闘病記録:26 男が死んで行く時に(安藤昇氏の名曲より)
2024年5月2日(木)午後、ハッキリとは覚えていないし確認もしていないが、おそらく午後2時は過ぎていたのではないだろうか。
俺は心筋梗塞の発作によって、手術室へベッドごと運ばれていた。
ベッドから見る風景は、当たり前だがただひたすら病院の天井のみ。
天井のシミを見つけてポエムの一つでも考えられりゃよかったのだが、いかんせん心筋梗塞の痛みでそれどころではない。
この痛み、どれくらいなのか?というのを参考にはならないかもしれないが記しておこう。
俺は今まで痛い体験を数多くしてきた。
例えば。
二日酔いで歯医者に行って、神経へダイレクトに麻酔を打たれた時。
※全身の毛穴から汗が一斉に吹き出して、一発で二日酔いが治ったw
例えば。
指先を包丁でバッサリ切って、肉が見えていた部分に麻酔を打たれた時。
※包丁で切った痛みより数倍痛かった…
例えば。
単車に乗ってたらタクシーに衝突されて吹き飛ばされた時。
※あ、これは意外とそんなでもなかったかなw
例えば。
乳首にノー麻酔で針を刺され貫通した時。
※詳細は語りませんが、雄たけびをあげました。
例えば。
坐骨神経痛が悪化して微塵も動けず、何をしても痛かった時。
※この世の地獄かと思うくらい痛かった…
このどれよりも痛いのが、心筋梗塞。
そう、めちゃくちゃ痛い。
人によってその痛みのフローは変わるらしいが、自分の場合は…
こめかみが痛み始める
↓
続いて脳の内部が痛み始める
↓
痛みが増してくると同時に顎へと痛みが移動
↓
気持ち悪さとむぎゅうっとフリッツ・フォン・エリックに胸を鷲掴みにされるような圧迫感
↓
息苦しさと強烈な二日酔いにも似た吐き気と痛み
みたいな感じ。
こんな痛みに耐えながら天井を見ていたら、手術室に入ったのがわかった。
その間、ずっと安藤昇氏原作『実録安藤組』にて描かれた、伏龍特攻隊の過酷な訓練時の呼吸法を繰り返す。
鼻から吸ってー
口から吐くー
鼻から吸ってー
口から吐くー
「兄貴、それなんですか?」
「ケンカの呼吸法だよ」
という安藤昇氏と舎弟との会話の場面を思い出す。
ふむ、走馬灯を見るってのは、きっとこんな内容が脳内をグルグル駆け巡るのだろう。
えええ!? 待って、ろくな走馬灯じゃないな、俺w
ベッドから手術台への移動は、自分で出来た。
手術室に入ったあたりでは、呼吸法で多少痛みがマシになっていた。
すごいっす!安藤さん!
だからといって、全然まだ痛いんで今からケンカは無理ですw
酸素マスクを口もとにかぶせられ、左腕に麻酔が注入される。
心筋梗塞の手術は部分麻酔。
全然意識のある状態で行われる。
ええ、もう三回目ですからわかってますよ。
「心臓の血管が確実に詰まってます。手術、はじめますよ」
うん、わかってるから早よやっとくれ。
先生がカテーテルを左手手首から挿入。
麻酔で痛みはないが、何か異物が体内に入ってくる感覚がわかる。
天井には何やら、バカでっかい機械が。
これはレントゲン的なものなのだろう。
上空から俺を撮影しているのだろうな。
これ、大地震が来て落っこちてきたら、即死なんじゃ?
なんて事を考えられるくらいの意識は余裕であるが、痛みは続行中。
先生が何やら言いながら手術を行っているのが聞こえる。
何を意味しているのかはサッパリわからんが、とにかく進んでいるのだろう。
俺はひたすら痛みに耐えるしかない。
鼻から吸ってー
口から吐くー
鼻から吸ってー
口から吐くー
さっきまで見ていた鬼滅の刃はさっぱり思い出さなかったけど、なぜか『実録安藤組』の映画版の壮絶なリンチシーンやら安藤さんが頬を切られるシーンやら抗争シーンやらがドカドカと脳内を駆け巡る。
なんなんだ、俺の記憶よw
そういえば、安藤さんは暴漢に刃物で頬をザックリ切られた際に、麻酔無しで縫ってもらったというエピソードがあったな。
いやいや、俺絶対無理。
なんて事を思い出していたら、脳内にメロディが流れはじめた。
俺が死んで泣くやつ千人。
笑うやつ千人。
知らぬそぶりが千人か。
まとめてアバヨと言わせてもらうぜ!
安藤さんの名曲『男が死んで行く時に』のサビだ。
ああ、もうタマランなぁ。
カッコええわ。
でも、俺はまだまだまとめてアバヨと言えるほどカッコよくねぇんすよ、安藤さん。
手術がはじまってからどれくらいたったのだろうか。
「ステント入れました。手術は成功です。大丈夫ですよ」
先生から声をかけられ、現実に戻った。
「ほんとだ!先生、痛くない!」
そう、本当に胸の痛みは全然無くなっていた。
俺が『男が死んで行く時に』を脳内でリピってる間に、手術は進んでいたのねw
とはいえ、まだ頭の痛みは残っていた。
手術台に乗せられたあたりがMAXだとしたら、痛みは半分くらいになっていたが、それでもやはりまだ痛い。
俺は引き続き、安藤さんの教えに従って呼吸法を続けながら、ICUへと運ばれていった。
その後、その日の事は覚えていない。
おそらく、痛み止めの点滴で眠ってしまったのだろう。
俺はスヤスヤと眠りについていたようだ。
ともあれ、まさかの心筋梗塞は、入院時ということでおそらく類を見ないくらいの速さで処置をされ一命をとりとめた。
しかし、その後に襲い掛かるトンデモない痛みは、この時点で誰もが想像できなかっただろう。
そんな恐怖体験のハナシはまた後日。
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