16.ドラえもんの約束
子供ひとりの家庭にも関わらず、
私にはチャンネル権はなかった。
馬鹿になるからという根拠のない理由で天才てれびくんと忍たま乱太郎は禁止され、かつての金曜夜7時台の国民的アニメも中々見せてもらえなかった。
けれど、大晦日だけは違うはずだった。
だから私は、ドラえもんのおおみそかスペシャルが見たいと、少し前からお願いをしていた。
そして大晦日にはドラえもんスペシャルが見られるハズだった。
しかし実際には、母にチャンネル権を奪われてしまった。
小学一年生だった私は、約束したのにという気持ちと
どうしてもドラえもんスペシャルが見たいという気持ちで泣いてしまった。
そして母に「お願いだからドラえもんを見せて。約束だよ」と言ってしまった。
こともあろうに母親に、だ。
無表情でこちらを見る母親が
次の瞬間私のパジャマの首根っこを掴んでいた。
そしてそのまま家の外に締め出されてしまった。
私は北国で生まれ育ったので、大晦日ともなれば外はマイナス気温、地面は凍りついている。
そんな屋外に薄着の裸足で放り出されてしまったのだ。
足裏は冷たいを通り越して痛く凍てつき、片足ずつ立ってなんとかやり過ごす。
とにかく寒い。
私はなんてことをしてしまったのだろうと心の底から後悔しながら、玄関の扉をたたき続けた。
どのくらい経ったかも分からなくなってきた頃、祖父が慌てた様子で家に入れてくれた。
あの日祖父が居なければ、私はあのまま死んでいたと思う。
怖かったし
寒すぎて痛かった。
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