自然への奢り
「自然が、ざまあみろと言っているようだ」
東日本大震災で被災した高齢者の言葉だ。
人間が、自然をコントロールできると思い
込んでいるのが不思議だ、と続けるこの方
の言葉が心に染みた。
私たち人類は、どうしても自分たちの中で
できあがったロジックを変えるのが難しい。
このように、徹底的に打ちのめされたにも
かかわらず、未だにその営みをやめない人
たちに対する警告にも聞こえる。
以前も書いたが、主役を活かす舞台裏の
プロデューサー的な役割が、こういう
場面でも機能しているからだろうか。
決して表には出ないが、
全体としての利益=経済的な成長という
目的がある限り、東北の復興を支えるのは
あくまでもお金だといわんばかりである。
日本維新の会の共同代表の石原元東京都
知事は、党の公約なんか知ったことかと
ばかりに原発を海外輸出する原子力協定
に賛成すると表明し、党会議は混乱した。
原子力規制委員会は安全基準も確定しな
いで、原発稼働の是非を審査するらしい。
類いまれな経済成長を実現した日本は、
その経験が忘れられず、その成功体験を
信じて前に進もうとしているのか。
人口が確実に減少するだけでなく、
高齢者が増える社会になろうというのに、
それを経済成長でしか支える術はないと
いうのだろうか。
それはモノが溢れ、誰もがその豊かさを
享受したバブル期を経験した世代までの
考えで、生まれた時からずっと不景気で、
「それがいい」を「それでいい」として
きた若い世代の価値観との大きなギャッ
プだといえるのではないか。
そういう論争になると、では成熟社会を
支える原資をどこから調達するのかとい
う議論になる。それは無責任に何とかな
るという問題ではない。
しかし日本という国には
モノを作り出す以外に
知恵がある、そして感性がある。
知恵や感性が
お金にならないと決めつけるのは早計だ。
五島列島に小値賀島という小さな島がある。
人口2693人で、高齢化率では長崎県一の
42.3%の典型的な過疎地だ。その島に修学
旅行や世界中の観光客が一万数千人も訪れ、
観光の総収入は2億円にもなるそうだ。
詳細については省くが、そのコンセプトは
何にもない半農半漁のくらし
だとか。それを商売にしたのは他の地域
から移住してきたご夫婦だった。
自分たちの魅力は、自分ではわからない。
それを明らかにするのが
よそ者/わか者/バカ者だそうだ。
つまり、
よそ者=外部からの視点
わか者=過去にとらわれない視点
バカ者=既存ルールを破壊し、再生する
そういう人たちがいてこそ、
未来が見えてくる。
武家政権、明治維新、高度経済成長など、
価値観を覆す、時代の転換を実現してきた
日本だからこそ、必ず世界から尊敬される
ような時代の転換を見せてくれるはず。
その担い手となるのは、やはり、
目の前にある事実を当たり前にしない人
だと思う。
* * *
時代は移り変わったが
相変わらず
政府の景気対策のオンパレードで
あらゆる補助金や助成金が並び
知恵を絞ることすらしない。
新型コロナの感染が拡大した時も
過剰な融資策が
その後の数多くの悲劇を引き起こした
ことに気がついていない。
むしろ格差が拡大して
日本の特色であった中間層の減少が
社会の活力を奪ってしまったように
思われる。
あの頃と比べれば
駅や商業施設などは綺麗で豪華になり、
煌びやかな世界が私たちを取り巻いている。
その裏で、息苦しさを抱えている人は
スマホの画面の中にコミュニティを
求めている。
あの頃に求められた
よそ者/わか者/バカ者たちは
ネット社会という新たな場所に活路を求め
新たな規範を作って規制する立場になって
しまったようだ。
10何年経って
何が変わったというのだろう。
むしろ
息苦しく
お互いに監視し合う
逃げ場のない社会になりつつある
ような気がする。
でも諦めるつもりはない。
目の前の問題を解決すれば
また新たな問題が発生することなど
もう分かっているから。
それが私たち人類が進化する過程で
あることも身をもって経験したから。
さあ、もう一度、立ち向かって行こう!
#あの時のジブン |05