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槇原敬之のPENGUINの意味をゲイ視点で考えてみる

今年見たライブで初めて生で聞いた槇原敬之さんのPENGUINという曲。今までは大したインパクトもないさらりとした曲と、流してしまっていました。
しかし、ライブで聞くと心に染みまくりました。

槇原敬之デビュー6周年となる日に発売されたアルバム「UNDERWEAR」に収録されているのが今回紹介する「PENGUIN」です。

※僕が勝手に解釈しているため実際の制作意図などとは異なる場合はあります。

隠れた名曲”PENGUIN”

シングルカットされた曲ではないから地味な存在でありながら恋を一通り終わった歳には染み渡ります。

PENGUINをゲイ視点で僕なりに紐解く

このPENGUINという曲、ただの恋愛ソングというより僕はゲイの叶わなかった恋を爽やかに思い出しているような曲だと思っています。

キスもしたのに出会わなかったとは?

製鉄所のコンビナートは 赤と白の市松模様
君に見せるつもりだった ロケットの模型と同じで
もう君にも 見せることもないし この道も二人じゃ通らない
話もして キスもしたけど 出会わなかった二人

PENGUIN/槇原敬之

製鉄所のコンビナートを見ながら、その赤と白の市松模様を見て昔好きだった人に見せたかったロケットの模型を思い出す。

今通ってるこの道やこの景色はもう二人で見ることもない。

話もしてキスもするくらい仲を深めることができてるのに、「出会わなかった二人」というのは、「許される関係としては出会わなかった」ということだと思います。

槇原敬之さんの作品は短い文章で、一気に情景や状況を把握できます。この4行でどういうストーリーでどういう場所かを思い浮かべられるんですよね。

気になる一節「話もして キスもしたけど 出会わなかった二人」とあります。

キスもするほど愛し合ってたけど、この今いる場所では僕らの関係は誰にも許されない、愛し合って結婚できるような出会いではなかったんではないか。

南極のペンギンならゲイでも文句は言われない

誰も許してくれないなら 一緒に逃げようって泣いたよね
南極なら 君と 僕と ペンギン
悪くないねって ちょっとだけ笑ったよね

PENGUIN/槇原敬之

南極なら誰も居ないし、誰にも文句は言われないし、ペンギンだったらオス同士のカップルでも同じペンギンから文句も反対もされない。
そういう関係だと悪くないね。

ちなみにペンギンの同性愛カップルは色々な水族館で認知されています。
動物には人間の様にジェンダーの概念は無く、ジェンダーロールの強制もありません。ただ、本能の行動でそうするのです。

一緒にはなれなかったけどいい思い出になってる

今でも時々思い出しては 連れ出さなくてよかった事も
愛していたのも 本当だったと笑ってる

急スピードで追い越して行った 真っ黒い車が消えてく
それはまるで海に向かって 走る真夏の子供のよう

高速道路の料金所は いつも君に任せてたよね
ひざの上大事に持っていた 僕の財布も変わったよ

PENGUIN/槇原敬之

君を連れ出して全部を投げ出してしまわなくて今ではよかったと思うし、そんな勢いに任せられるような年齢はあっという間に過ぎていく。というのが表現されています。

また、車でデートしたときは助手席で僕の財布を大事そうに持っていたことを覚えているし、そういうところも好きだったことが伺えます。しかし、そんな日々は過去で、今はもう財布も変わって僕も変わったということでしょう。

同性愛者でいる以上、ノンケに比べて圧倒的に恋愛がうまくいく確率は低いです。そもそも同性愛者が少ないので男がいれば良いっていうわけにはいきません。

そんな僕も過去にノンケを好きになったこともあるけど、叶わない前提で接していたしそれがいい思い出であると思うことがあります。

誰かにも許されない場所が行くべきところ

誰も許してくれなかった 理由はまだ解らないけど
たぶん君と僕とじゃ行けない場所が
二人の行かなきゃいけない場所

PENGUIN/槇原敬之

ゲイである僕らの恋愛を誰も許してくれない理由はわからない。そして、その当時の君と僕じゃないけないようなところが本当は二人がいかないと行けない場所だった。

許してくれる場所、僕らが愛し合うことも許されるようなところに行くべきだったという少しの後悔が垣間見えます。

過去は一生戻ってこない

いたずらをして怒られても 「ごめんなさい」の一言を
誰かに言えばそれでよかった あの頃にはもう戻れない

PENGUIN/槇原敬之

悪いことをしても誤ったら済むような若い時代背景です。おとなになって、責任が増すと失敗や悪いことをしても誤って済むようなことがなくなっていきますよね。
若気の至りで許されていた、好きな人が好きすぎて突っ走る歳はもう昔。ということでしょう。

好きすぎる人といっしょになることが幸せとは限らない

誰も許してくれないなら 一緒に逃げようって泣いたよね
南極なら 君と 僕と ペンギン
悪くないねって ちょっとだけ笑ったよね

今でも時々思い出しては 連れ出さなくてよかった事も
愛していたのも 本当だったと笑ってる

PENGUIN/槇原敬之

好きな気持ちだけ、愛してる気持ちだけが重くなって、そんな勢いで逃げるような二人きりの場所を見つけたとしてもそれは幸せとは限らないですよね。

愛していたけど、一緒にならなくて、連れ去るように南極にいかなくてよかった。今もそんな青い記憶が良い想い出、間違いな気持ちではなかった。そういう歌でしょう。

「叶わなかった恋」の歌であり「叶えなくて良かったけど良い恋の想い出」の歌であると思います。

結婚する相手は一番好きな人じゃなくても良い

結婚する相手って好き!愛してる!!好きすぎる!!というよりは一緒に居て安心できて、信頼できて、楽しくて、そういう相手だったりするんじゃないでしょうか。
これはゲイカップルでも同じだと思います。

好きすぎて、憧れすぎて、眩しすぎて、そういう人相手だと疲れちゃったり…。

昔、猛烈に好きだったあの人との記憶。そんな歌ですね。


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