川村一年

趣味:読書、合気道、映画鑑賞、登山など。その場その場で興味を持つ対象が分かれます。基本的には歴史好き。旅行に行くなら電車が好み。

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書評 特別阿房列車

第一阿房列車阿房というのは人の調子に合わせてそう云うだけの話で、自分は勿論阿房だなどと考えてはいない。用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。 第一阿房列車 この本が書かれたのは昭和25年。昭和23年に国鉄発足。翌24年に下山事件、三鷹事件、松川事件、と「国鉄三大ミステリー事件」と呼ばれる、謎多き事件が起こっていた翌年の事である。 内田百閒とは内田百閒は1889年(明治22年)5月29日、岡山

    • グッドルーザーを作る、生み出す、認める社会でないと、妥協も融和も調和もない。それには安定が必要で、絶対に〜は許さないと言う妄念、執着が強いとグッドルーザーは生まれ得ない。

      • 書評 流転の海

        恐ろしい小説以前友人に勧められ、お前さんがどんな感想を抱くのか聞きたいと言われていた小説を、ようやく読んだ。 一言で言えば「恐ろしい」だった。 主人公の名は「松坂熊吾」。飢えた熊のような印象を抱かせる50歳の男である。 時は昭和22年の大阪。戦前は乗用車やトラックの車両とか、ベアリングなどを輸出する事業を展開し、御堂筋の一等地にビルを持っていたほどであるが、今目の前にあるのは自分のビルではない。ビルは戦火で焼け落ち、闇市のバラックが立ち並んでいる。 再びここにビルを建

        • 書評 ヒャッケンマワリ 竹田昼

          百閒先生は、私にとっては馴染みの人である。あったこともないし、話したこともない。そもそも私が生まれる前にこの世の人ではなくなっていて、すでに彼岸に旅立たされている人である。 そんな人がどうして馴染みかといえば、本で読んで知っている。第一阿呆列車で知っている。まあだだよで知っている。そして、この「ヒャッケンマワリ」で知っている。 最善の内田百閒紹介本私が百閒先生を初めて知ったのは第一阿呆列車である。それから第二、第三阿呆列車に大貧帳などの随筆が続き、由比駅などの短編を読んだ

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        書評 特別阿房列車

        • グッドルーザーを作る、生み出す、認める社会でないと、妥協も融和も調和もない。それには安定が必要で、絶対に〜は許さないと言う妄念、執着が強いとグッドルーザーは生まれ得ない。

        • 書評 流転の海

        • 書評 ヒャッケンマワリ 竹田昼

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        • 書評シリーズ
          15本
        • エッセイシリーズ
          1本

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          書評 隠し剣秋風抄

          この本は、読んでいると苦痛がない。 滑らかに、淡々と、しずしずと雪が降って積もるように話が進んでいく。 中には、初期短編集の暗殺の年輪を思わせるような、救いのない話もある。だが、多くはいわゆるビターエンドというようなもので、まだ問題はあるけれども、主人公が生き残っている。気持ちが切れて、やけっぱちになって終わるような話が少ない。それだけで前向きになっただろうと思えるのだから、暗殺の年輪は確かに重苦しい話だったのだろう。 この作品は昭和53年から55年にかけて、オール読物

          書評 隠し剣秋風抄

          書評 新編 石川啄木 (講談社文芸文庫) Kindle版

          金田一京助による、一大石川啄木伝記この本は様々な視点から読むことができる。基本は金田一京助による、石川啄木の伝記文学である。自分が啄木とどんな付き合いをしていたか。啄木がどんなことを語っていたか。金田一が経験したことは何かなどが語られている。啄木研究の人が読むか、金田一京助研究の人が読むか、明治後期の文学論についての参考資料として読むかで、全く異なる顔を見せる。 では、私はどんな立場で読んだかと言えば、単なる好奇心である。石川啄木のダメ人間っぷりは様々なところで読んできた。

          書評 新編 石川啄木 (講談社文芸文庫) Kindle版

          書評 突撃将棋十二番ー負けても懲りない十二番勝負

          将棋好きでも夢に見ないほどの贅沢将棋が好きな人には色々いて、最近では見る人が多くなっている。ネットの発達により長時間の視聴を多くに人に見てもらえるようになった事。コンピュータの評価値導入により、形成判断が分かりやすくなった事など、将棋を知るための敷居が低くなっている事が理由としてあげられる。 それに伴い、棋士の方々を知る機会が増えている事も多い。将棋は実力の世界で、実力が足りなければ15歳の子供を上座に座らせ、「負けました」と頭を下げることがある世界なのである。 そんな実

          書評 突撃将棋十二番ー負けても懲りない十二番勝負

          2匹のアリ

          今週は書評ではなくて、ある体験を話して書評の変わりとさせていただきます。今、本当に書きたくなった事はこっちなのです。 ある夏の日の体験です。 電車の中に、アリが2匹いました。 1匹は羽蟻で、もう1匹は小さいアリです。 どちらも自分の体に止まって、歩いて、自分の肌に痒みを与えてきました。 初めは風が体毛を動かして、それが痒いと思わせてるのかなと思ったら、アリが歩いていたわけです。 潰すのは簡単です、でも、それはかわいそうだ。息をかけて体から飛ばしてしまえば事足りると

