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人生の区切りを迎えて#12

ジブン時間が急に増えた中年男性の日常とは

あっという間に取り戻した日常のペース
10月から会社に行かなくなった。当初は年金や健康保険などの手続きが煩雑で、関係機関に行って各種手続きを取り、支払うものは支払って、もしかすると、これまで以上に自分でやらなくてはいけないことが多く、久しぶりに多忙な日々を送った。

だが、一通りの作業が終わると、特別やることがあるわけでもなく、スキマ時間ではなく、何もしない時間が大量に発生した。3日くらいは戸惑いもしたが、それ以降は自分のペースを取り戻し、ルーティーン作業も始まって、これは日常だというペースを掴みつつある。そもそも個人事業を10年以上続けていた経験もあったので、一人でいることに慣れていると思っていたのだが、あれから10年以上の月日が流れていたこともあり、不安はあったのだが、思いのほか簡単に以前のペースに戻ることができた。

ただ、以前と明らかに違うことは、これから先は自分でやりたいことをやればいいという、お気楽な状況であるということだ。当時はまだ子どもも小さく、家族の将来を考えれば、少しでも稼がなくてはならなかったし、そもそも自分で動かない限りは仕事もやってこない。そういう漠然とした不安に苛まれながら暮らすのとは、明確に違いがある。

たかがお金、されどお金を実感する日々
YouTubeを見ていると、退職してから後悔している人や、やることがなくて就職先を探している人を見かけるが、多分、彼らは、退職するまでの準備期間が短すぎたのではないだろうか。このご時世だから情報はしっかりと入ってきたとしても、それは他人の事情であり、自分のことがすべて当てはまるということはない。

私の場合は、とにかく不安になる最たるものとしてお金を優先的に準備したが、シミュレーションした回数は尋常ではなかった。ありとあらゆるケーススタディを叩き出し、常にリスクを抱えた状況で算出した結果、これであれば憂なく生活することができると判断してから行動した。それが中途半端だったら、数ヶ月で破綻してしまいかねない。特に年金や保険、そして税金というのが、予想外という方も多いのではないだろうか。

国民年金保険料納付書

本マガジンの最初の頃にも書いたが、退職直前の対策というのは、よほどの資金的な余裕がなければ、かなり厳しいと言わざるを得ない。こればっかりは取り返しがつかないだけに、慎重に計画していないと後悔することになる。

まともな人生をスタートさせるためのリハビリ
結局、退職後に1日を過ごして分かるが、時間がそれほど余っているわけではなく、ご飯を食べたり、お風呂に入ったりしていれば、知らない間に1日は過ぎていく。むしろ、時間的な余裕というよりは、他人に自分の時間を管理されないことを心底喜んでいる。そして、やりたいことを考えられる思考に、自分の頭を変えていく作業に時間を使っている。

いわゆるリハビリってやつだ。

これまでの会社人生活で習慣化した思考回路を、自分専用の思考回路に変換するのが、これほど難しいとは思わなかった。テレビを見ていても、経済ニュースには反応してしまうし、新しい技術が開発されたと聞けば、これまでのモノづくりに活かせないか反応が頭を駆け巡る。ど〜でもいいはずなのに反応するのは、明らかに脳の神経回路が変わっていないからだ。

無駄な時間を過ごすこと、生産性のない日々を送ること、これが私にもたらされた最高のご褒美だということを認識できるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。でも、そうやって自分の体や心に向き合えることの方が、もしかすると贅沢な時間なのかもしれないと思うようになった。ここはもう少しだけ、無駄で生産性のない社会のお荷物だと自分を責めて、それで反応しなくなったら、少しはまともな人生をスタートさせることができるのではないかと考えると、ちょっとだけ嬉しくなる。

———編集後記———

退職してから1ヶ月が経過したが
平然として1日を過ごすことができている
自分自身に驚いている。

あれだけピリピリしていた自分が
こんなにも簡単に反応しない人間になるなんて。

あまり過去を振り返るのは好きではないが
ここに至るまでに過ごしてきた日々は
結果的にすべて自分を形作る血肉になり
上手い具合にブレンドされて
ちょうどいい人間に仕上がったと思う。

嫌なことがあるたびに
この世の終わりだと思い込んでいた自分に
嫌なことというのは瞬間風速だと
アドバイスしてくれた人は
こうなることを知っていたのだろうか。

これから先
どのような苦難が待っているかは知らないが
ここまできたならば
何を恐れればいいのかさえも分からない。

知ったことか。

#人生の区切りを迎えて

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