拵の修繕について考える
拵を直してやりたい
以前の記事で、槍の短刀拵に関して、こんな事を書きました。
拵自体を丸ごと新しく作る、という方向性も考えたのですが、
総桜皮巻きの拵という風情に惹かれて購入を決めた、というのもあるので、
このまま直せるなら直してやりたいなぁ、と思います。
いずれにせよ、「何をどうしたいか」を整理して、
それが可能かどうかの判断をしていただく必要があります。
という事で、現状の気になる点と、目指す方向性についてまとめます。
各項の記載順は、「どうにかしてやりたい順」です。
1. 鯉口のゆるさ
この点は、販売者の商品説明にも記載がありました。
「※鞘とハバキの合いは緩く、容易に抜けますのでご注意ください。」
実際に届いたやりを手に取って、なるほど、と思いました。
槍を鞘に収める際、刃で木肌を削ってしまっているようです。
あと、多分、鞘に収める際に槍の表裏を間違えたんじゃないかな……
そんなこんなで、削れた結果、鎺(はばき)よりも大きくなってしまい、
傾けただけで抜けてしまうという現状になったのだと思います。
こちらの修繕は、どんな方法があるのか、想像つきません。
居合刀で鯉口がゆるくなった場合の補修キットとして、
経木(薄い木の板)と接着剤がセットで売られているのを見た事は
ありますが、もう少し別の手があれば、と思います。
2. 目釘穴の鵐目の紛失
鵐目(しとどめ)は、穴の周りを飾り、あるいは補強する金具や角材です。
この点も、販売者の商品説明に記載がありました。
「柄の目くぎ穴の『縁』は片方紛失しています。」
裏には残っているので、まずは本来の目釘孔周りの写真を2枚。
そして、紛失している表側の写真、2枚。
水牛の角かな、と思いますが練り物かもしれない。
この拵の製作年代も分からないので、材質についても断言できません。
仮に水牛の角だとして、刀装の鵐目も市販されている のですが、
素人工作でどうにかなるとは思えません。最悪、傷を広げる可能性も……
紛失した片側だけ、似た色の鵐目を入れる。
または、残る裏面の鵐目も外して、両方に新しい鵐目を入れる。
鵐目に合わせて、目釘を調整(または新調)する、という流れでしょうか。
3. 鞘の塗りを整える
これは本当に、ご相談というかお伺いの域ですが、
一部に「剥げ」があるので、これを修繕できるならしたいと思っています。
他と違和感がないくらい同じ色ツヤにしてください、というのは
無理だと思っていますが、このまま放置しておくとさらにペリペリと
剥がれていきそうなので、何かを塗って段差を消せればいいな、と。
4. 縁頭などの欠け
この槍の拵には、鐺、鯉口、縁、頭と、水牛角(推定)が使われています。
栗形と鵐目も、同じ材質です。
で、この部分にちょくちょく、穴というか、欠けがあります。
ぶつけて欠けたか、虫に食われたか、という感じです。
ここを埋めてやりたいなぁ、という気持ちがあります。
ただ、これは前述の三項目に比べると優先度はやや低めです。
どの穴も、それほど大きくなく、それほど深くはないのですが、
くり抜いたような穴が空いています。
本気の修理となると、角部分を総取っ替えになっちゃうと思うのですが、
さすがにそこまではしなくてもいいかなと思っています。
似た色のパテで埋めるか、透明な透漆で埋めるか、
いっそ金継ぎのように、金粉か真鍮粉で覆ってしまうか、などと構想。
どんな素材でどんな事ができるのかは不明なので、ご相談の上で。
5. 鞘の通りが良くなれば
これはもう、優先順位で言えば一番最後で、
そもそもそんな事が可能かどうか怪しい内容ではあるのですが、
刀身の、鞘の通りが良くなればいいな、と思っています。
鯉口の所でも書いたように、おそらく歴代の持ち主が、
刀身を鞘に入れる時にあちこちぶつけて鞘の中を削ってしまい、
所々にハズレ通路みたいな溝ができています。
そこに沿わせてしまうと中途半端な所で行き止まりとなり、
鞘にピッタリ収まらない、みたいな状態になります。
一度抜いて、別角度で入れ直すと正しく収まったりするのですが、
刀身にも良くないし、鞘にも負担をかけることになるので悩ましい。
――とはいえ、本人が気をつければ良いことなので、
これについては二の次、三の次です。
白鞘と違って、塗り鞘は分解修理ができないので、内部を整えるという
作業自体が無理なんじゃないかな、とは思っております。
鯉口のゆるさが直ったら、これも一緒に直るかも、くらいの構えで……
まとめ
以上、自分の目に映る範囲で、修繕できればいいなと思った箇所です。
色々書きましたが、刀身も、拵も気に入って購入したものなので、
損したとも思ってないし、後悔もしていません。
その上で、せっかく美術刀剣としての登録もできたことだし、
できることがあるなら手を掛けてやりたい、という親心です。
一度、詳しい方に見ていただいて、
「このくらいならできそう」とか、
「これはちょっと厳しそう」というジャッジをいただいて、
何か手をかけてやれたらいいなと思っています。
ヘッダー画像:販売元写真・「短刀拵 平三角槍」
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