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いつまでも謙虚、いつまでもわがまま

また保険のことでかみさんと揉めた。以前もそうだった。こういうことに関心を示さない私に対して、彼女は怒った。外交員まで呼ぶことになりそうだったので、ついに怒り爆発してしまったことがあった。そういうことがあったにもかかわらず、また同じようなことを繰り返す。

確かに、これだけ身近な人たちが亡くなったりすると、将来の生活への不安はあるだろう。だから最低限の保障金額を設定した保険には加入している。今回はそうではなく、かみさんの保険に関心を示さない私自身への不満のようだ。私の保険はあくまでも自分が死んだ後のことを考えてのもの。かみさんのはかみさんが死んだ後のことを考えたもの、だから私はあえて高額の保障は要らないから、というのに、それでは自分の価値がそんなものだとか、子どもたちに何か残してやりたいとか。

最近、彼女の気持ちが不安定だ。以前は家などもたずに、貯めたお金は海外旅行のために使おうとかいっていたのに、自分の家が欲しいとか、子どもに遺したいとか…。確かに、こんな不安定な経済状況では将来に対する不安もあるかもしれないが、別に不自由なく生活しているし、そのための蓄えはなくても実家もある。どうしても家が建てたかったら、その分、節約してそれに集中すればいい。そういうのが嫌だといっていたはずなのに、どうしてここへきてそういう話しになるのか理解できない。

いまがすべてじゃない。こう言ってきたはずだし、これから飛躍していくために選んだ道だ。自分自身も中途半端にするつもりはない。だから煩わされたくない。ただ前を見てまっすぐに進んでいきたいだけ。なぜこういう生活周辺のことがざわざわと音を立てて取り囲んでくるんだろう。

もっとシンプルに、もっと素直に生きていきたい。もしもの時はどうするか。そのときに考えてはいけないのか。それが無責任なんて誰が決めたことだ。そんな不安定な状況を考えながら生きていく人生なんてばからしい。自分のこと、家族のこと、それに社会のことを前向きに、そう、いい方向に考えていくことこそ、私に求められていることだと思う。

安定することは、きっと一生ないだろう。安定しないから頑張れるし、自分を高めていくことができる。負の要因をどうするか、なんて対処療法はいらない。だから安定しないこの状況で生きていきたいだけ。こうして明日がまたやってくる。普段通りの顔をして、ルーティーン・ワークに身を預け、訳知り顔をしながら仕事をこなしていく。

食っていくための方法が、いつしか自分の首を絞めることがないようにだけはしたい。また同じような奴隷になって暮らすぐらいなら、時間を切り売りするだけの存在になりたい。そうやって一所懸命にやれるパワーだけは欠かさずにいよう。

例え、誰にもわかってもらえなくても、自分の考え方だけは変えずにいよう。そして死ぬときになって、周りに誰もいなくなったとしても、それはそれで後悔することなく受け入れなければならない。こうやって自分の好き勝手に生きようとする人間の最期にも興味がある。

弟の命日が過ぎ、あらためて自分の再出発に地点に戻ってきたような気がしている。こういう気分の時に書く内容もまた、味があっていい。

6年前の自分に戻って、まっさらで、エネルギーだけはあふれている怖いもの知らずの自分に戻る。そして今度はステージを変えて勝負できるように準備したい。安定すること、それは死を意味することにもなる。こんな親父が安定したら、そのまま本当に飢え死にしてしまう。いつまでも謙虚、いつまでもわがまま。どちらも自分の顔としてもっていたい。

*****

本当によくぞ書き残してくれたと
当時の自分に感謝申し上げたい気分だ。

50代後半の私にとって30代後半の心境は
ほとんど記憶にないからだ。
それを思い起こさせてくれるだけでも
嬉しくて仕方がない。

カミさんとはよく喧嘩をしたもんだ。
今では人生の最終コーナーに差し掛かり
二人でどうやって人生を仕舞っていこうか考える
穏やかな日々だけにそのコントラストが美しい。

それにしても安定しないから頑張れるなんて
この頃から少しずつ肝が据わってきて
多少のことがあっても動じなくなって
きたようだ。


そうなったのも弟の死が要因かもしれないと思う。
一度しかない人生ということを考えた時に
躊躇して何も起こらないよりも
失敗した方がいいと考えるようになったのだろう。
割り切った人間ほど手に負えないものはない。

安易に自分の考えを表に出す方ではないが
こういう日々の記録に書き連ねるほど
自分の思いが高まりつつあったのだと
懐かしく嬉しく思う。

そう考えると年齢でとやかく悩むよりも
自分の責任において自由に挑戦できることを
神様から与えられた特権だと思って
最大限に活用してみたいと思う。


#あの頃のジブン |63

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