKB / 峯岸みなみ)
女性アイドルグループで過ごす時間は、自分の将来を選ぶためのステップであるという考え方もある。
その考え方に則ると、次のステージで成功できるのか、アイドルを辞めた自分は何者かになれるのかという不安から、グループを離れられない者も出てくるだろう。
しかし乃木坂には、それがない。
それがないと言っては過剰かもしれないが、他のアイドルグループよりもその一点に対する拘りは少ないように思えるのだ。
生駒里奈の卒業コンサートで、「生駒ちゃんがまだいたいって思えるグループに出来なかったのが悔しい」と齋藤飛鳥は語った。
生駒ちゃんが…「残りたい。まだ乃木坂として活動したい」と思えるグループでいられなかったことが…それがちょっと悲しいなとか、悔しいなって思っちゃってたんですけど。
(生駒里奈卒業コンサート/齋藤飛鳥)
乃木坂46のメンバーにとって、グループは将来のための一過性の居場所ではないのだろう。
秋元が言ったように、その場所が家で、家族で、家族が大好きだからそこにいる。
そんな当たり前の感情によって成り立っている集団が、たまたまアイドルグループという看板を背負っているだけなのかもしれない。
一緒にいることが当然の家族が、一緒にいられなくなること。それが彼女たちにとっての「卒業」が持つ、一つの大きな側面なのかもしれない。