いわく付き道具の鑑定人

 俺の前には5つの拳銃が置かれている。それを置いた男は辛気臭い顔をしていて、目の下には濃いくまが染みついていた。
 拳銃と辛気臭い男の後ろにも数人、スーツを着た人間が俺の動向を睨むように観察していている。その中で一番小綺麗で身なりの整った女が俺に近づいてきた。

「3日前、近くの集落で少年が行方不明になりました。その少年は妙な道具を持っていて、その道具を見せびらかすために友人達を引き連れてこの森に来ていたそうです」
 張り詰めた緊張感が辺り一帯を占めている。しかし、女の声に緊張感は一切見当たらなく、話を途中で止めて口笛を吹きだしてもおかしくないような余裕さだった。気味が悪い。

「少年は持っていた物を“探し物が必ず見つかる方位磁針”だと説明したんだとか。これを使って大きな鹿を探そうと言ったものの、しばらくすると急に走り出してしまい、戸惑う友人をその場に置いて森の奥に行ってしまったそうです。その少年が、昨日集落の近くで保護されました」
「あんた話が長いな。俺に何が言いたいんだよ」
「少年の話によると、森で出会った男の人が手に持っていた方位磁針を叩き落としてきて、それで正気に戻ったそうです。その男の人、貴方ですよね?」
「……そうだったら何だってんだ」

 女は満足げに微笑んだ。
「少年が持っていた方位磁針はいわく付きの道具です。私達はそういう道具を回収しているのですが、探し出せる人がいなくて困っていました。それで、貴方がそういう道具を見分ける力があるのか確かめたいんです」
 拳銃と辛気臭い顔をした男を、女は交互に指さした。
「その5つの拳銃のうち、1つは至って普通の拳銃です。残りの4つは特殊ないわく付きの物で、確実に弾は当たりますが撃った人の指も一緒に吹き飛びます。1つだけ選んであの男を撃って下さい。なんの心配もいりません。あの男は人殺しですから」

あんなガキ放っておけば良かったと、心底思った。

【続く】

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