オンラインの会議もツールの雰囲気で変わる。Zoomに慣れたら試して欲しいツール。〜ファシリテーター視点でのオンラインツール比較〜
窓のある会議室、ない会議室。
ホワイトボードのある会議室、ない会議室。
広い会議室、狭い会議室。
会議室の雰囲気で会議の感じも変わる
ファシリテーターはその会議の特性やチーム、参加者の状態に合わせて会議する場所を選ぶこともあります。私は時々、近くの公園でやってましたし、眠そうな人が多い時は、二人組で散歩してきてもらってから会議を始めたりしました。
オンラインでのリモート会議も会議に合わせて使い分ける時代に
2020年、たくさんのオンラインコミュニケーションツールが使われるようになりました。Zoom、Teams、Google Meets、VideoFacilitator、8x8、Here、MeetButter、SpatialChat、CozyRoom、oVice。それぞれに画面の見た目や、操作の感じ、参加者がツール内でできる行動、扱える情報が違っていて、もちろん企業などではセキュリティや契約の観点から使えるツールが制限されていることが多いのですが、ファシリテーター的にはツールの持つ「場」の状況も考えて使えると、より場について考えることができます。今回は最近使っているツールについてファシリテーター目線で比較してみました。
Zoom:【きれいに整った会議室】
知名度と、音の安定性についてはピカイチ。
ITやパソコンについてそんなに詳しくないという方でも主催者が安心して提案できる場になっている気がします。今年の流行りということでもスタンダードなリモートの会議室という位置付けになっています。会議毎に日時を設定するので、会議スケジュールというものにもマッチして、前の会議が終わっていないから始められないということが無いのもオンラインならではないでしょうか。
ファシリテーター目線での特徴は、"画面共有の強さ"と"ホストと参加者の操作権限と画面表示の違い"です。Zoomの画面共有は共有された瞬間に「全画面表示」になるのがすごくて、参加者の視線を占有する強さを持っています。その画面だけを非表示にはできないので(PCの画面を観ないという荒技は置いておいてw)、集中や一体感の醸成には向いていますが、個々が多様を持って進めるという時には画面共有しないで進める時間も必要だと考えます。例えば画面共有を切って参加者の顔が見える状態の場にするなど。しかし、2つ目の特徴のホストと参加者の操作権限と画面表示の違いから、ファシリテーターには参加者がどういう視覚で情報を受け取っているかはわかりずらく、実際にはみんなの顔を観ながらの場(ギャラリービュー)になっていると思っても、参加者によっては話し手を観ている(スピーカービュー)可能性もあります。ファシリテーターが見え方を意識するには、もう1つアカウント作って、参加者視線の見え方も確認しながらできると丁寧ではありますね。そして「ここからはギャラリービューでお互いの顔が見える感じでいきましょうか」と促してみるのはどうでしょう。
操作権限での表示の違いも「その隣にブレイクアウトルームというボタンがありませんか?」というのが本当に隣なのかがわからなかったりします。もちろん、操作権限が違うのも良いことではあって、参加者が余計な操作に迷わないという点があります。とかくオンラインのツールでは「わからない」怖さから、変なボタンを押してしまって画面がおかしくなったらどうしよう…とか、中断させてしまったらどうしようとか、そういう気持ちも発生しやすいので、参加者には「できない」部分が安心感につながることもあります。
そしてファシリテーター的に注意が必要なのは、UPDATEが頻繁で設定が初期化される項目もあったりするので、さしずめ会場設備がどんどん変わっていて「あれ?あの机って折りたたんでしまっておかなかったっけ?」ということがしばしば発生します。
Here:【プロジェクトルームとして利用可能】
情報の保存性と共有、可視性によるファシリテートが楽しめる
変な話ですが、良い意味で「前の会議でホワイトボードが消されてませんでした」というのがおきるツールです。会議毎での設定ではなくて、会議室をつくる感じで設定するので前の会議で使った画像やスタンプが残しておけるので、私はよく「あ、すみません。前の会議の残りが…。」と言って「後片付けから始められるツール」と説明しています。情報のスタックができることで、前回の会議の議事録(私の場合はファシリテーショングラフィック)を画像にして貼っておくということをして、そのプロジェクトに必要なことを可視性のあるままに蓄積できます。
ファシリテーター的なHereの1つ目の特徴は、"画面共有を参加者全員が同時に表示できる"という点です。つまり発表者が自分のPCから資料のパワーポイントを画面共有して、グラフィッカーもしくは議事録係がメモを録っている画面を共有しながら、誰かが検索で調べた結果を共有するということができます。これはホワイトボードのある会議室でプロジェクターに資料を映しながら話し、ホワイトボードが書かれていく感じに似ています。またプログラミング研修で先生と生徒の画面を並べて表示しながら進めることもできます。
2つ目の特徴は、"遊び心"があります。かわいいスタンプ(アニメーションGIF)があったり、背景をいろんな柄に変えられたり、雰囲気に影響する場作りが楽しめます。背景色をカラフルにしたりすることで「窓から光が入っている会議室」みたいな効果があるのではないかと。操作権限での画面表示の違いもないので、観ているものが違う可能せは低くなります。画面が拡大縮小できるのでそういう意味ではどのサイズで観ているかで違いがでますが。
MeetButter【対話の場】
参加者からのリアクションが多様でインタラクティブ性が高い場
MeetButterの特徴の1つ目は"画面の構成がシンプルで柔らかい"ところ。2つ目は"ファシリテーター(ホスト)側のファシリテーションがしやすい"ところです。
1つ目の特徴である構成がシンプルで柔らかいところというのは画面の構成はhereよりも構造的ですが、Zoomの黒い画面の感じよりも白っぽい灰色なので明るく感じます。デザイン的にも枠線が少し太い線で角が丸く感じられて、影があるところも柔らかさを感じるのではと思います。
