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これで、いいのだ。
ものが欲しくない。
なぜか欲しくない。
お金を遣いたくない。
お金もあまりないから。
そうやって何ヶ月か過ぎた。
現在、定期的に支出しているのは仕事先までの
電車代ぐらいだろうか。地下鉄も行きは使って
いるが、帰りは30分程度歩いて帰る毎日だ。
だから一日の支出は1300円程度。どうしても
最寄駅から片道540円もするから高くついて
しまうが、以前の“ものを買う”意識は確実に
変わってきた。
まず第一に、買おうとする前に立ち止まって
考える。飴やガムから書籍・雑誌に至るまで、
どうしても必要か再考する。
缶コーヒーだってそうだ。たかが120円と
思っても、地下鉄をけちっている私にとっては
大きな支出になる。
極力、昼飯も家で食べることにしている。
昔のように沢山食べなくても満足できるし、
健康的でこれもまたいい。
服装もそうだ。最近、少々太り気味でサイズが
心配だったが、なんとか着られそうだ。確かに
シャツ以外は5〜10年選手も多く、デザインな
どは古さが目立つが、そんなことお構いない。
おしゃれもできないようじゃ企画内容も…など
というところの仕事はしない。
もともとそんなにファッションに興味がある
ほうではないし、清潔であればいいと思って
いる。今はほとんどボタンダウンにチノパンの
組合せで打合せにも出かけている。
これで、いいのだ。
仕事そのものも仕入れが発生しないので、
これもまたお金がかからない。自宅で仕事を
しているから電気代や通信費は必要だが、
普段の生活に紛れてしまう程度だ。
あとはどれだけ頭の中身をインプット&
アウトプットできるか、にかかっているので、
適度な刺激を与えなければならない。
最近は歴史小説などにこっているため、
図書館で本を借りてきている。
なぜ、こんなに節約しているのか。
正確には節約ではなく、
自分の生活スタイルを
見直そうと思ってはじめたことばかりだ。
つまり今までは、欲しいものがあったり、
何かしたい、と思うと、すぐにお金のこと
ばかり考えてしまって、アイデアではなく、
資金そのものにばかりこだわって、
結局、何もできないことが多かったからだ。
決して収入が少なかったわけではない。
人よりも多くいただいているはずなので、
それは残高として残ってはいるが、
活きたお金の遣い方ができていなかった
のだと思う。
今あるお金で何とかしようとしていたという
よりも、どこかで“もっともっと”と思いながら
生活していたのではないかと思う。
不思議なもので、来月の収入がないと思うだけ
で、人間は絶望のどん底に陥る。とくに長年
サラリーマンをやっていた人ならば、世の中
から取り残されたような気になるだろう。
心が貧しくなるようで、寂しい気持ちになる。
フリーを経験した自分でさえも、なぜか途方に
暮れて何かにすがりたいと思ったのは事実だ。
でも、こういう生活をしていて少しずつだが
わかってきた。資本主義社会を支えているのは
欲望である、と以前に書いたような気がする
が、まさに欲望を自分でそぎ落としていくと、
なんでこんなもの買っているのか不思議に思え
てくるようになる。
古いものをもっていることは何も恥ずかしい
ことではない。むしろ大切に使い続けている
ことに誇りをもって生きていきたい。そして
本当に自分が欲しいもの、そしてやりたいこ
とに、この虎の子を使ってみたいと思う。
お金の使い方が本当にへたくそな自分だが、
これからは活きたお金の使い方に挑戦して
いく。そうすれば、お金が向こうから飛び
込んでくるような気がしている。
* * *
アメリカではすでに、上位10%の資産家が
国全体の70%の富を保有しているという
ことを、フランスの経済学者トマ・ピケティ
さんが語っている。
これは貴族が社会の中心にいた時代と
同じ状況であり、富の偏重が著しい。
当時、フリーになって、一定の収入は得て
いたものの、安定しない状況の中で、自分が
できることは、欲望のままに消費をせず、
将来、自分や家族のためになることにお金を
使いたいと考えた結果とすれば、
結構、やるねとジブンを褒めてあげたい。
そもそも、自分の労働価値や必要なものという
物差しがないままに、僕たちは社会に出て、
いきなり給与が支給され、消費市場に晒される
ことになる。
撃ち方も分からないのに、ピストルを渡される
ようなものだ。撃つしか方法が見当たらない。
使うか、貯めるか、どちらかしかないし、
貯めるのも、その後、車や家を買うための
準備にほかならない。
お金に汚い人は悪い人で、お金に潔い(?)
人は評価されるという、典型的なフレーム
ワークに嵌められて、身動きが取れなくなる。
そんな中で、社会のあり方に疑問を持って
行動したことが、今、無駄金を使わず、
幸せに暮らせてる理由だと分かっただけ、
良かったかな?
2002/05/29Wed
#あの頃のジブン |17