滑り坂論法
相手の主張を「人道的でない」と念仏のように唱えていれば、「人道的」な政策となるのでしょうか?
国境の壁建設 ⇒ 非人道的だ、ナチスだ ⇒ 壁建設は中止すべき。
トランプ政権を、非人道的だ、ナチスだ、と非難し、政権をとったら 1㎜も延伸しないとしていた国境の壁建設でしたが、バイデン政権は最近になってひっそりと作業を再開しました(笑)。
そして、現実は人道的どころか、選挙で民主党が主張していたことと逆の結果に・・・。
既に国境は不法移民であふれ、国境警備隊は手が回らず、子供達は搾取され、カルテルは私服を肥やし、数えきれないレイプや暴行が横行。
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ムール・ガイさんはドイツにも住んだ経験があり、法律の知識も豊富な方。
・・・入管法改正の問題となっているのは、難民申請に回数制限を設けられたことと強制送還の要件と執行の緩和です。これだけ聞けば、人権侵害も甚だしいと思うかもしれません。そんなことはありません。
入管法改正の背景には強制送還命令を拒否する外国人や不法滞在者の増加があります。・・・・現状の入管法では・・・・テロリストや重大犯罪人を・・・日本国内に滞在させることになります。・・・収容所のキャパシティーの問題や脱走のリスクと言った観点から法改正で強制送還を行いやすくしようとしているのです。
・・・・当初は人道的見地から身分証明書がなくとも難民認定をし、滞在資格を与えていました。・・・・つまり、嘘を隠し通すことも可能なのです。テロリストとはそういったことを悪用し難民認定を受け、その国でテロ行為を行うのです。
ヨーロッパ(特にドイツ)では、難民を受け入れすぎた影響で、治安が悪化しています。・・・・紛れているテロリストがヨーロッパでテロ活動を行い、治安が悪化しました。・・・つまり、入管法改正は安全保障の一部なのです。
国の役割は自国民を守ることが最優先課題で、世界の常識です。・・・・実際、僕もドイツで家を失いかけて、強制送還が視野に入りかけたこともあります。・・・・外国人は滞在している国に管理されなければならないのです。・・・・外国でのパスポートの携帯が義務付けられているのはそのためです。・・・「人道的見地から難民申請が拒否されれば、強制送還され、本国で命を落とすのは可哀そうだから反対」というのは筋違いです。
・・・・感情論ではなく、どうすれば、紛れたテロリストを見抜けるかといった制度的な話になると思います。すべてを人権問題に置き換えるのは論点のすり替えとしか思えません。
・・・・滞在している外国人が信用されていないのではなく、自国民を守るために行っていること・・・・出入国管理は国の安全にかかわることであり、それを感情論でないがしろにするのはいいことではありません。
・・・・人としての権利は絶対制限されてはいけません。外国人だから、日本人以上のいい家に住んではいけないとか、違法な条件で働かされたり、こき使われたりして当然だとは思いませんし、・・・是正したり、取り締まったりするべきだと思います。・・・・本当の難民の人たちを救うためにもテロリストが難民として紛れ込まないようにすることが大切になってくると思います。
難民申請をしている人の敵は入管法ではなく、難民申請を悪用するテロリストです。
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ムール・ガイさんの主張が「人権の軽視」でないことは明白です。「論点を整理して考えよう」言っているだけ。つまり、「滑り坂論法」に騙されてはいけないってことと、「同胞と愛国心(連帯と帰属)」について考えようってことです。
字数の関係で、「同胞と愛国心(連帯と帰属)」については次回の記事で。
人を思考停止に陥れ、ひいては人を騙すことができる方法として、「滑り坂論法=滑りやすい坂論」があります。ある行為を法的または道徳的に許されないとするためによく使われる方法です。入管法改正に反対する人の主張は、冒頭で提示した国境の壁建設への反対と同じ論理の展開の仕方です。
紛争地域から来て難民申請をしても、拒否されて強制送還されて、本国で命を落とす ⇒ 人権侵害も甚だしい ⇒ 入管法改正はすべきではない。
これに少し文言を追加してみると、見え方が違ってきますから(笑)。
=「入管法を改正したら ⇒ 坂道をどんどん滑り落ちるように、人権侵害につながる or 人権侵害に歯止めが利かなくなる ⇒ だから、入管法改正はすべきではない」
一般に、人権侵害というショッキングな「結果の恐怖」を提示されると、善良な市民(笑)は足がすくんで、法改正の是非を論じられなくなってしまいます。でも、ムール・ガイさんの主張を読めば、「滑り坂論法」で意図的に割愛された論点が浮き彫りになってきます。
テロが増え、治安が悪化したヨーロッパの現状を自分の体験を通して我々に教えてくれています。人道的見地から身分証明書なしに難民認定を受けられるようにしたら、テロリストが日本に滞在する危険性が高まる。だから、自国の安全保障と、本当の難民を救うために議論すべきは、テロリストが難民として紛れ込まないようにする方策。
「滑り坂論法」の事例は枚挙にいとまがありません。安楽死、憲法9条、スパイ防止法、死刑制度・・・・。
助さん、角さんの「この印籠が目に入らぬか」ってな調子で、確証もないまま、異議を封殺する「滑り坂論法」、思考停止をさせるための上等ではない常套手段なので、くれぐれもご注意を。