2つ目の特徴であるファシリテーションがしやすいというのは、参加者がリクションや反応を出せる仕組み(チャットのコメントが発言者の下にも表示されるやリアクションスタンプ機能)を多く持っているところと、ファシリテーターが利用するタイマーやアジェンダの設定、ブレイクアウトルームの設定や質問機能がその場でさっと設定できるようになっている点です。なにより共有できるものにmiroも入っていて、miroを別画面に出さずにツール内でみんなで編集できるのも、ファシリテーションしやすいポイントです。
SpatialChat:【雑談と休憩の場】
自由度が高い場作りで会議室をゼロからつくれる
SpatialChatの特徴は1つ目は"参加者がオンライン場で「位置情報」を持つことで、参加者同士がオンラインで「距離感」を体感できる点"です。これにより同じツールの中で複数の会話が存在し、ブレイクアウトルームのような遮断した複数の会話ではなく、そばに行くと聞こえ漏れる会話ができます。更に音の距離感で発生した複数のチャンネルを重ねることができるので、例えばyoutubeを貼り付ける位置をデザインすることで「海辺」の「焚き火」や「雨の日」の「カフェ」という音のまじりを作ることができます。私はそれを利用して、参加者が好きな音の場所で休憩したり、好きな音の場所に居る近い人と雑談する場として使っています。
2つ目の特徴は"画面共有のサイズが変更できて、そのサイズ感も共有されること"です。画面共有をツールいっぱいにすると、その画面の中に自分のアイコンが入り込んだ感じがして「没入感」が発生します。その場に一緒に居る一体感が出ました。これはZoomの画面共有での視覚占有とはまた違う、共感の強さが場にありました。
oVice:【会議室を超えた会場】
リアルな場での感覚をオンラインで利用できる
oViceの1つ目の特徴はSpatialChatと同じく"複数の会話が成立すること"ですが、SpatialChatのゼロから作る感じよりはすこし優しくて、会場の基本設定のしやすさが違いになります。さらにもう1つ違う点があって、複数の会話もタイプが4つある点です。全体で一つの会話にする「メガフォン」。グループでの会話をする始点を使った「アイコン型」。遮断した会話を成り立たせる「Meeting」。そして一人で「会話しない」という静かに過ごせる「Silent」。1つの会議室は1つの音声チャンネルでみんなで話すと考えると、これは会議室のツールではなくて、会場のツールと言えます。複数の会話が一つのツールの中で分断されることなく存在し、さらに基本設定で「机」や「椅子」という視覚での場所の認知が同時に行われることで自然にグループができやすい環境というのはファシリテーションの場作りと、リアルな場での感覚と同じようなファシリテーションをすることができます。
2つ目の特徴は"権限による画面共有の届く範囲を選べるところ"です。私のファシリテーションについての考えの中に「強制はなるべくしたくない」というのがありまして、例えば、ファシリテーター的に全体には伝えたいけど、参加している人が疲れているなら聴かなくてもいいという思いがあります。もちろん疲れに対しての配慮もしたいと思いますが、参加者の選択の余地はどこか残しておきたいという思いです。オンラインの場合、音量もゼロにしてミュートにして…みたいな形で操作で「聴かない」もできますが、なんとなくそこに居ながらもゆるく参加したい…というのができる状況を作れます。1つ目の特徴の「距離感」があることも影響していますが、そのゆるさをオンラインで受動的に作れるのはoViceなのかなと。そのゆるさが「ちょっと声をかける」というようなものにも繋がると感じています。
CozyRoom:【ふりかえり部屋】
アバターでの効果と、制限がうまく作用する。
ツールの特徴はこの丸いアバターです。誰もが画面に入った瞬間
「お、おお…」とか「かわいい…」とか、Zoomなどのオンラインツールとは違う感想を持つことでしょうw
ファシリテーターとしてのポイントは、1つはまさにこのアバターの効果で、この全員同じ形で色の違いくらいな没個性が「個人」から離れるてリラックスした会話というか、関係性による影響の緩和が起こります。オンラインのミーティングでしばしば聞かれることに「いつもはあまり話さない人が発言していた」というのがあるのですが、これはいつもは「部長がいる」という存在感がありすぎたりして緊張、恐縮して発言できなかったのが、顔は写ってるけど小さいし…とか、そもそもカメラオフにしていて存在感がないというだけで話せるようになっていたというのが影響していたと聞きました。CozyRoomもそれが起きやすいので、利用できます。また「かわいいは正義」といいますか、ふんわり雰囲気ができるので、ふりかえりで起こりかもしれない「反省会」とか「詰める」という感じも緩和されます。もし課題についての話になったとしても「誰が」というところも抜けやすいです。
ポイント2つ目は、ツール内でできることが少なくて、迷わないのと、そのできることでいろいろ遊びたくなるツールという点です。椅子の絵や木の絵を参加者が好きに出せるので、「ちょっと自分で好きなものを配置してください」とお願いすると、余計なくらいの椅子が配置されたりします。ぜひみなさんも試してもらいたいのですが、「木」は出してみてください。きっと楽しくなりますw。そしてこれはITの人たちからするとちょっとアレな部分ですが、バグもあったりで、うまくいかないのもあれこれ話出すきっかけになります。イベントの最初の待ち合わせルームとしてもいいかもしれませんね。アイスブレイクに使えるツールとも言えます。
場に影響するツールの雰囲気は体験から
1つのツールを体験したり練習する場は多くあると思います。そこで私は複数のオンラインツールのガイドツアーというのをやっていますので、情報チェックしてもらえたらうれしいです!
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