JOKERの愚行を、言葉や知恵や教養で引き留めることはできたのか。

先ずは、今回の事件に巻き込まれ負傷された方、被害にあわれた方が無事に回復すること、損失が最小限であることを心から祈ります。


10月31日の夜、調布市内を走る京王線の電車の中でジョーカーに扮した男が乗客を刃物で切り付け、社内に火を放つという事件が起きた。

容疑者とされる男は「2人以上殺せば死刑になる」と供述している、と報道されている。


もし伝えられている内容に間違いがなく、容疑者とされる男の行為が事実であるのならばそれは許されるべきものではないし、もし仮に家族がその車内に居合わせて事件に巻き込まれるようなことがあったのなら怒りや憎しみで身を震わせていただろうし、私怨による報復行為もやむを得ないと考えたかもしれない。


しかし一方でジョーカーに扮した男に対して、共感を覚えなくもないなあと思ってしまった自覚がわたしの中にはハッキリとあって、無差別殺傷という暴力による恐怖でもって自らの主張や言い分を押し通そうとするテロリズムに傾倒してしまうことはとても理解ができる。


国際政治学者の六辻彰二という人が2年ほど前にヤフーニュースの記事として、テロリストの心にみられる特徴を10個に絞り以下のように挙げている。

①良心を欠いた反社会性 

②弱さを隠した万能感

③「日の当たる場所」を求める独立心

⓸他人のせいにしたがる幼児性

⓹「不浄の世界を救う」使命感

⓺侮辱への報復感情

⑦モデルケースの観察からくる自信

⑧「それしかない」という思い込み

⑨目新しさの追求

⑩合理的な計算


このヤフーニュースの記事では10個の特徴について詳しく説明しているので興味のある方は読んでみることをお勧めする。

末尾では、テロリストと通り魔・大量殺人犯の心理に多くの共通点が見られ、日本の一般社会においてこのテロリスト・マインドが育成される環境が広がりつつあることを指摘している。

この環境とはつまり社会の歪みであり、それが大量殺人犯を増殖させる堆肥となると警鐘を鳴らしている。


わたしはこの記事に目を通してみて、挙げられていた10個の特徴のうちの幾つかに自分が該当していると強く感じたが、とくに不思議ではなかったし驚きもしなかった。

「幽遊白書」に仙水忍という元霊界探偵の男が登場するのだが、わたしには彼の考えというか理念とか行動が理解できたし、魅力も感じていたのでとても好きなキャラクターだったが、言動はまさにテロリストのそれだった。

また「選挙に伴った犯行」と「狂気の犯行」ということで映画「タクシードライバー」のロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィスのことも思い出した。彼の犯行は未遂に終わるが、テロリスト・マインドに囚われてしまった青年の苦悩や憂鬱を描いた作品として見事に社会の歪みに焦点を当てていた。

そして、この日がハロウィンであったので京王線に乗り込んだ容疑者とされる男が、映画「BATMAN」に登場するジョーカーの仮装で犯行に及んだとの報道があるが、一部ではコスプレではなく「私服だ」という供述があったとの見方もある。

なので容疑者とされる男がジョーカーに扮したことに意図があったかどうかは知る由もない。そして、わたしはBATMANシリーズを一作も観たことがない。思い浮かぶのは「農協牛乳!!!!!!!!」と叫んでいたプリンスやAIR JORDAN 6をモチーフにしたバットマンのシューズくらいである。ホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」も興味はあったが鑑賞の機会を逃している。

因みに「ジョーカー」という映画は「タクシードライバー」と非常に関連性の高い作品である。


そんな容疑者とされる男をジョーカーと関連づけて比較してみたり、テロリストに共感を覚えるような社会性に欠けたわたしがコメントしたりするのは甚だ可笑しな話である。

それでも京王線での悲しき愚行に社会の歪みを見て取ることは禁じ得ないし、ひょっとしたら自分もこんなことをしてしまっていたのかもしれないと思うと、容疑者とされる男を非難したり、リンチや制裁を加えるような発言をして糾弾するようなことはわたしにはできない。

では、決行した彼と決行しなかったわたしは何が違っていたのだろうか。

わたしには強硬で性急な考えも実行力もなかったが、抑止となるような何かを持っていたからだと考えている。

端的に言ってしまえば、タイトルにもあるがわたしは言葉を持っていたし、知恵や教養に触れる機会に恵まれていたからだと思う。

あとは保留する力、留保する力だろうか。先延ばし癖や後回し癖があるのは否定しないがすぐに問題解決せずに、それを抱えたまま自分の中で煮詰めてみるとか醗酵させてみるというのは意識的にしていたように思う。

そういうことと向き合っていればいつか何かの肥やしになるのではと考えていたように思う。

あと拙速は巧遅に勝るなんて格言は嫌いだ。



ほかにも考えれば色々と出てくるような気もするが、回答を焦るようなことは止めよう。

もう少し思いを巡らせてみよう。


そして、皆さんの無事を願います。


最後までお読みいただきまして有難うございます。













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