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猫と人が快適に暮らせる賃貸の作り方、教えます。 〜エピソード5:建築コンペを開催

ハウスメーカーを使わずに家を建てるもう一つの方法、それが建築家と一緒にフルオーダーで作って行く方法です。ところで、日本には一級建築士の有資格者がどの位いるかご存知ですか?その数、実に37万3490人(2019年4月1日付け)なのです。ちなみにアメリカは6万人、イギリスは3万人の建築家がいると言われています。日本で建築家を名乗るには一級建築士の国家資格を有する必要がありますが、日本はこれだけの「建築家」がいる世界的に見ても特異な国なのです。沢山いる建築家の誰にお願いすれば良いのか?これが最大の課題でした。

建築家へのギャラは、総工費の10%〜20%

建築家に設計依頼することへのハードルを高くする要因の一つに「費用がいくらかかるか検討がつかない」という事があると思います。誰もが知る安藤忠雄や隈研吾といった著名建築家と無名建築家とで同じギャラな筈もありません。でも実は建築士法で定められた設計料のガイドラインが実在するので、有名無名を問わず本来は同一ギャラなのです。では安藤忠雄に依頼すれば良いじゃないか!と思いましたが、実際には総工費に対して何パーセントという形で請求することが一般的となっています。大体10%から20%の間で実績に応じて決められているケースがほとんどで有名建築家になると更に高くなって行く、という仕組みです。建築家に依頼することを考える場合は、このことを頭に置いて予算組をすると良いでしょう。
「ではハウスメーカーに頼む方が安上がりなのか?」と思うのは早計です。ハウスメーカーもシッカリと設計料を取っています。社内に一級建築士がいて、その人たちが設計していますからね。営業マンから上がって来る概算見積もりには大体において設計料と明記してなく、総額に含まれて計上されていることが多いです。ですので建築家、ハウスメーカーのどちらに頼んでも同程度の「設計料」は発生します。

効率的に建築家を探す方法

既に土地を購入しているため、早く建築を開始したい我々には悠長に建築家を探す暇などありません。どうにか効率的に建築家を探す方法がないものかと調べていた時、打って付けのインターネットサービスを発見したのです。HOUSECOというサービスです。2021年現在では若干仕組みが変わっていますがSumikaと名称変更して運営されています。このサイトの仕組みはザックリとこんな感じです。施主が「こういう建物を、こういう土地に、幾らで建てたい」とエントリーすると、参加を希望する建築家が「こんなのどうですか?」と図面と見積書を提案してくれます。
気に入らなければ採用せずハウスメーカーに頼めば良いかと、軽い気持ちで早速エントリーしてみました。当時もネットのコンペティションで建築家を募るやり方が珍しく、あまりエントリーがなかった事に加え、猫専用の賃貸住宅という珍しい形態だったことが建築家のクリエイティビティーを刺激したのか、あっという間に100組近い応募が集まりました。応募いただいた方々に、より精度の高い計画を提出していただけるよう、購入した土地に皆さんを集め実際に周辺環境も含めて見学してもらう「現地調査会」を実施することにしました。

50坪の土地に100名が大集結!

現調会当日、100名近くの方々にお集まりいただきました。ほとんどが東京からでしたが、大阪や名古屋など遠方からも参加があったことも驚いた事の一つです。普段静かな住宅街に突如現れた群衆に、何が起こったのか!?と近隣住民も様子を見に来る事態になり多少混乱をきたしましたが、無事、現調会を終了する事が出来ました。
現調会の流れはこういう感じです。

