20200723
あの日は、小雨が降っていた。
夜行バスは新宿に着くときいて、
新宿へ迎えに行く、と言ったら、
私のお家の最寄り駅まで行く、と返事が来た。
少しでもはやく会いたい気持ちがあったから、
残念に思った一方で、まだ慣れない東京での待ち合わせだから、迷うはずのない最寄り駅ならば、と安心した。
何週間も前から悩んでいた服。私なんかが着飾ったところで、と卑屈な気持ちになりながら、それでも少しでも可愛いって思ってもらいたくて。待ち合わせの時間までの間に部屋の掃除をしながら、鏡の前を通る度に「大丈夫かな」「変だったらどうしよう」ってドキドキした。
その人からの通知だとすぐにわかるように、着メロは変えてあった。鳴り終わるよりも前に携帯を手に取って、池袋駅を出発した、というメールを読みながら家を出た。
なんとなく、折りたたみ傘を持ち歩く人ではないように思ったので、待ち合わせ場所に向かう途中でビニール傘を買った。
私の傘だけを持って行って、その人が傘を持ってなかったら、相合傘でも良いかと思ったけれど、今回初めて会うのだし、あまり近づきすぎるのは嫌かもしれない、なんて思って。
駅に着いたとき、その人が乗ってる電車が到着するまで、あと2分だった。信じられないほど長い2分。
前髪変じゃないかな。脚が太いの、あんまり見られたくないから、傘で隠せないかしら。すぐにその人だ、ってわかるかしら。その人も、私のことがすぐにわかるかしら。まずなんて言おう。こんにちは?はじめまして?会いたかった…なんて言ったら良いんだろう。どうしよう…
結局、そのあとのことはあんまりちゃんと覚えてない。
改札を通ってきたその人が、とても目を細くして笑ってくれてたこととか、お家に向かう途中で、その人の背が高かったから、顔を見上げようとすると傘越しになってしまって、残念だったり、自分の顔が隠せてほっとしたりだとか。
あれからもう9年が経つ。
この緊張は、あの日と同じ緊張だ。
私はちっとも変わってない。
ずっとあの日の中で立ち止まってる。
noteに目を通していただき、ありがとうございます。皆さまからいただいたサポートは、私の心身の療養に充てさせていただきます。またnoteを通して日々還元していけるよう、生きます。