
「#崇デ2集中講義」の誕生 〜プロローグ〜

この4月から、8回目となる「#崇デ2集中講義」が開講します。
崇城大学で講義を始めた当初の講座では、作品を完成させることのほうにフォーカスしていましたが、回を重ねるうち、コミュニケーションや対話を通じた受講生同士の関係作りを重視するようになりました。また、教育者として「学生の自己肯定感を高めてあげたい」という思いも育ってきたように感じています。
「仕事・実績の言語化をしたい」と長年思いながらも後回しにしていました。新年度の講義が始まるこの機会に、ファシリテーター活動の言語化第1弾として「#崇デ2集中講義」のことを書きはじめてみます。
これから講義を受ける学生のみなさんに興味をもってもらえる話に、そしてファシリテーションを学びの場に取り入れたい人たちに役立つ話になればと思います。
そもそも「#崇デ2集中講義」とは何か
#崇デ2集中講義
— がりゅー@野良ファシリテーター (@Garyuten) July 20, 2018
とかがいいかな
熊本県にある崇城大学の芸術学部デザイン学科で私が担当している「デザイン発想論演習」のハッシュタグです。2018年から使っています。
崇城大学芸術学部
デザイン発想論演習
2年生対象
集中講義
→#崇デ2集中講義
「#崇デ2集中講義」のリンクからワークショップ中の様子や学生からのコメントなどが見られます。
「#崇デ2集中講義」を始めたきっかけは?
2015年3月作成「#崇デ2集中講義」のためのミーティングボード
2013年のある日、福岡中洲の「SunBee(サンビー) 」というコワーキングスペースで、当時崇城大学で非常勤講師をしていた友人から相談を受けました。
「Webデザインを担当している講師がいないので、金内さんがWebデザインを教えるのはどう?」
それが「#崇デ2集中講義」を始めるきっかけです。
(残念ながらSunBeeはコロナの影響もあり2021年夏に閉鎖しました。)
2014年度の前期から、2年生を対象とした「デザイン発想論演習」を担当することになりました。初年度は現在の講義とまったく違う内容でした。「Webデザインの技術習得」にフォーカスした内容でした。
翌年の2015年度からガラッと変えて、作る前の段階の「作るモノは何なの?」から考えていくWebデザインやサービスデザインを、ワークショップ形式で行う講義へと方向転換しました。2日間連続の集中講義を丸一日ワークショップ形式で行います。
「#崇デ2集中講義」はどんな講義?
最終のプレゼンに向けてのチームミーティング
クリエイティブは生来のセンスではなく、後から学べるもの。そして1人の天才が作るものではなく、複数人によるコラボレーションで生まれること体験する場
ユーザー視点からコンテンツをデザインする手法を、実習形式で経験し習得する場
デザイン、制作、評価、改善のサイクルを4〜5名のグループでのワークショップ形式で体験する場
Webサイトやアプリケーションを設計する基本的な巻き込みの習得
上記は「#崇デ2集中講義」の内容を端的にまとめたものです。ワークショップ形式の集中講義を始めた2015年の大学へ提出した講義の実施報告書の内容なので、ずいぶん前になりますが、2022年の現在も基本的な内容は変わっていません。
講義の目標は「失敗経験」と「対話と議論」から生まれるコラボレーション
ワークショップで学んでほしいことの図。講義初日にこの図を使って解説しています。
この集中講義では、私が何かを教えるというよりも、受講生に「失敗」と「対話」を経験してもらうことを大切にしています。
早く作って早く失敗する
この集中講義は、ワークショップにモノ作りを通じて「自分はもっとこう振る舞いたかった」「まだまだやれたんじゃないか」という失敗体験を経験してもらう場にしています。もちろん「うまくできた」「やれるようになった」「意外とできた」という成功体験を否定するわけではありません。
学生のうちに「何のために作るのか」という議論を徹底的に行ってからモノ作りをする経験をしてほしいからです。
対話で自己と他者を理解する
学生時代というのは、ひたすら自分と他者とを批評して比べながら、自分の得意不得意を見極めたり、この点は他者に任せるとよりいいモノができるかもしれないと考えたりして、自分を見直す時期だと思っています。
ワークショップの場に学生を巻き込むと、心理的安全性を担保した互いに言い合える関係作りを作りやすいので、自己と他者の理解が特に進むと感じています。
コラボレーションでモノ作りを体験する
今のデザイン思考を象徴するのが「1人でデザインする時代は終わった」というフレーズです。コラボレーションによるデザインでいかに天才を超えるデザインやイノベーションをどう生み出すかが、これからの時代に求められています。
コラボレーションの相手は、制作者ばかりとは限りません。クライアントと一緒になってデザインやプロダクトを生み出す手法がとても大切になってきていて、その手法の1つがワークショップだと考えています。
ワークショップにもいろいろな種類がありますが、「#崇デ2集中講義」では、対話や議論のしかた、自己分析を踏まえてからモノ作りのステップへと進むワークショップにしています。
講義の受講生の声
チェックアウトをシャッフルレビューしている様子写真
「#崇デ2集中講義」を始めてから、私自身も授業をするのがメチャメチャ楽しくなりました。毎回、学生が何をやってくれるか楽しみになりましたし、何より学生が成長していく様子が楽しくてしょうがなかったです。成長促進の場にいられることが、ものすごくやりがいになっています。講義後アンケートで受講生から寄せられた感想や評価に目を通すと、いっそうその思いを強く感じます。
受講生からの声を、ほんの一部ですが紹介します。
「1人で悩んで、1つのモノを作り込んでいくより、何回も晒してダメ出しをくらいながらより良いモノを作っていくことの楽しさがすごい…。恥ずかしいな、失敗したくないなって気持ちを、捨てられた気分!」
「もうこの講義ぜんぶぜんぶ含めてすごく楽しくて、こんなに楽しい講義は大学に入って初めてでした!本当に様々な刺激を受けることができたし、自分のこれからに生かせることばかりで、あやふやだった自分のできることや得意なことが分かってきて、自信にも繋がりました。素敵な経験をさせてくださって本当にありがとうございました!3年生になっても講義を受けたいです!」
「去年初めて大学生になってほとんどの授業がオンラインだったために大学に入る意味が楽しさが全く感じられなかったのですが、2年目の今年はこの授業通して初めてクラスのみんなとちゃんと話せて、授業は何倍も楽しく過ごせました!。1限から5限は長いと感じるのは普通ですが、何故かこの授業は『短かったなぁ』と思いました」
「とりあえず考えたことを書き出すことで、意見を客観的にあとから見ると、自分でも予想してなかった答えにたどり着くことができる。意見をどんどん出すことは大事だと思ったので今後生かせると思う」
「すべての講義が楽しく、講義をする前と後では心構えが変わり殻を破ることができたような気がします。多くの講師の方にも来ていただいて知識の引き出しの多さに驚きが凄かったです」
「最高の授業でした!ありがとうございました!!」
まとめ
「#崇デ2集中講義」の誕生とタイトルに掲げながら、概要や授業で語っていることだけで話が終わってしまったので、次回はまだ授業で話したことのない「#崇デ2集中講義」の素になった経験を中心にまとめます。