信楽の赤絵の宝瓶
信楽IC口を右折してしばらく走った道沿いにその器屋(うつわや)はある。
京焼や九谷焼など色絵の陶磁器を好んでいた私にとって、色のない信楽焼は後回しになっていた。
店に入って一瞥するが、色も絵もない器ばかりが並ぶ。
やはり信楽焼は地味だった。
『赤絵の器などありませんか?』と、念のため問うてみた。
すると、明らかに気分を害したらしい店主が、半ば侮蔑するように早口でまくし立てる。『うちは信楽焼なんで、赤絵みたいなもん置いてません。』
これはちょっと偏屈そうな店主だなと思いつつ、眼を下げて『そうですか』と答え、もう少し店内を回る。
すると、セールのワゴンの奥に赤絵の器を見つけた。
やや赤味がかったクリーム色の肌に手書きの見事な赤絵。
大胆で繊細に赤い花と緑の葉が描かれている。
顔料の発色も良い。
小振りのお碗型の四方に注ぎ口があり、蓋がついている。
『これは?』と顔を上げる。
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