自転車通いも悪くない
わたしは、中学時代から今までずっと、自転車を愛用している。
片道20~30分もかけて自転車で通勤していると、周りの人からは、大変だねぇ、夏は暑いし冬は寒いし、車買ったら?と言われる。
別段、自転車好きという訳ではないが、
学生の頃から長らく自転車に乗っていると、多少の愛着は湧いてくるものであり、結構好きな部分もあったりするのだ。
今回は、私と自転車について書いていこうと思う。
中学1年生の時、通学用自転車を購入した。
今でもたまに乗る、10年以上の付き合いだ。
家から学校まで片道4kmほど。トンネルまでの勾配が急で、毎日息を切らしながらペダルを漕いだ。
初めは上り坂にさしかかるとすぐに降りて、自転車を押して歩いていた。これでも一苦労である。
だが、ある時、足をつかずに上りきれるのではないかと思った。いつも通り自転車を漕いでいたのだが、その日は、上り坂にさしかかっても、まだいけるかもと感じたのだ。お腹から太腿、ふくらはぎ、つま先の順に筋肉を動かして力強くペダルを踏み込んだ。汗の滲む掌でハンドルを握りしめ、身体を引き上げるようにしてぐっと腕に力を入れた。
自身の持つエネルギーが自転車に伝わり、それによって、大きな推進力が生み出されていく。そんな感覚がなんだか嬉しくて楽しかった。上りきったあと、呼吸を整えながらゆっくりと下っていくのも充足感があった。
それと、もう一つ、私には楽しみがあった。
それは帰り道にあった。
部活終わりの午後18時頃、一日の疲れで既に気力も体力も殆ど残っていない状態で、今日もこれで最後だと言い聞かせながらペダルを漕ぐ。あと少し。あと少しでトンネルを抜ける。自転車の前カゴがガタガタと揺れる、立ち漕ぎで必死にペダルを踏む。
坂を上りきり、顔を上げると、真っ赤な夕日がゆっくりと海へ落ちてゆくのがみえた。赤、橙、黄、青、薄紺の鮮やかなグラデーションが空に描かれていた。だんだんと、深い紺色に包まれていくその様が神秘的で、心の底からきれいだと感じた。
中学時代のこの話は、いつか何かしらの形で残したいと思っていた。拙い文章な上に記憶もおぼろげで、不格好ではあるが、こうして書き留めることができて嬉しい限りである。
冒頭に記述したが、私は社会人になった今でも、自転車で通勤している。今は親戚から譲り受けた電動アシスト自転車に乗っているが、中学の時に買った自転車も一緒に置いてある。
会社までは片道5km、勾配は緩やかである。
行きはさーっと下って、帰りはのんびり上り坂を。
春になると桜や菜の花が咲き誇り、梅雨に入ると紫陽花が色づく。夏は畑で野菜が育ち、雑草たちが元気に伸びる。時にすももの匂いがした。秋や冬はどうだろうか。
会社勤めは学生時代とは違った大変さがある。
ホワイト企業といえど、毎日、ヘトヘトである。
毎日片道5km、遠いと思う人もいるだろうが、
自然を感じる時間は、案外、いい気分転換になる。
明日も自転車を漕いで、自然に癒されながら、
とりあえず、会社に向かおうと思う。
写真は帰宅途中に撮影したものである。
明日も、その翌日、翌々日も、この道を通る。
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