都知事選とITエンジニア

なんかIT系エンジニア(or それに近しい人間)は安野たかひろ氏を推すでしょ当然みたな雰囲気感がX(旧twitter)で広まっているのでそうじゃないITエンジニアの僕もいるしそれなりの理由があるよっていうのをちゃんとメモしておく

大前提

僕は安野たかひろ氏個人の高い能力(特にIT関係)への疑いや、氏の人柄についての疑い等の悪感情を持っていないことだけは声を大にして主張しておく

それでは早速推せない理由を書いていく

理由1 都知事選はパワポ上手選手権ではない

氏の公開されたマニフェストのパワポ(Google スライドショー)の体裁的な出来については素晴らしいと思う。きれいにまとまっているしわかりやすく100P弱あるが普通に内容が頭に入りながらスラスラと読めた。

そして、このパワポの出来が素晴らしいということで他の候補者よりも良いという声がそれなりの人(X上だと少なく見積もっても2,30人以上)から出ている。氏のバックグラウンドとかを考えると資料を読む人もIT関係の人が多いと思われITエンジニアの声がその中だと多いように感じる。

しかし、よくよく考えてほしいのだが我々は都政を良くして欲しいのであってパワポが上手に作れるおじさんを選びたいのではない。

パワポが上手に作れること自体は素晴らしいがなぜ他の候補者がそこに注力していないかが重要ではないのか。

例えばこういう声が実際に出ているわけだが、多くの人がちゃんと読まずに投票すると解っているならそういう人たちに伝わるように伝達方法をパワポ以外も含め考えるべきではないのか。

もしパワポで十分伝わると思っているならあまりにも見通しが甘すぎるだろうし、それに気づいていないのならもっと根本的なIT界隈外の人への伝える力が不足していることにしかならない。

氏が立候補しているのはパワポづくり選手権ではなく都知事選である。

理由2 東京への想い項目の都民無視感

個人的にはここが一番氏に対して絶対に推せないなとなってしまった部分である。

都のことを評価する指標のいの一番に来るのがGCI (グローバル都市インデックス) ランキングというのは要は都政の評価軸が都民からの直接的な評価ではないと僕としては受け取った。

せっかくGithubでの声の収集などという直接拾うっぽいことを言っているのに一番最初にそうではないのをでかでかと載せるのは氏の本心は"特に直接声を拾いたいわけでもなく外からよく見られたいと思っているだけ"と邪推されても致し方ないと思う。

また、下がることを問題視し上げる(or 現状維持)をしたいというのが氏の根本のようだが、都民にとって下がると何が問題で上がると何がいいのかが無
い。

"都民にとって良いことを続けていたらこのランキングが上がりました。具体的にはここが改善したことによりこのランキングの評価項目のここが変わったからですね!"を都政のこれまでの結果として出すのはありだがそういう感じでもない。

パワポから読み取れるのは氏にとって"ランクが下がると世界での日本の影響が落ちるのでそれはしたくない"という想いが一番大きいということだけだ。

そこまで世界での日本の影響度を気にしたいのであれば都政ではなく国政に行くべきであろう。

都政で気にすべきはまずは世界での日本の影響度ではなく都民のことにすべきだ。

理由3 新産業での所得倍増の空虚さ

一番最初に挙げられているので多分これが氏の中で一番重要な項目だと思われていると考えるのでここを取り上げる。

氏は特区などを作ることで海外の大手技術企業(と言いつつ実際にはIT系しか見えていないように感じる)を誘致しそれにより経済を活性化し所得水準が上がると見込んでいるようだ。

例としてトヨタ市やシリコンバレー、熊本県などを上げているがそもそも時代や状況が違いすぎて今現在の東京に当てはめれるのかがかなり疑わしい。

そもそも、外からの誘致での経済活性化は

  1. 現在過疎っており人に対する高賃金の仕事の絶対数が少ない

  2. 仮に高賃金の仕事があっても求職者の数との関係で賃金が低止まりしてしまう

のような場合に特に有効である。

しかし、現在東京はすでに世界有数の都市であり、かなりの数の有力日本企業の本社や世界有力企業の支社がある状況である。
どれだけの数の誘致が成功すれば今いる都民の所得にまで影響する可能性が出てくると見積もっているのだろうか。