受付にて名刺交換→現地見学→質疑応答→個別の質疑

手間にはなりますが、建築家に依頼する方法を選ぶのであれば現調会を開くべきと考えています。現調会を開催するメリットにはこのようなものがあります。

1. 対面で実際に建築家と話す事ができ、人柄・人間性を知る事ができる
2. 建築家の本気度を測る事ができる
3. 建築事務所の規模が分かる

家を作るのは大変な作業です。これは建築家起用であろうが、ハウスメーカーであろうが同じ事で、人間同士の作業によって進めて行かなければなりません。気の合う人とは仕事をスムーズに進める事ができたり、より気持ち良く仕事をする事が出来るようになるべくストレスにならない人と一緒に仕事をしたいと思うのが人情というもの、短い会話、時間であっても実際に対面で会話して多少なりとも人となりを知ることは有益です。
質疑応答まで、30分近く自由に見学していただきました。建築家の方々を見ていると、写真を撮っている方、境界線を確認している方、近隣を廻って見てくる方と色々な方がいらっしゃいます。中にはずっと突っ立ったまま携帯をジーッと見ている方、本を読んでる方、誰かとお喋りに夢中な方なども見受けられました。
建築家事務所にも大小があり、1人で来られる方、複数で来られる方と様々です。複数で来られる方は、部下の動きに注意すると良いです。統制の取れたしっかりした事務所のスタッフは無駄な動きをしません。写真を撮る係、建築家の発言をメモる係など役割分担がしっかり出来ている所は安心して任せられる可能性が高く、最終的な判断材料の一つになります。また複数の人員を割いてわざわざ現調会に参加するのは本気度が高い証左でもあります。
質疑応答も重要なパートです。良い質問、鋭い質問を投げかける建築家は印象に残ります。素っ頓狂な質問の場合も然りです。実際、プロジェクトの要件をほとんど読まずに参加したであろう質問をされる方がいらっしゃいました。但し、こういう方が提出する図面は大体において素っ頓狂な事が多いので、あまり気にする必要はありません。

現調会開催日から1ヶ月後を締切日に設定し、連絡を待ちます。最終的に約50件近くの概算見積書と図面を提出していただきました。第一段階ではメールでPDFを送っていただくお願いをしていましたので、まずは送られて来たプランに目を通します。平凡なプランからセンスの良いプランまで玉石混交(現調会の時にやる気のなかった建築家のプランは、やはり素っ頓狂でした。)、まずは気になった10プラン程度に絞り、10組の建築家へ面会の連絡を入れました。どのような環境で仕事をされているか確かめたいという意図もあり、お越しいただくのではなく相手方の事務所までこちらから赴くという方法を取りました。一次選考では日本全国から応募がありましたが、結果的に二次選考で振るい落とされていたので(意図的ではなく純粋にクオリティーのみを勘案した結果)、都内在住の方達だけでした。昨今のコロナ禍でテレワークに慣れた現代においてはかなりハードルが低くなりましたが、当時はやはり遠方の方にお願いするには不安要素が多かったのも事実です。
現調会から約2ヶ月後、無事に我々の理想に近い計画を立案してくれる建築家を探し当てる事ができました。

着工まで1年間かかるなんて聞いてないよ!

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我々の選んだ建築家は特に猫を飼ったこともなく、詳しい訳ではなかったので猫に関連するアイデアや具体案などはこちらから提案し、デザインに反映してもらうというスタイルでの共同作業が始りました。この作業が思いの外、時間がかかったのです。建築家とは週1回2〜3時間のミーティングを行うペースで進めていました。当初は、大元のプランがあるので3〜4回の打ち合わせで終わるだろうと軽く構えていましたが、これが大間違い。この建築家は、こちらの要望や好みを全部汲み取り、ヒアリングを元に物事を決めて行くというスタイルの方でした。週1のミーティングでまず我々の好みを聞き、翌週「こんなのはどうですか?」と提案するスタイルで進んで行きます。この確認に時間が掛かり、また鉄骨が高騰し、鉄が不足していたタイミングで中々引き受けてくれる会社が見つからなかったこと、工務店の選定に手間取ったこともあり、結果的に着工するまで1年近くかかってしまいました。

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自由に、思い通りの建物を作って行ける事が建築家を起用する最大のメリットですが、この様に時間が掛かってしまうのがデメリットでもあります。次回は、ハウスメーカーと建築家を起用した際のメリット/デメリットについてお話ししたいと思います。

エピソード6に続く


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