サンショウウオの四十九日(朝比奈 秋)
「ベトちゃんドクちゃん」を知っている人は多いと思う。下半身がつながった結合双生児としてベトナムで生まれた双子の兄弟。
この作品に登場する、杏と瞬も結合双生児。ただし、上半身などが二つあるわけではなく、見た目の身体はひとつ。その身体の中にふたつの意識が独立して存在している。
この場合、いろいろと不都合なことが起こる。たとえば、杏が好きな彼氏とキスをしようとすると、瞬は好きでもない男とキスをすることとなる。唇も二人でひとつだから。
著者の朝比奈秋は現役の医師。従って、文章中に医学の専門用語が間々登場する。多少読みにくいと思われる箇所はあるものの、納得させられてしまう。
杏と瞬のような結合双生児が実際に存在するか否かはわからない。しかしながら、医師が書いているだけあって、実在する話かのように思えてくる。
どのような環境でも、生き抜くしかないんだな。
おすすめ。
第171回(2024年上半期)芥川賞