マグネット採用戦略の要諦 ～経営理念で人を惹きつける～
従業員エンゲージメントを高め、その組織に合う活躍人材をだけを惹きつける企業理念
前回のコラムでは、人材不足を解消するための新たな採用戦略として、「マグネット採用」をご紹介しました。
今回は、マグネット採用の根幹をなす「企業理念」の重要性について解説していきます。
企業理念とは、企業の存在意義や目指す方向性を示すものです。
それは、企業が社会に対してどのような価値を提供し、どのような未来を目指しているのかを表明するものであり、従業員一人ひとりの行動指針となるものです。
経営理念 – 人材を引き寄せる磁力
企業の採用活動において、経営理念は単なる飾りではありません。それは、優秀な人材を獲得し、定着させるための強力な武器となり得ます。
なぜなら、明確な経営理念は、
企業のビジョンや価値観を共有し、共感する人材を引き寄せる
従業員のエンゲージメント（仕事の自分ごと化）を高め、定着率向上に繋がる
組織文化に合った人材を採用することで、ミスマッチを防ぎ、早期離職を抑制する
といった効果をもたらすからです。
具体的なビジョン・ミッション・バリューの策定
人手不足解決を念頭においた採用や組織づくりを効果的に実現するためには、経営理念を具体的に示す必要があります。
ビジョン: 企業が長期的に目指す未来像。社員が共有すべき理想的な社会やそのような社会づくりに貢献できる理想的な自社の姿を明確化します。
ミッション: 商品やサービスを通じて企業が顧客に提供している価値の本質。目の前の仕事が社会にどのような影響を与えているのかを明確化することで、社員のモチベーションを高めます。
バリュー: 企業が大切にすべき価値観。社員一人ひとりの行動指針となり、組織文化を形成します。社員一人ひとりの価値観を大切にしながら主体性を発揮するための組織での約束事ととらえることもできるでしょう。
これらの要素を明確に言語化し、求職者に対して積極的に発信することで、企業の魅力を効果的に伝え、共感を得られる人材を獲得できる可能性が高まります。
経営理念の浸透 – 採用プロセスから入社後まで
経営理念は、採用プロセス全体を通して求職者に伝えられるべきです。
採用サイト: 企業理念を分かりやすく掲載し、求職者への理解を促進します。
面接や企業説明会: 経営理念について深く語り、求職者との価値観の共有を図ります。
入社後研修: 経営理念を改めて説明し、組織文化への理解を深めます。
評価制度: 経営理念に基づいた評価制度を導入することで、社員の行動を促進します。
このように、採用プロセスから入社後の教育、評価まで一貫して経営理念を浸透させることで、社員のエンゲージメントを高め、定着率向上に繋げることが可能となります。
社長の想いを込めた経営理念 – ミスマッチを防ぐ鍵
経営理念は、「一般的な社会常識としての美辞麗句」の羅列であってはなりません。それは、社長自身の価値観や想いを反映した、生きた言葉であるべきです。
「自分の想いを盛り込みすぎてはいけないのではないか？」と不安に思う経営者もいるかもしれません。しかし、個性のない経営理念は、その組織でこそ活躍できる求職者にとって魅力的に映らず、結果として組織内で浸透せず、形骸化してしまう可能性があります。
むしろ、（特に中小企業の場合）社長の個人的な価値観を前面に押し出すことで、
企業の独自性を際立たせ、強い印象を与える
求職者との共感を深め、ミスマッチを防ぐ
社員のモチベーションを高め、組織への帰属意識を高める
といった効果が期待できます。
採用はスタートライン – その後のフォローアップが重要
採用活動は、あくまでも人材獲得のための手段であり、目的ではありません。真に重要なのは、採用後の活躍を視野に入れた定着への仕組みや人材育成です。
経営理念に基づいた継続的なフォローや教育、スキルアップ支援を行うことで、社員の成長を促進し、組織全体の活性化に繋げることが重要です。
ハラスメントのない、心理的安全性の保たれた職場環境は大前提です。その上で、個々の能力を最大限に引き出し、組織への貢献を促すためには、継続的な育成こそが不可欠と言えるでしょう。
今回のまとめ
マグネット採用戦略において、経営理念は中核的な役割を担います。
社長自身の価値観を反映した具体的なビジョン・ミッション・バリューを策定し、採用プロセス全体を通して求職者に伝え、入社後も継続的にフォローアップすることで、企業は「その組織でこそ活躍できる」優秀な人材を獲得し、定着させることができるでしょう。
そして、従業員一人ひとりが企業理念に共感し、高いモチベーションを持って働くことで、企業は持続的な成長を遂げることが可能となるのです。
次回は事業計画に基づいた採用ペルソナ設計についてお話ししたいと思います。
このマグネット採用の全体像をお話しするマグネット採用習得・実践講座を2025年の2月まで行っています。