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精子や卵子の提供による不妊治療について

男性の100人に1人は無精子症と言われ、無精子症の種類によりますが、非閉塞性無精子症という症状であれば、精子を得られる可能性は30−40%程度と言われています。女性にも早発閉経やがん治療などによる早期の閉経があり、自力での妊娠・出産が困難になる場合があります。

こうした場合、海外では主に若年の健康なドナーから精子や卵子の提供を受けて治療をします。また、海外では40歳を過ぎてからは治療の効率が低下するので、このような場合でも精子や卵子の提供を受けて治療することは少なくないと言われます。フランスなどでは、選択的シングルマザーも多く存在しています。(夫はいないけど、匿名第三者から精子の提供を受けて、妊娠・出産する)

日本では、血縁主義が根強いこともありますし、宗教等によって、価値観は左右されますので、この治療に良し悪しをつけるのはとてもむずかしい問題です。

ただ、選択肢が存在しているのは事実で、この治療を悪いものだと決めつけ、情報を封鎖してしまうのは少し違うような気もしますので、私が知っている範囲での治療方法を記載しておきたいと思います。

卵子や精子の提供を受ける場合

卵子や精子の提供を受ける場合には、ドナー(提供者)の存在が必要不可欠です。そのドナーが、匿名か非匿名かという点によって、治療の可否は実際には変わってくるものと思います。

結論から言えば、国内での匿名ドナーからの提供を受けた治療は現在実施は困難と言われています。ドナーに対する要件が非常に厳しいためです。

慶応大学が中心になって行われていた提供精子による人工授精(AID)というのも現在ドナー不足であることを公表しています。

生まれたお子さんが大きくなった時に、自らの出自を知る権利を保証することが求められており、それがあることでドナーは提供に対してハードルが高くなっていきます。

一方で、非匿名のドナー、例えば兄弟や親戚などからの精子や卵子の提供による治療は、日本生殖医療標準化機構(JISART:ジスアート)が中心になって進めています。

従来、こうした治療は海外で盛んに行われていたのですが、コロナ禍での移動制限が多くある中で実施が困難になっています。

最近では、精子バンクというものも登場しつつありますが、いずれも公的に認められた機関というわけではありません。

もちろん、精子や卵子の提供を受けずとも、子どもを持つことは可能であり、里親里子制度、特別養子縁組制度などがそれにあたります。日本ではこの制度の浸透度が低いことも指摘されています。(これも血縁主義ゆえでしょうか・・・)

今後の行政の在り方や意思決定一つで大きく変わる可能性があるのが、こうした提供精子や卵子を用いた治療です。

個人的な考え

議論すること自体は歓迎ですが、良し悪しをジャッジすることはできないテーマだと思います。出自を知る権利の課題もそうですし、生まれた子どもが大きくなった時にどのような問題に直面するのかをすべて予測するのは不可能です。

選択的シングルマザーについても同じで、子供の立場で考えると愛情がどうこう、みたいなことを表現する方もいらっしゃいますが、シングルマザーであっても愛情豊かな方もいれば、両親揃っていても愛情に欠け、虐待に及ぶケースなんかもありえます。

ただ、個人的には国として、方針は打ち出してほしいなと思います。

信じがたいことに、SNS上などで知り合った自称ドナーの方からなんの感染症の検査も受けていない精液の提供を受ける方がいたり、そこから性的な被害に合う方もいます。加齢などの原因ではなく、先天的な無精子症などで精子がない方が提供精子を用いた治療ができないというのも選択肢が狭すぎる気もします。

生まれてくるお子さんも、不妊症で悩む患者さんも、提供したいと考える提供者の方の未来も明るく照らすような方向に進んでくれることを願っています。

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