また、パワポからは海外から優秀な人材を連れてくることで新産業を建てようとしており、その優秀な人材を連れてくるための施策を強く押し出している。

なにかのスタートのために優秀な人材を連れてくる事自体は正しいアクションではあるがそれはあくまでその人材により都民の何かが良くなることが絶対条件である。

パワポからは特区を作りたいという部分の解像度は高いが作ってどうやって今の都民に還元するのかという点の解像度が非常に低いと言わざるおえない。

"連れてきた優秀な人材の給与は高いので東京都で見れば所得の平均が上がりました"は今居る都民にとって空虚にしか映らない。

理由4 とりあえずAIとテクノロジー感

パワポ全体に漂っているのがとりあえず今困っていることはAIとテクノロジー(AIもテクノロジーの一種では感もあるが)で解決します!という姿勢である。

僕自身もITエンジニアなので今困っていることに対してテクノロジーで解決していくという事自体は賛成だが、なぜ今テクノロジーで解決出来ていないのかという点がすっぽり抜け落ちているように見える。

そのせいでどの施策に対しても聞こえはいいがでは実際に解決できるの?感がすごい出てしまっている。

もしかしたら氏の手元にはそういう解決できない理由データが有りすでに具体的な解法が氏の中ではあるのかもしれないがそれであれば100Pもの資料なのであれば1つぐらい具体的な部分を見せてもらえないとどれも絵に書いたモチに見える。

理由5 困ったときの東京外頼み

理由3にも関係するが、氏の思想の根本として"なにか今足りないモノがあれば外から優秀なモノを持ってこれば解決する"があるのではとパワポからは強く感じる。

外から優秀な何かを引き入れるということは悪いことではなく適材適所で使用すべき方法ではあるが今ある問題の解決の大部分をそれで行うのは企業的なやり方であり自治体のやり方としてはNGであろう。

例えば"犯罪率の高い都市で外から犯罪しない人をいっぱい連れてきたら見かけ上の犯罪率は下がりました。"とかは自治体の取るべき手段ではないはずだ。

理由3でも書いたが、外から引っ張ってくることに対するやり方の解像度は高いのにそれで得られるメリットを都民に広く還元する方法の解像度が恐ろしく低い。というかほぼ全く書かれていないように思う。

また、引っ張ってくることが前提なので引っ張ってこれなかったときには上に乗っかっている全てのメリットが総崩れになることに気づいているのだろうか。
ベンチャー等ではチャレンジは推奨される行為だが(それでもある程度のBプランは用意する)自治体でほしいのは基本の王道がまず最初に来るべきではと思う。

理由6 選挙に勝とうとしていないように見える

  • 素晴らしい資料を出すのに、選挙に勝つためのデフォルトのプロトコル的なものに対応はしない。

  • テクノロジーで誰も取り残さない東京へと締めているのに実際にはテクノロジーが使える人たちの中に向いていてそれ以外の人へのアクセスに乏しい。

などを見るに氏が本気で選挙を勝ちに行っているようには僕には到底受け止められなかった。

選挙には選挙のやり方、方法論があり少なくとも今回初チャレンジの氏が本気で勝ちを狙うなら例え馬鹿らしいと自分が思ってもお約束ごとは最低限乗るべきだと思う。

また、自分が馬鹿らしいと思ったことには耳を傾けないと捉えられる姿勢は、1000万人からの住民を抱える東京都のリーダーとしては不適切な振る舞いにしか見えない。

どれだけ素晴らしいことを言ったところでまずは選挙に勝てないと意味が無く、やれることは全部やる(せめてように対外的には見せる)姿勢がなければ外からは、勝つつもりのない他の泡沫候補と同じと言わざるおえない。

総評

色々と書いたが、とどのつまり僕が推せない理由は下記の2つに集約される。

  • 都民に向いているように見えない姿勢

    • 向いているとしても港区のIT関係会社の社員とその関係者を都民と認識しているように見える

  • 本気で選挙を勝ちに行くように見えない姿勢

    • 氏がどう思っているかは別にして少なくとも僕には本気に見えなかった

まあこういう推せないITエンジニアもいますよということで


余談

一番納得感のある意見
確かに名前を売って宮坂副知事の後釜狙いは一番ありそう


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