          2匹のアリ

          書評 質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿

          「ホームズのライバル」たち19世紀末から20世紀初頭にかけて、推理小説が大流行した。嚆矢は1841年、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」である。推理小説の頂点と言われる「シャーロックホームズ」が発表されたのは1887年。怪盗「アルセーヌ・ルパン」は1905年。エルキュール・ポアロを生み出したアガサ・クリスティーのデビューは1926年。まさに推理小説の黄金期である。 そんな黄金期の小説家の一人に「ファーガス・ヒューム」がいる。イギリス出身の小説家。1886年『二輪馬車

          書評 質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿

          書評 書斎のポ・ト・フ

          知的世界を大きな声で案内する紹介している本を読みたくなるという本はあっても、「本について語っている文章自体が面白い」という意味での読める書評というのは数少ない。 さらに加えて、あれは良いこれはイカンと意見を言うが、教養があって尚且つ笑いがあって明るい意見というのはもっと少ない。そんな少ない意見を、3人全員が揃って出し合っている稀有な一冊が、この「書斎のポトフ」である。 開高健の全集にも書斎のポ・ト・フは収録されている。他の対談も含まれているから、間違いなく電子全集の方がお

          書評 書斎のポ・ト・フ

          書評 暗殺の年輪

          「司馬は商人。池波職人。藤沢農民」自分の尊敬する友人の、各小説家の評である。 恥ずかしながら、司馬遼太郎と池波正太郎は読んだことがあったが、藤沢周平は読んだことがなかった。友人に勧められ「三屋清左衛門残日録」 「用心棒日月抄」

          書評 暗殺の年輪

          書評 文化の逆転 ―幕末・明治期の西洋人が見た日本(絵画篇)

          知的興奮の発露の著作 「暇は無味無臭の劇薬」というサイトをご存じだろうか。海外の掲示板とかで話題になっていることを翻訳し、まとめているブログサイトである。 記事内容は様々で、アニメなどのサブカルチャーから、「借用語だと知って驚いた自言語で使われている言葉」とか「外国語を話す時に文化の違いで困ってしまうこと」など、ネタとして面白いと作者が思ったことを幅広く紹介し、まとめている。一つ一つ面白い内容なので、ぜひ一読をお勧めする。 このサイトの管理人が書いた同人誌の一つが、今回紹

          書評 文化の逆転 ―幕末・明治期の西洋人が見た日本(絵画篇)

          書評 ひらあやまり

          嬉野雅道 この人の名前を、どれだけの人が知っているでしょう。 水曜どうでしょうのディレクターの一人であり、カメラマンであり、北海道テレビの平社員で、会社の就業時間中に会社の会議室を占拠して、カフェを始めている男。 何か仕事をしているのかと言えば、喫緊の仕事というものは持っていない。内線電話もかかってこない。何せ会議室を占拠して、手回しのミルを持ってきて、珈琲豆をその場で引いて、引き立てのコーヒーを無料で社員にふるまっているほどです。 何かあったらすぐにバッシングが来る

          書評 ひらあやまり

          書評 恐竜大紀行

          書斎のポ・ト・フ内・児童文学序説のところで、どんな本が児童文学として良い本かという話で開高健が「家の中で父親と子どもが一冊の本を引っ張り合って読むような、そんな本でないといかんと思う」という所がある。 その後は日本の児童文学(1981年時点)へ、縦横無尽のダメだしが始まるのだが、無論褒めている場合もある。その一つに、「少年倶楽部」型の冒険小説の迫力は、漫画やアニメに引っ越した。古くは『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』。最近ならば『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』と向井敏

          書評 恐竜大紀行

          この1か月の後書

          毎週一回更新予定のこのnote、さっそく間に合わなくなりました。 というのも、勧められて読んだ本がとにかく面白く、考察する事が多く、自分を見つめなおし、なぜそう感じるのか、なぜそう考えるのか。なぜ、なぜ、なぜ、、、が限りなく続き、発展し、広がり続けてまとめられなくなったのです。いわゆる風呂敷がたためないのです。まだ広がっているのです。 そんな広がり続けている本は「海も暮れきる」。紹介だけしておきます。良ければ読んで、いつか更新する自分の書評(感想文)と比較検討してみてくだ

          この1か月の後書

          書評 俺は書きたいことを書くー黒人意識運動の思想

          半世紀前の、南アフリカで光り輝いた野火言うまでもなく、昨今アメリカは黒人差別に抗議するデモが起こっている。平和に行っているデモもあれば、暴動を起こして白人、黄色人、黒人関係なく略奪をしている連中もいる。人種差別は当然いけない事だが、それは略奪を許す理由にはならない。 さて、黒人差別について語られたり問題になったのはアメリカだけではないし、今だけでもない。「アパルトヘイト」とは誰でも一度は聞いたことがあるはずである。南アフリカでかつてあった人種隔離政策の事で、1994年に撤廃

          書評 俺は書きたいことを書くー黒人意識運動の思想