花巻ことば おぼえ書き 〜い〜
『おばんでがんす。涼しぐなって、なんぼがいぐなってきたなは〜。』
(…こんばんわ。涼しくなって、いくらか過ごしやすくなってきましたねぇ。)
吉幾三の津軽弁ラップがネットで話題になっている。その意図を知ったら、「んだんだ」と共感してしまった。吉幾三は津軽弁伝承の功労者だろう。伊奈かっぺいや吹越満もいる。津軽弁の意味はよくわからなくても、全国に知れ渡っている。
私も、残したいと思う。うまく継承できるかわからないし、世界の片隅で、しかも地元にいないけど、細々と、こじんまりと。
さて、あいうえお作文としてはじめてみた花巻ことば覚え書き、何しろ自分が一番楽しい。
三浦しをんさんの『舟を編む』で、辞書用の単語と使われ方を拾うことを「用例採集」とかって言っていた気がするのだが、方言の言葉の意味や標準語訳、遣い方、イントネーションなどを空想すると、日常生活も言葉の不思議だらけで見える景色が変わってくる。
だんだんに岩手の他の地方とも比較したいと思う。LINEの方言スタンプや、方言手ぬぐいなどなど微妙に違う言葉をよく見つけるので。(そもそも、私がズレてる可能性が高いけど。)
いやぁ、まだ“い"だもな。終いまでいぐのになんぼかがるべな。
☆花巻ことば 「い」
◎いかいかず
→ちくちくする。タートルネックのニットの首部分とか、稲刈り作業後とか、なんかちくちくして痛痒い感じ。
※用例
干し草や藁の上でゴロゴロ遊んでいる子供に対して「そごで遊べばあどでいかいかずくなるべや!」 …「そこで遊べば後でちくちくするんだよ!」
◎いずい
→違和感がある。気持ち悪い。いつもと違うのが気になる感じ。
※用例
「この服着てらっけば、なにだがいずいな」それを見た人が一言。「じゃっ、おめさんその服けっちゃに着てらっちゃ〜!」
…「この服着てたら、なんか違和感があるんだよね。」「あらっ、あなたその服逆に着てるわよ〜!」
◎いた
→いること。今現在いるという状態だけど、いた、という。過去形なら、「いたった」と「〜った」を重ねる。
※用例
家族から電話かかってきて、
母「今どこさいたの?」…「今どこにいるの?」
私「うちさいたよ」…「家にいるよ」
◎いつだり
→今さら、のような意味。いつでも、という意味も。
※用例
帰ってすぐお弁当箱を出さなくて、朝ギリギリに洗い物に出した子供に一言。
「いつだり出したったって洗わねよ!」…「こんな今さら出したって洗わないよ!」
◎いっくれ、いいくれ
→いい加減。いい塩梅の意味でも、否定的な意味でも使われる。
※用例
調子に乗ってる孫にじいちゃんの一言
『おめ、いっくれにしろよ!』=「おまえ、いい加減にしろよ!」
猛勉強している孫にばぁちゃんが一言
『まず、いっくれにして、ままかねが?」=「まぁまぁ、いい塩梅のところで切り上げて、ご飯食べたら?」
◎いっつに
→とっくに。既に。
※用例
出掛けるお父さんに用事を頼みたかった時のひとコマ。「お父さん、いだっか〜?」「あいや、いっつに出はってしゃんたぢゃ」…「お父さん、いる〜?」「あらら、とっくに出かけてしまったよ。」
◎いっとこま
→ちょっとの間
※用例
この後予定があるのに、用足しを思い出した時の一言「オレいっとこまかまどさ行ってくるがら、待ぢでろな」「じゃっ早ぐしてけろ」…「オレちょっと分家(近所の親戚)に行ってくるから、待っててな」「えっ早く行ってきてよ」
◎いぃは
→いいよ、もう。
※用例
「もは、いぃは」…「もういいから」
花巻ことばなんだか、うちの田舎の会話集なんだか、わからなくなってきた…。用例のシーンをもう少しわかりやすいの思いつけばいいのだけど。