首都圏幹線路線設備まとめ④ 常磐線
本シリーズは特別料金不要の列車のみを対象に首都圏の幹線鉄道路線の設備をまとめるものである。具体的には、大都市近郊区間、都心からの直通列車がある区間、ホーム有効長、電車特定区間、複々線区間、種別、貨客分離区間、路線記号導入区間、発車メロディー導入区間、ATOS導入区間、並行する通勤新線の11項目についてまとめる。
※本項では便宜上、走行区間にかかわらず通勤型車両を用いる系統を中距離電車(中電)、通勤型車両を用いる系統をE電と呼ぶ。
概要
常磐線は本来は日暮里~岩沼間を結ぶ路線であるが今回は品川~仙台間として扱う。中距離電車(普通列車)は青色で、かつてはローズピンクであった。
設備詳細
大都市近郊区間•都心直通区間•ホーム有効長
大都市近郊区間:浪江まで
(仙台近郊区間:小高から)都心直通区間:高萩まで
(廃止:いわき•仙台)15両対応区間:土浦まで
12両対応区間:勝田まで(詳細不明)
11両対応区間:いわきまで(詳細不明)
8両対応区間:原ノ町まで(詳細不明)
大都市近郊区間は80年代以降特別料金不要の直通列車が存在しないいわき以北まで伸びておりかなり長めである。
現在は都心からの列車のほとんどが土浦で折り返す。2022年までは終日に渡り水戸行きが存在したが現在は朝夕が中心である。2005年まではいわき行き、1982年までは仙台行きが存在した。他線区とは異なり県庁所在地である水戸への直通が激減した理由は土浦以北が15両に対応していないためである。しかし勝田やな車両基地があるため完全な系統分離は不可能であることから、朝夕の直通は未来永劫残ると思われる。
現在高萩以北で10両の列車はE501系10両固定編成の運用が朝夕に存在するのみである。E501系はかつて中電で使用されていたが、上野口中電へのグリーン車導入により水戸地区のローカル運用限定となった。そのためJR東日本の地方線区限定車両で唯一10両固定編成が存在する。そのため終日都心直通がある区間が短いのとは対照的に、10両編成が入る区間は東海道線や中央線などと比較してとても長い。この理由には常磐線が山間部ではなく海沿いを走るため、宅地開発が進んだことが関係しているのだろう。10両対応区間が長いため中央•高崎線とはとは異なり21世紀まで長距離列車が残存できていたが、それもグリーン車導入により高萩以北の設備対応費用削減のため系統分割されてしまった。
土浦から先の列車は最大10両までだが、Yahoo!知恵袋によるとかつて415系などの国鉄型で11両や12両があったため勝田まで12両、いわきまで11両に対応しているそうだ(質問者は本記事執筆者ではありません)。
また、ネット上には原ノ町まで8両に対応しているという記事があるが、それ以外の情報は見つけられなかった。
原ノ町から先は仙台車の両数から恐らく6両までの対応であろう。
なお、水戸地区は高崎•宇都宮•甲信越地区とは異なり、中電と同じE531系がローカル運用でも使われるため、同車の運用範囲は品川〜原ノ町間と桁違いの距離である。
電車特定区間•複々線区間
電車特定区間:取手まで
(構想断念:土浦)複々線区間:取手まで
快速線のE電の中には取手へ向かわず途中の我孫子から成田線に乗り入れて成田へ向かう列車も存在する。
取手は大船や高尾と比較すると近距離にあるが、これは茨城県にある地磁気観測所の影響で取手以北が交流電化となっているためである。
電車特定区間については90年代に県南輸送力増強期成同盟会により土浦延伸が要望された。しかし試しにトイレ•オールロングシートの通勤型車両であるE501系を中電に導入した結果失敗に終わったため実行されることはなかった。通勤型車両のE501系が中距離電車に分類されるのはこのためである。しかしE531系の導入により国鉄型よりも輸送力の増強が図られているため、延伸は必要なかったのかもしれない。
種別
常磐線では現在以下の種別が運転されている。
中電... 普通(快速線)、特別快速(快速線)
※普通列車の取手以南は快速として案内。かつての停車駅は中電普通>E電快速であったが現在は普通=快速。
E電...各駅停車(緩行線)、快速(快速線)
かつては中電に以下の種別が存在した。
快速
※E電快速とは異なる
通勤快速
(Wikipediaより、今後時刻表で調べ確実な情報が分かれば更新する)
貨客分離区間
貨客分離区間:なし(三河島まで)
貨物線は田端~三河島〜隅田川貨物駅間の常磐貨物線があるが、三河島以北で貨物用の線路は存在せず、旅客列車に混じって走行する。金町で総武本線や越中島貨物駅からの新金貨物線が合流する他、北小金で東北•甲信越•東海道方面からの武蔵野線も合流する。茨城県内には専用線や貨物線が分岐する駅がある。
