『ドラゴンボール』のキャラクター、ブルマの名前の由来は"ブルーマウンテン"である、という説についての まとめ
はじめに
漫画家・鳥山明 先生の逝去に際し、世界中で これを悼む声が上がっています。
私のX(旧Twitter)の おすすめタイムラインも そんな声で溢れていたのですが、ある日こんなポストを見かけました。
初めて聞く話で驚きました。
本当であれば大変 興味深いと思い、X上で検索してみたところ、『DRAGON BALL 冒険 SPECIAL』(1987年)において、鳥山先生 自ら それに言及されている、というポストを見かけました。
「えっ!俺それ持ってるやん!」と思い、早速 確認してみると…。
また、『ドラゴンボール完全版公式ガイド Dragonball FOREVER』(2004年)には、こんな記載があるそうです。
余談ですが、ブルマの名前は初めから"ブルマ"だったわけではありません。
『BIRD LAND PRESS』や『鳥山明ワールド DRAGON BALL 大全集②』(1995年)、『30th Anniversary DRAGON BALL 超史集』(2016年)等に記載されていますが、ブルマに相当するキャラクターの当初の名前は"ピンチ"です。
というわけで、この話は終了!全員 解散!
…とまあ、ここで終わってしまっても良かったのですが、「ブルマ ブルーマウンテン」の検索結果を眺めていると、元ポストの人物 以外にも同様のことを言っている人が まあ出るわ出るわ…。
公式・非公式は定かではないが、これは さすがに この情報の発信源があるに違いない。
そう思った私は、できるだけ その真相に近付くべく、究明に向けて動き出しました。
この記事は、現時点において私 個人の力で調査した結果を まとめたものです。
誤りが含まれている可能性もありますので、もし ご指摘や情報提供などがあれば、コメントにて どしどし お寄せください。
現時点で発信源と考えられる情報
『ファンロード』1993年4月号に このような記載があることを、所有されている方に ご確認いただきました。
名付けた"そうです"と伝聞スタイルにはなっているものの、カッコ書きで補足されている内容(ここでは お茶ではなく「飲み物」となっていますが)も含めて、この時点で既に説のフォーマットが完成していたことが分かります。
この投稿者が公式Q&Aを断片的に記憶しており、時間の経過と共に錯誤したのか、はたまた周囲で そういう噂が広まっていたのか…。
(この投稿者が鳥山 先生から直接 聞いたというウルトラCの可能性も無くはない)
なお、他の号にブルマの名前の由来に関する記載がないか、所有されている方に ご確認いただいたところ、少なくとも1986年1月号〜1990年12月号には無いとのことです。
説の拡散に一役買ったと考えられる情報
1990年代に巻き起こった、いわゆる"謎本ブーム"。
当時、それに乗じて『ドラゴンボール』の謎本も何冊か作られました。
その中の1つである「孫家の真実 The Truth of DRAGON BALL」(1993年7月ごろ発売?)に、このような記載があるそうです。
『ファンロード』の内容と ほぼ同じ。
これも"説もある"と、断定はしていません。
タイミング的に、『ファンロード』の投稿を流用した可能性が高いのではないかと睨んでいます。
この本も相当 売れたのではないかと推測されるので、ローディスト(『ファンロード』の読者)以外の人に「ブルマ=ブルーマウンテン」説を広める大きなキッカケになったのではないでしょうか。
インターネット上の情報
Googleで検索してみたところ、インターネット上では、おそらく2004年の以下の書き込みが最古の情報ではないかと思われます。
ちなみにX(旧Twitter)においては、2010年の以下のツイートを皮切りに、毎年 誰かしらが この説について つぶやいています。
なお、ツイート内のURLは2001年1月3日に開設したと思しき個人サイトのもので、そこには以下のような記載があります。
これまでの情報は、"だそうです"や"説もある"のように断定を避けた書き方でしたが、これはハッキリと言い切っています。こちらがインターネット上 最古の情報である可能性もありますが、この文章が記された時期が判然としない為、なんともいえません。(2024年3月14日19時30分 追記)
ウェイバックマシンで確認してくださった方によると、この文章が記された時期は2005年11月30日〜2007年2月5日の間であることが判明しました。
「上記 以外の どこかで見た気がするんだよな〜」と思っている人に向けて
・『週刊少年ジャンプ』巻末にある作者コメントで見たような…
→その内容は『30th Anniversary DRAGON BALL 超史集』に網羅されていますが、載っていません
・ジャンプコミックス『ドラゴンボール』の巻末にある「とりやまさんのドラゴンボールなんでもかんでもコーナー」で見たような…
→そのコーナーは12巻まで存在しますが、載っていません
(私が所有しているのは第1刷ではありませんので、念のため初版を持っていらっしゃる方にも ご確認いただきましたが、同様のようです)
・ジャンプコミックス『Dr.スランプ』で見たような…
→『ドラゴンボール』の連載が始まった1984年11月以降に発売された『Dr.スランプ』16〜18巻には載っていないことを、所有されている方にご確認いただきました
・『鳥山明◯作劇場』で見たような…
→載っていません
・『鳥山明ワールド DRAGON BALL 大全集』で見たような…
→所有している友人に確認してもらったところ、載っていないようです
(2024年3月18日21時40分 追記)
・同人誌『みんな愛のせいね 3』(1991年?)の「鳥山明 大先生 The インタビュー‼︎」には載っていませんでした
(2024年3月20日6時55分 追記)
・国立国会図書館にて閲覧された方によりますと、『アニメージュ』1990年6月号の「ワク²鳥山ランド 鳥山アニメ大集合‼︎」には載っていないそうです
(2024年5月19日20時40分 追記)
・所有されている方によりますと、『COMIC BOX(コミックボックス)』1985年11月号の「鳥山明氏の優雅な生活」には載っていないそうです
あと分かっていないこと
「最初の由来はブルーマウンテンだったものの、ブルマーの方と勘違いする読者が後を絶たなかった為、鳥山 先生が面倒だから途中で そっち由来ということにした」というような尾鰭を付ける人もおり、これについても発信源を特定したいところなのですが、文章のニュアンスが多岐に渡る為、困難を極めています。
むすび
現時点では、「ブルマの名前の由来は"ブルーマウンテン"である」という説は、俗に言う「マンデラ効果」の一例である可能性が高いと考えられます。
今回、奇しくも その現象を間近で感じられたのは貴重な経験でしたが、この一件が自らを含めた多くの人にとって、情報リテラシーについて見直す契機の1つとなれば幸いです。