切らない眼瞼下垂手術とは?
まぶたが垂れ下がり視界が狭くなる疾患を眼瞼下垂といいます。加齢や目の手術歴、一重瞼、コンタクトレンズ装用、まぶたをこする癖、などは眼瞼下垂の発症リスクといえます。眼瞼下垂に対する手術法には挙筋腱膜前転、挙筋短縮術、ミュラー筋タッキングなどなど、バラエティーに富んでいるようにみえますが、まぶたを挙上させる筋力を増強する、という点ではいずれの方法も大差はありません。一方、まぶたへのアプローチ法には皮膚側(前面)からの経皮膚法と、結膜側(後面)からの経結膜法の2通りがあり、どちらのアプローチ法を選択するかによって、手術結果に大きな違いがでてきます。
最近、広告などで”切らない眼瞼下垂手術”といったワードを聞いたことがある方も多いと思います。この”切らない”とは、”皮膚を切らない”ことを表す訳ですが、それと同時に経結膜法によるアプローチを意味します。経結膜法では皮膚面に傷跡は残らないうえ、経皮膚法で避けることの出来ないまぶたの腫れや出血といった術後合併症は極わずか(=ダウンタイムが極めて短い)です。
しかし、ここで注意して頂きたいことがあります。国内の形成外科や美容外科における経結膜法の大半は、”埋没法による手術”を指すという事実です。埋没法とは経皮膚法のように創部を展開することなく、結膜面から筋肉(と思われる)部位に通糸する方法です。肝心の筋肉を直視することができないため、手術効果の確実性や永続性(再発が少ない)は必ずしも担保されません。つまり、まぶたの挙がり具合が不十分であったり、手術時には挙がったとしても、またすぐに落ちてしまうといったことが起こりえます。経結膜法としての埋没法は簡便な方法ではありますが、経皮膚法の裏返しということではなく、全く異なる方法なのです。
そこで、経結膜法の利点を生かしながら、経皮膚のような効果が得られる方法を考案してみました。名付けて”経結膜挙筋腱膜タッキング法”です。本法は結膜を切開し創部を展開後、直視下に筋肉を露出させるため、確実に筋力を増強させることができます。私はこの術式を用いるようになり、傷が出ない、手術後の腫れや出血が抑えられるといった経結膜の利点だけでなく、手術効果も経皮膚と同等、もしくはそれ以上の結果を期待することができるようになりました。参考までに手術動画へのリンクを付けておきます(苦手な方は視聴はご遠慮ください。)非常に簡便に、綺麗にまぶたを挙げられることがお分かり頂けると思います。
結膜を切開するアプローチ法は我々眼科医にとっては馴染みある手技であり、眼球を管理できる眼科医(眼形成外科医)が手掛けるべき方法であると思います。”切らない眼瞼下垂手術”は、一見すると魅力的に聞こえるキャッチフレーズではありますが、実際の中身についてよく調べてから(主治医とよく相談のうえ)治療を受けられることをお勧め致します。
まつだ眼科形成外科 https://gankeisei.net
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