路線記号•発車メロディー
路線記号導入区間:取手まで
発車メロディー導入区間:久ノ浜まで
※臨時駅の偕楽園は未導入ATOS導入区間:羽鳥まで
路線記号の導入区間は電車特定区間の取手までとかなり短くなっている。ATOS区間も羽鳥までと東海道線や宇都宮線と比較すると短くなっている。
発車メロディーが全駅に導入されているのは久ノ浜までであるが、実際は久ノ浜から先、岩沼までの各駅でも高い割合で導入されており、ご当地メロディーも多いことからかなり積極的である。
中電のラインカラーは青である。筑波万博まではローズピンクであった。快速線のE電はエメラルドグリーンである。
通勤新線
通勤新線:つくばエクスプレス(つくばまで)
計画中:土浦まで/計画中止:水戸まで
新五方面作戦では大崎〜池袋〜田端〜つくば〜水戸間の常磐開発線が計画された。これが形を変えて2005年につくばエクスプレス(首都圏新都市交通常磐新線)として開業した。当初はJR東日本が運営予定だったが需要が見込めないとして計画途中で手を引いたため第三セクターの鉄道となった。高速運転対応であることから、常磐線ではつくばエクスプレス対抗用で特別快速の設定やE531系の導入が行われた。しかし結果的に常磐線に大打撃を与えることになった。今後つくばエクスプレスは最高速度を時速130kmから160kmに向上させる可能性がありさらなる打撃を与えることになる。
つくば以北は当初の常磐開発線計画では水戸まで建設されるはずだった。しかし計画が常磐新線に移行した際はつくばまでに短縮され、つくば以北は延伸計画に委ねられた。2023年に筑波山案、水戸案、茨城空港案(自治体運動では茨城空港経由水戸案)、土浦案の中から建設費の安い土浦案に内定した。具体的な建設方法や開業時期は未定である。
なお、都心側の始発駅は現在秋葉原で、東京や国際展示場方面への延伸が計画されているが、当初予定では田端から山手貨物線に乗り入れて大崎へ向かうものや、市ヶ谷経由で新宿に向かうものが考えられていた。しかし国鉄末期の時点で始発は東京に変更されている。
まとめ
設備まとめ
大都市近郊区間:浪江まで
都心直通区間:高萩まで
(廃止:いわき•仙台)15両対応区間:土浦まで
12両対応区間:いわきまで
8両対応区間:原ノ町まで
電車特定区間:取手まで
延伸構想断念:土浦複々線区間:取手まで
中電種別:普通(快速線)、特別快速(快速線)
※普通は取手以南で快速と案内
廃止:快速、通勤快速E電種別:各駅停車(緩行線)、快速(快速線)
貨客分離区間:なし(三河島まで)
路線記号導入区間:取手まで
発車メロディー導入区間:久ノ浜まで
ATOS導入区間:羽鳥まで
通勤新線:つくばエクスプレス(つくばまで)
計画中止:水戸(常磐開発線)
特徴まとめ
かつてはいわきや仙台まで直通していたが現在は最長で高萩までの運転である。
水戸は県庁所在地であるにもかかわらず、土浦から先は15両非対応であるため日中は系統分離により都心直通がない。しかし勝田車両センターへの入出庫のため完全な分離は不可能である。
水戸地区にはJR東日本では唯一地域完結の10両編成運用があるため、10両乗り入れ区間がいわきまでと他路線よりも長い。
10両対応区間が長いため21世紀までいわき行きの長距離列車が残れていたがグリーン車導入により廃止された。
中電もローカル運用同じE531系が使用されているため、同車の運用範囲は品川〜原ノ町間と桁違いに長い。
電車特定区間は取手から先が交流電化のため取手までと短い距離になっている。
かつては電車特定区間を土浦まで延ばす構想があった。
E501系は通勤型車両だが中電に分類される。
かつてはE電と中電に同名で停車駅が全く異なる2種類の快速が存在した。
駅ナンバリングは取手までと導入区間が短い。
発車メロディーは全駅(偕楽園除く)導入されているのは久ノ浜までだが、実際は岩沼まで多数の導入駅が存在し他路線よりも積極的である。
つくばエクスプレスの元になった常磐新線は水戸までの計画だった。
参考サイト
出来る限り信頼性のある情報を使用していますが、一部でWikipediaや個人サイトを利用しています。
路線概要
大都市近郊区間
電車特定区間
複々線区間
路線記号
https://www.jreast.co.jp/press/2016/20160402.pdf
発車メロディー(発車ベル使用状況 様)
ATOS
通勤新線(草町義和 様/一般社団法人建設コンサルタンツ協会 様)
https://www.jcca.or.jp/infra70n/files/PJNO_06.pdf
最後までお読み頂き有難うございました。次回は総武本線の予定です。