FGN サービスデザインのオンラインワークショップの振り返り
2022年1月29日(土) 9:00-17:00 にFukuoka Growth Next 大名エンジニアカレッジが主催したサービスデザイン講座のオンラインワークショップのファシリテーターをさせてもらいました。ファシリテーター視点での振り返りを書いてみます。
まずはチェックアウトとアンケート結果
概ね好評でした。正直なフィードバックもいただけたので今後に活かします。即興演劇は大きなきっかけになったようです。
「言葉にネガティブが一つもない事が気づきでした」とファシリテーターとしてもサービスデザインを考える場でも大事なことに気づかた方がいたのは嬉しい驚きでした。
これらチェックアウトやアンケート結果に至ったワークショップの構成やファシリテーターで気をつけてた点を時系列に書いていきます。
告知されてた開催要項
当日13人参加してもらえました。
エンジニア、起業家、デザイナーの社会人がほとんどの中、G's Academyの卒業生や現役学生さんもちらほらいらっしゃいました。
どんなことやったのか?
サービスデザインといいつつ、課題発見方法や課題の質にはほとんど注力せず、とりあえず出たアイディアを短時間で検証することに軸を起きました。
チームのブレストで出た課題を上の図のように、とにかく早く検証していく手法を体験してもらいました。
9:00開始
・チェックイン:ルール説明、miroの使い方など
・チームビルディング:自己紹介カードやYen&Yes
・サービスのアイディア出し:ブレインライティング
(休憩90分)
・サービスの価値の言語化:リーンキャンバスやゴールデン・サークル
・ペルソナ作成とセリフ決め
・即興演劇でストーリー検証
・モック作成
・チェックアウト:今日の気づき、振り返りKPT
〜 17:00終了
上記のスケジュール見てわかる通りかなり詰め込みです。しかもオンラインワークショップで3時間で長いと言われてるのに8時間近くです。
しかし、アイディアからモック作成まで一気にやることでしか体験できない「短時間で課題を検証する」経験してもらうため、参加者の皆さんには頑張ってもらいました。
宿題で自己紹介カード
参加者には当日までの宿題として、miroに自己紹介カードを入力してもらっていました。miroにも慣れてもらう狙いもあります。
今回無料の3つの診断系の結果も貼ってもらいました。
・動物占い 5アニマル
・ソーシャルタイプ
・性格タイプ
そして工夫として、診断結果に対して一言自分なりのコメントを入れるように促しました。すると、「当たってる…?」「自分でも意外な結果でした」「自分はこういうところがあるので気をつけます。」とセルフツッコミも入り、初めての人同士でも短時間で相互理解しやすくなったようです。
チェックインでルールの徹底と「知の共有」
チェックインではゴールや学ぶこと、場のルールを説明しています。初顔合わせのメンバー同士でチームを組んで貰うオンラインワークショップでは明暗を分けるので時間をかけました。
私にとっても初めてのトライとして、一番最初に「このワークショップ中はmiro上に好きにメモしていいです。自分の手元にメモを残さずに皆で気づきをメモしていきましょう。説明中の質問もどんどん書いてOKです。もしその質問が分かる人は答えてあげてください。皆でノートを取る集合知の感覚でOKです。」と伝えました。
するとスライド上にない私のアドリブのセリフをどんどん書いてくれて、Twitter上のハッシュタグが目の前で書かれていく感覚でとても新鮮でした。これは今後も取り入れていきたい。
早く作って早く試して早く失敗する
ワークショップは失敗を体験する場です。仕事でないので失敗体験視点で設計しています。(もちろん達成感や部分的な成功体験は織り交ぜてます)
なので「時間厳守」「失敗OK」など心理的安全性のために念入りに説明しました。
良質な仮説を生むためには検討材料となるアウトプット量は多ければ多いほど良いです。5グランドルール (株式会社デキル。の登録商標)の周知も徹底しました。
miro上でくじ引きしてチーム分けをした後は
自己紹介→アイスブレイク ではなく、
アイスブレイク→自己紹介
の順番にすることで緊張がほぐれた状態で自己紹介ができてたようです。
