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勇み足
私が小さい頃、額が広いことを気にしていると、母が「額の広い人は頭が良いんだよ」って慰めてくれました。
まったく、根拠がないのかと思いきや、19世紀初頭に流行っていたんですね、骨相学なるものが。もちろん、母は20世紀を生きた人ですがね。
骨相学とは「頭蓋骨の形から個人の性格がわかる」という単純な主張ですから、大衆受けしました。当時の名士たちは、思慮深く見えるよう肖像画の額を広く描かせたようです。
始祖はハプスブルク家が治めていたウィーンの医師のフランツ・ヨーゼフ・ガル。彼は、「色、 音、言語、・・芸術、哲学、盗み、殺人・・」に対応した27 個の「器官」の集まったものが脳だと考え、「器官学」を提唱します。そして、あろうことか、頭蓋骨を視診・触診すれば、その人の性格や素質を知ることができる、と主張するに至ります。
ただ、ガルの名誉のために言いますけど、彼は私のように額の広さを気にして骨相学を唱えたのではありません。まあ、骨相学は、大脳生理学、神経解剖学に大きな功績を残したガルの「勇み額」ならぬ「勇み足」ってとこではないでしょうか。