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弁当腐ってる、とは言えなかった過去

高校生の時、私は高校に通うために田舎から出て、父と二人暮らしをしていた。

と言っても、自営業の会社の上階だったので、母親には毎日顔を合わせた。


母親は、小学生の弟が待つ田舎へ帰っていた。

そのため、母は私の弁当を前日の明るいうちに作ってくれていた。

冷ましてる時間もないから、温かいままつめられたご飯とおかずは、フタを少しあけてそのまま朝まで冷蔵庫で冷やされた。まぁ、自分でフタをしめればよかったんだけど。

翌日の昼に食べるころには、ご飯は正直固くてまずいし、おかずは少々傷んでいるものもあった。(保冷剤を入れることとかも知らなかったかも)


でもせっかく作ってくれていると思うと、まずいとは言えなかった。

でも、まずかったんだよ。傷んでいたのもあったよ。

こんなの愛情の押し付けだ。

と、気持ちの行き場は完全になくしていた。

最近知ったんだが、
「弁当はお母さんの手作りの愛情弁当を食べさせて」と入学説明会で聞かされてきたらしい。

それで、無理して作ってたのかな。


私なら前日の15時に作った弁当を子どもに持たせたりしない。

傷まないか心配だもの。

そういうこともあって私は子どもに弁当を作るとき、朝作ったものか、買い置きの冷凍食品しか入れないことにしている。

(作り置きや晩御飯のおかずを入れる方は多いと思うが、食中毒予防のためには朝必ず火を通したほうがいいと聞いたことがある。参考に。。)


夫には、お母さんが忙しい中でせっかく作ってくれたんだから、まさか傷んでたなんて言わずに感謝しろ、などと外野から言われる。


あぁ、朝作ったおいしい弁当をつめてもらっていた人には気持ちはわからないんだろうなと思う。

外野は黙れ、と思う。


私は、次第に母の作った弁当を持っていかなくなり、弁当を持って行っても食べずに持ち帰る日が増えた。購買のパンを買うのが習慣になった。

母はせっかく作ったのにとキレてた。


忙しかったんだろう。時間を捻出して作ってくれたんだろう。

食べてこなかったらキレるのも当然だ。


ただ、私が「ちょっと酸っぱくなってるから食べれない」
と正直に言えたなら、母の持つ印象は違っただろう。


そうやって、私は、ゼロ歳から保育園に入り、母が大変そうだからと思って正直に 痛いとか、つらいとか、まずいとか言えずに、うまく甘えられずに育ってきたのかもしれない。


もしも私が、

「作ってくれるのはありがたいんだけど、ちょっと傷んでてお腹痛くなるから、自分で朝作るか、買ってくことにするね」

って正直に言えたなら、どんなに親子関係はうまくいっていただろう。



無になって、弁当しれっと持っていかない、毎日忘れる、とかしなくてもよかったし。

感情的になって、「まずい弁当食わせて愛情押し付けてくるんじゃねーよ、くそばばあ」 とか暴れなくてもだいじょうぶだった。(暴れてはないけど)


ただ、淡々と、事実と自分の希望を伝えれば伝わったのかもしれない。


傷つけたくないと思いすぎて、ドロドロした思いを腹の底にためて、結果ぐさぐさに傷つけてしまう、もしくは、一切関係を断つということは、家族以外の人間関係でもよくやってきたように思う。


そんなにドロドロさせなくたって、シンプルに自分の気持ちを自分で大切にしてもいいのだ。


半分腐った弁当を食べるにつけ、母があからさまに弟をかわいがっている、自分のことはさほど愛していない、という感情まで乗せて嫌悪感をもっていたように思う。


作ってくれたことには感謝なのだ。感謝しなければいけない、と思うほどに、自分を大切にしたい気持ちがなくなっていたように思う。


私は死にたい20代だった。


私なんていなくなってもいいと思っていた。


人間に愛されるというのは難しい。


そういう難しい環境を私が選んできたとも言える。


愛を知るために。


神でもない未熟な人間というものに受け止め愛してもらおうとすることに執着するのは、求められる相手にとっても負担が大きいのだろうと思う。


人に愛されたいと願う前に、自分が自分を大切にすること。

自分は大切にされるに値する存在だと認めること。


上を見上げ天とつながり、地面を見下ろし地中のマグマに足を下すつもりで天地につながる。


そして、弁当を作ってもらってるのに食べたくなかった自分、感謝できなかった自分を許す。

そうすれば、やっと、前日の弁当を無理やり持たせて、愛情を示そうとした母の気持ちもわかるのかもしれない。



私は私を大切にしてもいいのだ。


そして、私の気持ちを大切にすることは、ほかの人を傷つけることにはならない。


人を傷つけなくてもいい。

自分も尊重する。人も尊重する。


共存は、できるはずだ。


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