【最新論文】卵巣刺激後の卵巣凍結
今回は、卵巣凍結に関する最新論文を紹介したいと思います。
現時点で出たばかりで、全てを読むことができないので、あくまでもレビューという感じで書いてみます。
患者さんによっては、卵巣凍結も卵子凍結あるいは受精卵凍結も行いたいと要望される方もいます。
時間的制約がかなり強い患者さんの場合には、相当タイトなスケジュール管理が求められますが、今回のこの論文のテーマは
「卵巣刺激後に卵巣凍結はできるのか?」
ということですので、卵巣刺激を行い卵子凍結/受精卵凍結→そのまま卵巣凍結ができるか、ということを検証しているものと思います。
というのも、これまでの研究報告からして、卵巣刺激を行い、採卵を行った後の卵巣には血腫があり、排卵後の卵巣には黄体が形成されてしまいます。
この状態では卵巣凍結には適さない、ということから、卵巣刺激後の卵巣凍結は推奨されないというのがコンセンサスです。
今回の研究では、2009年から2021年の間に採卵し、その直後に卵巣凍結を行った58名の患者さんのデータから、卵巣刺激を行った18例、非刺激のIVM群33例が抽出されています。
どちらのグループでも、卵巣摘出手術後に手術合併症は発生しませんでした。
特に、重度の出血は卵巣刺激を行うことと関連していませんでした。
得られた成熟卵母細胞の数は、刺激を受けていないグループ (2.0 (1.0–5.3)、 P < 0.001 ) と比較して、COH 後に増加しました (中央値 = 8.5 (25% = 5.3–75% = 12.0)) 。
卵胞密度も細胞の完全性も卵巣刺激の影響を受けませんでした。
卵巣刺激を行った後の卵巣組織の方が刺激を行わなかった卵巣組織に比べて、血腫が見られました 。
解凍後、病理学的所見は両群間で類似していた。グループ間で血管数の統計的差異は観察されませんでした。
解凍された卵巣組織のアポトーシス率は、グループ間で統計的に差がありませんでした。
ということを報告しています。
ただ、現時点で閲覧ができないので確認できないのですが、結局卵巣組織のどれだけの面積、切片を凍結できたのかがわかっていないです。
卵子については、成熟卵子が何個凍結できたか、で妊孕性温存がどれほどできたかは概ねわかってきます。
しかしながら、卵巣組織はその部分がまだ未知数な要素を含みます。
そのため、片側卵巣を摘出したと言っても、血腫や黄体がたくさんある状態だと、実際に凍結できた面積というのは、少ない可能性もあるわけです。
そして、微小残存病変の観点から、おそらく卵子・卵巣の両方が凍結できている場合、妊娠に向けた治療を行う際には卵子から使っていくのではないかと思います。
そうなると、真の意味でのこの卵巣刺激後の卵巣凍結の有効性が証明されるのは相当先になるんじゃないか、というのが個人的な感想です。
もしも、卵巣刺激を行った卵巣凍結で、卵子を使って妊娠した、という症例がとてつもなく多いのであれば、そもそも卵子凍結でいいんじゃない?という話になってしまう気もします。
このあたりは、まだ臨床研究の段階にある卵巣凍結-融解移植の難しいところではないかと思います。
臨床に関わる方々は、妊孕性温存のシビアさをその身で感じ、短い時間の中でどれだけの可能性を残せるかに賭けています。
その思いをとても感じる研究だなと個人的に感じました。
続報に期待です!
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