第一の小話「大食い男」

むかしむかし、太った大食いの男がおりました。男は食べることが大好きで、朝から晩まで食べる事ばかり考えておりました。

月曜日。男はステーキを食べました。ジュージューと音を立てる肉にナイフを入れると、肉汁がジュワッと溢れ出て、男はほっぺたを蕩けさせながらステーキを頬張りました。

火曜日。男はわたあめを食べました。フワフワのわたあめを頬張り舌の上へ載せると、わたあめは一瞬で消えてしまいました。男はそれが悲しくて、砂糖を大量に買い丸一日中わたあめを作り続けました。

水曜日。男は大きな大きなパフェを食べました。何段にも重ねられたアイスクリームに、たっぷりかけられたチョコレートソース、器には棒状の焼き菓子が刺してあり、一番上に積まれたアイスの上にはミントがちょこんと乗せてありました。「なんて美味しいんだ!」男はそう言いながらパフェをぺろっと食べました。

木曜日。男はピザを頼みました。肉やチーズやシーフードをたっぷり乗せて、耳はフワフワで生地の1枚1枚が分厚く、男は熱々のピザをなんと10枚もたいらげてしまいました。

金曜日。男はパスタを食べました。生クリームを使ったソースと和えて、その上からタラコがたっぷりかけてありました。男は無我夢中になりながらばくばくパスタを掻き込みました。「ああ、幸せだ…」

土曜日。今日は男の誕生日でした。予約したケーキが完成したので、男は目を輝かせながら街のケーキ屋へ向かいました。
男が頼んだケーキは3段重ねにした巨大な生地の上に生クリームがたっぷり塗られ、生地の中にも外にも真っ赤な苺が大量に敷き詰められていました。
パティシエはびっくりして男に尋ねました。

「パーティーでもするのかい?」「いや、僕一人で食べるんだ。」

日曜日。街中の食べ物を食いつくした男の体はボールように膨れ上がり、椅子に座れなくなっていました。
男はさすがに食べすぎたと思い、自分の体に合うイスを探しに行こうと、慌てて外へ転がり出ました。
すると突然男の体が地面から離れ、宙へ浮かび始めたのです!

「うわぁ、なんだ!?」男はびっくりして近くにいた人に助けを求めました。皆男を助けようと手を伸ばしましたが、間に合いませんでした。

男は地面からどんどん遠のいていきます。

街の人達は空を見上げて、どんどん浮かんでいく男を指差しながら眺めました。
「助けてくれ、助けてくれぇ~!!」男はそう言うと、風船の様に飛んでいってしまいました。
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