国立劇場建替え・築地再開発の融合(4)
築地再開発ビジョン:築地娯楽街
築地市場跡地の再開発の話をしてきたが、それは実際にどのような形にするのがいいのだろうか。日経新聞によると「都は募集に際し、ホテルや国際会議場、最低1万人規模を収容できる大規模集客施設を備えた「国際的な交流拠点」の整備などを条件に挙げた」とのこと。8月末が公募期限だったが、入札の内容や参加者等に関しては、東京都都市整備局は都民に対して「どの事業者が応募したかはお答えできない」という、相変わらずの態度だ。
しかし地面積19.6 万㎡以上の莫大な規模のプロジェクトだけに、三菱地所など大手不動産開発会社はほぼ全て応募していると思われる。日経新聞の第一面では三井不動産を中心とした企業連合が名乗りを上げるとの報道がされているし、それらの会社が提出した案の概要には多目的スタジアムの建設が含まれるそうだ(三井不動産は東京ドームの親会社でもある)。どういった事業者が入札し、どのような企画を出しているのか、納税者は知らされぬまま、結果は都の誰かが決めることになると見受けられる。ビジネス街になるのか、観光地なのか、あるいは築地ミッドタウンや築地ヒルズのような商業施設なのか、築地がどうなるのかは今のところ、都民や国民は一切知りようがない。だが、本来なら国立競技場のようなスタジアムが銀座界隈の場所柄に合うのか、持て余すだけになるのではないか、等、広い議論が必要だと思われる。
以前のNoteでは、日本館の話を提案したが、今回はもっと大きなビジョンを提案したい。どこかで誰かの議論のたたき台になってくれたらありがたいと思う。
旧江戸(東京)から“江戸”がほぼ消えている現状を考えて、江戸文化を体験できる築地娯楽街を考案してみた。江戸時代の造りによる劇場街を筆頭に職人街、海沿いの和食街、温泉街、商店街の5地域で構成され、広い客層を狙う街である。“日本”のユニークさを体験することを売りものにすることで、日本と出会う場所として日本人にも外国人にもアピールできる。つまり浅草寺(浅草)や竹下通り(原宿)のように、築地でしか、その場所でしかできない体験を提供したい。旧江戸に江戸を再生することで、日本人もそれを誇りに思い、国民にも喜ばれる施設になりうる。
つまり:
劇場街:歌舞伎劇場が中心とする
江戸三座のような江戸風の造り
歌舞伎や文楽からオペラまでを提供するエンターテインメント街
国立劇場を築地に移転:インフラが既に出来ている、という強みがある
伝統芸能体験館:ミニ公演やバーチャル公演の上演を核とする
旧江戸での小江戸
職人街:着物や瀬戸物、和紙、包丁などの店が軒を並べる
和食街:築地の寿司を中心とするウォーターフロント地域
温泉街:公衆天然温泉や高級旅館
商店街:古い町並みの造りによるショップで、全国のお土産品を扱う
イベント広場:凧揚げ大会や盆踊りなど、季節のイベントを行う
詳しくは以下の通り。
劇場街
江戸三座(江戸町奉行所に興行を許された芝居小屋)風の劇場街を作る。歌舞伎や文楽、寄席などの伝統芸能はもちろん、それ以外にもオペラや芝居、コンサートなど幅広い客層を狙う総合エンターテインメント街を目指す。伝統芸能に関しては建替え予定の国立劇場を半蔵門から移動すれば、芝居のインフラ(大道具やスタッフ等)はそのまま使える。日本人客以外にもインバウンドの訪日客も狙える。劇場が集中している銀座・日比谷周辺と並べば東京ブロードウェイや東京グランブールバールと言ったイメージになり、築地はその中心となる。特徴は下記のようである。
櫓、幟旗、提灯など、江戸の芝居町の雰囲気を活かす。
伝統芸能では歌舞伎(約1,000席)、文楽(約600席)、寄席など(小劇場)の劇場を作る。国立劇場を移転すれば、経験豊富のスタフやインフラは既に出来ている。
対象は歌舞伎通に限らず、一般人や初心者。上演時間は今の歌舞伎公演より短く、ミュージカル並みの2-2.5時間上演。
伝統芸能に限らず:幅広い劇場街を作る。
オペラ座やチャンバラ、大衆演劇など。児童劇場や紙芝居(屋台風)も。
江戸独特の雰囲気の中で、観劇するのも魅力となる。
伝統芸能体験館
日本の誇りである伝統芸能を体験できるスペース。劇場までなかなか行けない人でも気軽に日本独特の演劇形態を楽しむことができるようにする。子供から大人までアピールできる施設を目指す。
大阪USJのようにエンターテインメントとして楽しめる施設
体験型:見学者自身が衣装を来たり、隈取を塗ったり、三味線を弾いたり、能面を付けたり、花魁の鬘をかぶったり、アバターと共演する等
小道具、浮世絵、能面、写真、歴史的な映像等々を展示する
ミニ公演やバーチャル公演:芸を味わえる機会
歌舞伎等の若手俳優や研修生によるミニ公演
VRによる公演:日本の得意なVR技術を見せる機会にもある
3大伝統芸能(能、文楽、歌舞伎)のダイジェスト紹介公演
子供から大人まで、日本人から外国人まで幅広く楽しめる
文化を資産として収益化する
職人街
古い町並みの中で江戸文化を代表する工芸品などを売る。
日本と出会う場所
着物や瀬戸物、和紙、漆物、箸、包丁など和文化の店を並べる
版画や浮世絵などの画廊やアトリエ
店の内容以外にも、街全体の“体験”を提供する
神社を建てる
どこかの総本社に建ててもらう
七五三や例祭など神社に関わる催し
ウォーターフロント和食街
東京湾に面して和食屋を並べる
築地の老舗が並ぶ寿司広場
わっぱ飯や讃岐うどん、和牛、沖縄料理など全国の食を味わえる
屋台村:ラーメン、おでん、焼芋など
高級日本茶寮や会席料理屋
ウォーターフロントにイベント広場:
凧揚げ大会やお盆踊り、祭りなど季節イベント
プロモーション系(日本酒、旅行など)の特別イベントも
温泉街
温泉街を再現
露天風呂など数種類の温泉
温泉や軽食を楽しめる
高級旅館街
温泉街の中での専用エリア
星野リゾートやアマンホテルなど
場所的に富裕層にアピールできる
商店街
古い街並みの商店街
全国のお土産品
7つの地域(東北、近畿など)に分け、各都道府県のアンテナショップを一堂に集め、それぞれの名産を売る
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?