医療機関の採用難と離職防止のための採用サイト構築
1. 医療機関における採用の課題
現在、多くの医療機関が採用難に直面しています。少子高齢化に伴い、医療従事者の需要は高まる一方で、供給が追い付いていないのが現状です。さらに、採用がうまくいったとしても、職場環境やキャリア形成の不透明さなどを理由に、望まぬ離職が発生することも少なくありません。
看護師や歯科衛生士は病院やクリニックを辞めますが、看護師や歯科衛生士という仕事自体を辞めることは少ないのではないでしょうか?すなわち、職場の魅力があれば、長く働き続けてくれる可能性があるということです。
このような状況を改善するためには、単なる採用広告ではなく、医療機関としてのビジョンや職場環境の魅力を正しく伝える採用サイトの構築が不可欠です。本コラムでは、医療機関における採用サイトの重要性と、その具体的な設計方法について解説します。
2. 採用サイトに求められる要素
採用サイトを構築する際には、以下の3つのポイントを明確に伝えることが重要です。
(1) 診療理念の明確化
医療機関が掲げる診療理念やミッションを明示することで、求職者に「どのような価値観の職場なのか」を伝えることができます。理念に共感した人材が集まることで、ミスマッチによる早期離職を防ぐことができます。
(2) 事業展開の展望
医療機関が今後どのような方向に進んでいくのかを示すことは、長期的なキャリアを考える求職者にとって重要な情報となります。新しい診療科の開設や地域連携の強化など、成長戦略を具体的に記載することが求められます。
(3) キャリアパスの提示
医療従事者にとって、キャリアの明確化は大きな動機づけ要因になります。例えば、看護師がどのようなスキルを習得し、どのようなポジションへと進めるのか、実際のモデルケースを提示することで、求職者に将来のビジョンを描いてもらいやすくなります。
3. 職場の魅力を言語化する方法 〜SEARCHフレームワークの活用〜
採用サイトをより魅力的なものにするためには、職場の特徴や強みを言語化することが重要です。その際に有効なのが、職場に求められる要素を6つに分類した「SEARCHフレームワーク」です。
S:Stability(安定性・安心感)
職員が長く働ける環境が整っているか
福利厚生や研修制度の充実度
産休・育休制度の取得実績
E:Excitement(仕事のワクワク感)
自由な裁量権を持ち、主体的に働けるか
新しい医療技術やプロジェクトに関与できる機会
仕事に対する挑戦の余地
A:Achievement(成長と達成感)
専門スキルアップの機会が提供されているか
マネジメントやコミュニケーションなどのヒューマンスキル研修があるか
専門資格取得支援制度の有無
R:Recognition(評価と承認)
職員の成果が正しく評価されているか
ねぎらいや感謝を伝える文化があるか
昇進・昇給の明確な評価基準があるか
C:Contribution(社会貢献)
地域医療への貢献を実感できるか
患者さんや家族からの感謝の声を直接感じられる環境
チーム医療としての役割の重要性
H:Human(人間関係の温かさ)
チームワークを重視する職場か
上司や同僚との信頼関係が築ける環境
いざという時に支え合える職場の風土
これらの要素をヒアリングし、採用サイトで明確に打ち出すことで、応募者がより具体的に職場の魅力を理解できるようになります。
4. 衛生要因と動機づけ要因のバランス
採用サイトの内容を考える際には、ハーズバーグの二要因理論を参考にすることも有効です。
衛生要因(Hygiene Factors):給与、労働環境、福利厚生など、不満を防ぐための要素
動機づけ要因(Motivational Factors):仕事のやりがい、達成感、成長の機会など、満足度を高める要素
採用サイトで衛生要因ばかりを強調すると、「安定を求めるだけで成長意欲の低い人」が集まりやすくなります。そのため、動機づけ要因にも重点を置き、「この職場でどんな成長ができるのか」「どんな達成感を得られるのか」といった情報を充実させることが重要です。
これが欠如した採用サイトでは、面接数は増えるものの、採用できるような優秀な人材に出会えない、あるいは内定を出しても、長続きしない、活躍できない、などの残念な結果になってしまうことが多いのです。
5. まとめ
医療機関の採用活動において、単なる求人広告ではなく、採用サイトを戦略的に活用することが不可欠です。診療理念や事業展開のビジョンを明確にし、SEARCHフレームワークを用いた職場の魅力の言語化、さらには衛生要因と動機づけ要因のバランスを考慮した設計を行うことで、適切な人材の確保と望まぬ離職の防止が可能となります。
求職者にとって「この職場で働きたい」と思わせる採用サイトを構築することが、採用成功の鍵となるでしょう。そして、人手不足防止を願うのであれば、定着までを視野に入れた採用サイトの構築が重要です。
このような具体的な採用戦略と実践方法を【マグネット採用習得・実践講座】で2025年の2月までお話ししています。