【インタビュー】糸魚川から世界へ。「能水商店」の挑戦。代表取締役 松本将史さん
糸魚川市能生の道の駅・マリンドリーム能生。海産物の香りが食欲をそそるこの地の一角にあるのが「能水商店」です。今回は、株式会社能水商店代表取締役の松本将史さんに、糸魚川市の保坂さとる市議が話を聞きました。
●高校生が開発した魚醤が出発点。特色ある教育実践の現場として
保坂:能水商店の魅力や特色ついて、あらためて教えてください。
松本:私たちは、海洋高校の科目「課題研究」の授業で、2013 年に高校生が開発した鮭魚醤「最後の一滴」に端を発する水産加工会社です。
魚醤の製造事業はもちろん、弊社の人材や機能を活かして高校生が職業現場に近い環境で学ぶ機会の提供もしています。このような過程で生まれる「海洋高校開発商品」が定期的にリリースされ、県内外への販売を通じ、「特色ある海洋高校の教育」を発信しているところが普通の製造事業者と大きく異なるところです。
現在は、「最後の一滴」のような自社ブランドだけでなく、お客様のブランドの魚醤づくり(OEM 生産)にも取り組んでいます。魚醤をつくり続けて約 10 年、弊社独自の製法自体の価値が認められ るようになってきました。今後は、全国各地の市場価値の低い水産物に付加価値をつけるお手伝い をしていこうと思っています。
保坂:能水商店の取り組みで、商品は大きく販路を広げ、水産業の魅力や「糸魚川の味」を日本そして世界にまで発信して頂き、ありがたく思います。
●役立つ学びとは何か。職業現場で培えるもの
保坂:これまで、どのようなことに力を入れてこられましたか?取り組みや、課題などあれば教えてください。
松本:生徒のアントレプレナーシップ(※)育てるために、生徒自ら「商品・サービスをつくり、お客様からお金をいただく」という実践が欠かせないと思っています。
公立学校では、このような実践の継続や、収益の次なる学習活動への投下ができませんが、本事業はこの制限を超える仕組みを持っています。
県内外の通学域外から海洋高校へ入学する生徒が増えたのは、本事業で活躍する「生徒の学び」が発信されたからに他なりません。そういった意味で、本事業の構築にご支援いただいた保坂さとる市議の地域振興への貢献は大きいと思います。
※アントレプレナーシップ=様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず、自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神や姿勢
松本:試行錯誤する過程で、課題として感じているのは、全日制課程との連携の限界です。当然、希望進路の業種・職種によりますが、高校 3 年間という貴重な時間を、座学だけではなく、もっと職業現場で役立つ学びに向けることが必要だと感じています。
能水商店の店頭で、実際の接客に携わろうと思うと、どうしても土曜日曜など祝日が大事になります。「実効性のある教育」を考えると、全日制課程との連携に限界が生まれるのは仕方ありません。
その意味でも中学校を卒業したら、教養教育(普通科の伝統的進学校)と職業教育(左記以外の高校)に向かう進路を明確に分け、一人一人の個性・適性に応じた教育環境の選択肢を提供するべきだと思っています。
そんな思いから、私の新たな挑戦として、新規事業にも踏み出しています。
●豊かな人材を育むライトシップ(=灯台船)に
保坂:能水商店という「産学連携の現場」で培った、実感に基づいた貴重な視点ですね。今後の取り組みや、今ほどの「新しい挑戦」についてもぜひ教えてください。
松本:これからの時代、重要なのは「持続可能性の維持」です。これができれば、ある意味で十分だと感じます。製造事業者としての会社の存立と、海洋高校の存立の二つの目的を達成するために、弊社としてできることに取り組むだけです。
その意味で、保坂さんに尽力いただいた「糸魚川市水産資源活用産学官連携事業」は一つの完成された姿になったと思います。
能水商店の経営者として、全日制高校における職業教育の限界を感じてきましたが、その限界をなんとか乗り越えたいと新規事業を立ち上げました。
それは2025 年 4 月に上越市に開校する「ライトシップ高等学院」です。
これは広域通信制高等学校サポート校として、地元企業におけるOJT(On the Job Training)に取り組みながら、高校卒業を目指す新しいカタチの教育現場を目指します。「何のために学ぶのか」を働く現場の中で培い、学びの意欲へと向けるーー挑戦的な試みですが、地域産業を担う未来のプロフェッショナル育成のため、ライトシップ=灯台船の役割をになっていければと考えています。
政治・行政には、先見性を持ってチャレンジする人をしっかり支援する仕組みをつくってもらいたいと思います。
保坂:既成概念にとらわれない、チャレンジングな松本先生の姿勢にいつも学ばせてもらっています。少子化の今だからこそ、一人を大切にする教育の光で、地域を照らしてもらいたいと念願しています。
今日はありがとうございました!
ライトシップ高等学院は2025年4月に第一期生が入学予定です。今後の入試情報や、OJT受入を希望する企業の方など、下記のサイトをご覧ください!