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『いつかたこぶねになる日』⑧

⑧  おのれの分身と連れ添う鳥

初っぱなから、難解なマルセル・デュシャンのアンフラマンスの感覚。むしろ蕪村の蝴蝶の句からアンフラマンス(極薄の)に近づく。

蝴蝶の夢の荘子   から
おぼろ(朧)松の他柳  から
瞬く(まぶた)の鴇田智也  から

漢詩なら平安時代の桑原広田麻呂も『水中の影』の独自の世界を描き出している。花はあれど香りはなく、葉はあれど音のない傾影の造化の美や、またたくたびに世界が更新される現(うつつ)と虚(うつ)のゆらぎ、でもその後の空っぽの感覚。

さざなみ一つない水鏡を水底までつらぬくと、そこは空っぽなんだろうかと。空っぽの手の中におとずれる天空の光に、救われる想いがした。


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