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猫と人が快適に暮らせる賃貸の作り方、教えます。 〜エピソード2:猫専用賃貸を作るキッカケ

猫複頭数飼育可の賃貸が見つからない!

突如として5匹の野良猫を匿わなければならなくなり、暮らしていたペット不可賃貸からペット可賃貸への引っ越しを決意した私たちは早速ネットで物件検索を始めました。これまで暮らしていた物件は、専有面積60㎡の2階建て、専用庭スペース、駐車場付き、最寄り駅から徒歩10分以内というものでした。元々人間2人で暮らしていたのに加え、猫5匹と同居するには最低限の広さとして、これまで暮らして来た60㎡は必要と考えました。検索した条件はこんな感じです。

・専有面積60㎡以上
・猫5匹飼育可
・人2名
・最寄りの駅から徒歩10分以内
・都内23区
・駐車場付き
・家賃総額18万円以内

検索結果は散々たるものでした。条件に合致する物件はヒットしないのです。たまに検索に引っかかる物件や実際に紹介された物件を見ていて、ある種のパターンがあることに気が付きました。それが下記のような物件です。

・駅から徒歩30分など交通の便が悪い物件
・築年数40年などの築古物件
犬、猫どちらか1匹まで飼育可の物件が多い

当初の条件を大幅に緩和して物件を探していた時、不動産屋さんから「猫5匹OKの物件が出た」と連絡を受け、早速内見した時の話です。その物件は東京都府中市「府中駅」からバスで15分の場所にありました。外観は大きな一軒家です。一階に住んでいる大家さんが直接内見の案内をしてくださり、色々とお話をさせていただきました。曰く、40数年前に二世帯住宅として2階建ての家を建築し、1階は自分たち夫婦が、2階は息子夫婦が暮らしていたそう。数年前に息子夫婦が引っ越し、それ以来誰も住んでいないので賃貸に出すことにしたとのこと。部屋を拝見すると築年数なりに劣化している部分が目立ち、広さは申し分ないもののお世辞にもオシャレとは言い難い物件です。それにペット可にしてはいるものの当然ながらペットに配慮した工夫などは皆無です。
「不動産屋さんから『猫5匹可の部屋を探している。』と電話をもらいましてね、ウチで良ければと思ってOKしたんですよ。」と話す大家さん、続いて本音が聞けました。「場所が不便でしょ。借りてくれる人がいなくて数年誰も住んでないんで困っていたんですよ。それで不動産屋さんから『ペット可にしましょう!』って…」

困った大家さんの悲しい2大施策

日本全国の賃貸は3割が空室と言われています。(老朽化した人の住んでいないアパートを取り壊さずそのままにしている物件なども含まれており、正確性に欠いた統計ではあります。)にも関わらず、不動産賃貸バブル状態の日本では古屋が取り壊され更地になった所には、アパート、マンション、建売住宅の何れかが直ぐに建築されます。こういう賃貸は判で押したように20㎡前後の似たようなレイアウトのワンルームであることが大半です。元々、部屋あまりの状態なのに更に新規物件が供給される「供給過剰状態」なのが今の日本なのです。都市部ではこの傾向が顕著になり、借り手はより築浅で、より駅に近いなど条件の良い物件を探しやすい状態になっています。すると困るのは築古や駅から遠いなどのハンデを抱えたオーナーです。自分の賃貸より駅から近い所に新築のマンションが出来たら当然ながらそちらに入居者を取られてしまう、こういうオーナーが出来る対抗策が、「家賃を下げる」と「ペット可にする」の2大策なのです。
こうした物件は、一言で言うと私たちには「魅力に乏しい物件」でした。業界の実態が透かし見え意気消沈していた所に不動産屋さんから電話が入りました。
「ペット共生物件に空室が出ました。」と。

ペット共生物件って?

「へえ、そんな物件があるんだ。」というのが当時の私の率直な感想です。詳細も分からないまま不動産屋の営業さんが運転する軽自動車に乗って、郊外にあるアパートに到着しました。駐車場に車を停め、門扉をガチャと開けました。途端、コの字に配された2階建て長屋の建物内から「ワンワンワン!」と犬の鳴き声が響きました。1匹が鳴くと別の部屋の犬が反応し、部屋中から犬の鳴き声が聞こえます。営業さんは構わず奥に進みながら解説してくれました。
「この中庭がドッグランになっていまして、犬を自由に遊ばせることが出来ます。」
「門扉の側にはお散歩帰り用に足洗い場があります。」
「ドアの横にリードフックがあります。」
「階段下は犬小屋になっています。」
ここまで説明を説明を受け、ハタと気が付きました。

世の中の「ペット」とはほぼ100%「犬」のことを指している、と。

ペット共生物件にある設備は、猫には不要な装備ばかり。それどころか休日になればドッグランで多くの犬が騒がしく遊んでいる状況は、いくら適応能力があるとは言え、あまり猫には良くない環境です。散歩をしたり外に出さない猫にとって、足洗い場もリードフックも必要ありません。そしてこの賃貸は相場から比較してかなり割高でした。当然ながら気に入らなかった私たちは、契約することなくこの物件を後にしました。

犬と猫は生物学上も全く異なる動物です。犬は雑食、猫は完全肉食、犬は社会性に富み、猫は乏しいなど様々な違いがあるので、自ずと人間と暮らす上で必要な物が変わってきます。世の中の「ペット可賃貸」が「犬」の事を考えているのであれば、猫のことを考えた物件はないのだろうか?と考えました。不動産屋さんに聞くと「猫のことを考えた賃貸物件ですか?聞いたことないですね…。」言われ、自身でも調べてみましたが、そもそもペット共生物件事態がレア物件だった2000年後半には、どこを探しても「猫専用賃貸」は存在しませんでした。

私たちが困っているように、同じような悩みを持つ人たちがきっといる。その人たちに喜んで住んでもらえるようなアパートがないのであれば…

自分たちで作っちゃえ!と。

これが猫専用賃貸Gatos Apartmentを作ろうと思ったキッカケです。

エピソード3に続く





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