アイスブレイクはYes&Yes。アイディアにアイディアを重ねていくので、今回のワークショップには最適でした。アンケートに書かれましたがYes&Yesの精神を最後まで通してくれた方がほとんどでした。
アイディアを荒削りで言語化
ブレストで出たアイディアはまだ種です。いいね!とチーム間では言っていても課題感や具体的な顧客像はふんわりしてる段階です。なのでリーンキャンバスに着手する前に一度言語化してもらいます。穴埋め作文やゴールデン・サークルといった簡単なものです。
ちょうど昼休みに入ったタイミングだったので、ここで各チームの進捗具合を見渡し、課題の設定が甘そうなチームには深堀の視点や問いを投げ込んでいました。気づいたチームは昼休み中も議論再開していました。こういう時の投げかけは口頭で言われるよりも、味気ないテキスト入力されるよりも、イラストやカードの類の方が自ら気づける効果が高いのでいいですね。
穴埋め作文は簡易版エレベーターピッチみたいなものです。
チームで考えるさせる手順として、正解で埋めるより先に「何から考えたらいいか?の問い」「思いついたキーワード」を書かせるようにしました。特に問いを書かせることで思考停止することなく、仮説が書けなくても何がわかれば仮説を書けるか?と常にチーム内で創造的な対話を続けられてたと思います。(答えを考えなくていい、で心理的安全性が高まってました)
仕事の話になりますが、穴埋め作文をそのビジネス関係者全員に個別に書かせると全部違う答えになるケースがほとんどです。10人書かせたら10通りの答えになります。最初はそれでいいのでお互いのアウトプットの違いを確認し合うために対話する過程が一番大事です。決して間違い探しに使わないように。
リーンキャンバスで課題の検証
リーンキャンバスの書き方自体はここでは書きません。たくさん参考サイトがありますので。
ただワークショップなので時間が有限なため、マスの難易度で時間を調整しつつ1マス毎につき 拡散(個人で書く2-3分) → 収束(皆で共有2-3分)
と一気に最後まで書いてもらいました。
全ての枠を考えてみる=ビジネス全体で俯瞰する 感覚を体験してもらうのが目的の一つだったので、課題がぶれたりソリューションが思いつかなかったり一つの枠でつまずいても、飛ばして次の枠を考えてもらいました。
そしてリーンキャンバスは決めたら終わりでなく、課題何度も何度も立ち返るべきもので、ペルソナやモック作成に入って課題の仮説が間違ってると思ったらすぐに立ち戻るところであることを伝えていました。
あるチームはリーンキャンバスを進める内にメンバー間で課題の認識がズレてること気づき、その前の穴埋め作文やゴールデン・サークルまで立ち戻っていました。時間的にかなりギリギリでしたがワークショップ進行に課題設定のズレに気づいて修正を間に合わせたのは大変素晴らしかったです。
この時のファシリテーターとして「ワークショップだから失敗していい。そして課題の間違いに気づけたなら検証に成功したってことだよ。だから前段階に戻って課題は何か考え直していいよ。リーンキャンバスは最低でも 課題、顧客、提供価値の3つはチームで擦り合わせて。他は後で埋めたらいいから。」と伝えました。
謝辞)リーンキャンバスはGMOペパボさんが公開されてるLean-Canvas-prototype-PDFを使わせてもらっています。各枠の一言が平易でわかりやすくとても使いやすいです。verの繊維からどれだけ考え込まれてきたのか伝わります。いつもありがとうございます。
ペルソナ作成はスタートとゴールのセリフを決めるまで
ペルソナのイメージ画像とか名前や属性とか抱えてる課題とかゴールとかは穴埋め式にチームで対話してもらいながら書き出してもらいますが、今回のワークショップで一番大事なのはセリフです。サービスを使う前(厳密には課題に直面した状態)のセリフと、サービスを使った後(厳密には課題を解決した状態)のセリフを仮でもいいので決めてもらいます。
このセリフを元に即興演劇が始まります。
即興演劇でペルソナになりきりサービスの流れを検証
ペルソナで考えたセリフで即興演劇をやってもらいます。
演じる人は、目の前にもしくは手元に理想のサービスがある前提で、ペルソナになりきって、スタートのセリフで始めてゴールのセリフで終わるまでアドリブで演じてもらいます。
