石左を見に行った話
大学生の頃、地下室タイムズという諸刃の剣みたいな音楽マガジンを読んでいた。特に石左というライターの記事を読んでいた。
尖り散らかした内容のため、是非についてこの記事では触れないが、個人的には好きだった。
何が好きかというと、例えの上手さと石左の感受性の強さがにじみ出た文章。
ライターなので文章は普通に面白くて、内容が過激ということを除けばすごく読みやすい。そこに石左本人の感じたことや意見が、コンプラや忖度といった世間のしがらみと全く無縁な状態で表現されているのがエンタメとして面白かった。
ずっと記事が更新されていなかったから長いこと見てなくて、つい最近久しぶりに地下室タイムズを見に行ったらちょうどこの年末に、"これで終わり"という旨の記事が投稿されていた。
事実上閉鎖してると思ってたからショックとかはなかったけど、この記事で最後という事実は大学時代の数少ない青春の一つが幕を閉じたような気がして、少ししんみりした。
でも私は石左がインターネット上の他の場所でも生息してることを知っていた。邦ロックバンドのネット記事を書く傍らで音楽活動もやっていて、個人(?)でインストを作ったり、やりたいのかやりたくないのか分からないバンドを続けたりしているのをSNSでたまに見ていた。
久しぶりにそっちも見に行ってみるか、とツイートをたどっていると、どうも所属しているバンドのアルバムが発売されたところで、ツアーをやるらしい。しかもちょうど1ヶ月先くらいに大阪のライブハウスにも来る。これはそういうタイミングなんだと思って、初見バンドも嫌な顔せず付いてきてくれる、というか私のやりたいことに何故かいつも付き合ってくれる友達を誘って行くことにした。
ライブ自体は普通に良くて、歪みまくったギターとちょっとsolf(石左の個人でやってるやつ)感もあって、私の好みのオルタナティブロックだった。
バンドやめたいムーブすごかったから全然興味沸かなかったの後悔するくらい、今後も聴き続けるだろうな、というくらい良かった。
石左は特にライブ中喋ることもなく、なんとなくほんとにJIGDRESSという良さげなバンドを発掘できて、良かったな〜みたいな気持ちで帰るところだった。
ライブが終わって演者が捌けたあと、お決まりのアンコールの拍手。土砂降りの中せっかく来たんだし、と最後まで聞くことにした。
石左が1人出てきて、あとに誰も続いてこない。
と思ったら、めちゃめちゃ石左が喋りだした。ほんとに急にすごい喋りだした。それはもうライブのMC特有の間延びした喋りとはかけ離れた、居酒屋でトイレから帰ってきて引き続き同じテンションで喋り始めるやつみたいな。しかも内容が石左すぎた。その事実がシュールでにやにやしそうだった。
石左のことはいわゆるネット弁慶だと思っていたから、実際はどんな人なんだろう、という野次馬的な動機で見に行ったんだけど、あの記事のまんまなのか、というのは少し衝撃だった。
地下室タイムズはWEB上の記事だし、少しは味付けしたり、香ばしくして目に留まるようにしたりしてると思っていた。でも、実際あのMCを聞く感じ、石左の感受性がすごくてそのまま書くだけで記事になってたのかも。あの記事たちは、濃縮還元されて調整されたものではなく生搾りの石左だったんだ、と何年か越しの時間差で衝撃をくらった。
喋ってた内容は、その日の演奏とかライブに来た人だけが感じるエモーションもあるから置いとこう。
あと最後に、ひとしきり石左が喋り終わったタイミングでボーカルが出てきて、「ありがとね~」といったのが、
単に今日のライブに来てくれたお礼なのか、石左の公開オ〇ニーを黙って聞いてたことへのお詫びを込めたお礼なのか、初見の私には分からなかった。
新しい発見と、久しぶりに石左節を感じれたことでわりと満足感のあるライブだった。
アウトプットする場所変えただけやんけ、とか時計じかけのオレンジくらい見とけよ、とかも思ったけど、来てよかった気持ちが1番だった。
これからもJIGDRESSは聴き続けるし、もし石左が見たくなったらライブに行けば良い。
当時とは違う楽しみ方が今になって出来るようになった収穫は大きい。
私の興味が熱いうちに大阪でライブをやってくれたおかげだ。タイミング大事だし、やっぱしライブっていいな。CDやサブスクでは感じ取れない雑味がたくさんある。
最後に。
地下室タイムズの記事から想定してた年齢と、本人の見た目の年齢が違いすぎることと
ライブ演奏中、1人だけ目がバッキバキで怖かったので、石左の危険度は5。
おわり!
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