この時、どこまでペルソナになりきれるかが重要です。そのためには状況設定も演じる人は強くイメージできてないといけません。今いる場所は?時間帯は?一人なのか?スマホなのか?PCなのか?立ってるのか座ってるのか?移動中なのか?などなど演じるのに必要そうな設定を先に決めていたチームは上手くいっていました。
他のメンバーにはセリフをメモしてもらい、どんな画面を見ていただろうかを下にざっくり書いてもらいます。ここに画面遷移やコンテンツを考える種が出てきます。
そして一度ストーリーを見直し、本当にスムーズだったか、違和感や思い込みが入ってなかったか、ソリューションは間違ってなかったか、を検証してもらいます。違和感があればセリフやペルソナの設定、リーンキャンバスまで立ち戻って検証してもらいます。
時間がなかったため、残念ながら演じてもらうのは各チーム1名のみでした。本当は全員にそれぞれ演じてもらい、メンバー分のストーリーからメインのストーリーを一つ作ってもらう予定でした。なりきる体験を全員ができなかったことが非常に残念です。
WS中に気づいたんですが、リーンキャンバスの右端が顧客なので、その右にペルソナ→即興演劇舞台 と並べていくとチームが迷子にならずに良い感じでした。
この後はmiro上のオブジェクト(矩形、テキスト、アイコンなど)を使ってもらって簡単なモックを作成していってもらいました。
残念ながらここでタイムアウト。チーム内でユーザーテストするまでは至りませんでした。
チェックアウトで振り返りや今日の気づき
最後に振り返りとしてチームごとにKPTをやってもらいました。
K、P、Tとそれぞれ時間を短く区切って行ってます。
(一部、私の振り返りとしてリアクションを入れてます)
声掛けとして「Keepはチームメンバーを褒めるチャンス!感謝や賛辞を言葉にしよう!」と言うことでお互い称え合う感じになりました。
ラストワークで今日の気づきの共有。
自分の言葉で書いてもらってワークショップ終了。
ファシリテーターとしての振り返り
とにかく時間足りませんでした。対面ならユーザーテストまでできてた(言い訳)
前半、miroの使い方やルール説明に少し時間を割いたのもあります。あと私が余計な雑談で横道にそれたのもタイムロスでした。
あと今回 toucan.events を使ってみたのですが、皆さん慣れないツールだったので接続や使い方にも戸惑わせてしまいました。
一番の問題点は各チームの発表の時間を取れなかったこと。運営側は他チームを横断的に見てましたが、参加者からするとずっとチームで固定されていたので閉塞感があったかもしれません。他のチームの進行も気になってたかも。次回あれば途中で各チームのビジネスをLTさせる時間など取りたい。
他にも改善点たくさん出てきましたがアンケート結果やチェックアウトからは好意的な意見も多くあり、概ね成功したんじゃないかと手応え感じてます。
丸一日オンラインワークショップという気が狂ってるしかと思われてないような講義にご参加いただいた皆さんへ、本当にありがとうございました。私自身も大変学びある体験となりました。皆さんのお仕事に少しでも役に立てたなら幸いです。いつか対面でワークショップを行える日を楽しみにしています。
参考
ワークショップ中に紹介した書籍など。
新規事業やスタートアップでの課題発見やアイディア検証の手法や考え方からプロトタイプ検証、MVPの評価まで非常に網羅的にまとめてあり大変オススメです。
「どうやったら、その問いを出せるのか?」とファシリテーターへの質問がありました。そんな方に超オススメの本です。アイディアを出したり仮説を検証したりする時にも役に立つ思考方法です。
「チーム内で対話ができなかった…もっと意見を出し合えるようにしたかった。」という方にオススメです。
「この問いかけのイラスト、めちゃくちゃいいです!miroの打ち合わせとか仕事で使いたい!売ってるんですか?」という声を多く頂きました。
が、すみません、LINEスタンプならありますがそれ以外では売ってないです。欲しいという声をかなりいただいたのでCGFMデザイナー @mutsuking と検討します。
最後に
ペルソナ5Rはいいぞ
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