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PRP(PFC-FD)卵巣注入について
先日、倫理委員会で審議いただいたのが、実はこのPRP卵巣注入です。
結論から言うと、京野アートクリニックでは、PRP卵巣注入が開始となります。
PRP療法については基本的なことは以下で紹介しています。
また、今回の対象となる、卵巣反応不良(POR)の方については、以下で紹介しています。
治療を行う意義や背景
卵巣反応が不良である方への治療は現在確立されていません。
卵巣予備能はもともと個人差があります。
20代で閉経してしまう方もいますし、40歳でも20代なみに数があるという人もいます。
数には個人差がありますが、質に関しては全体的に加齢と共に下降するという傾向があります。
卵巣反応は多くのケースでは年齢と共に悪くなっていくのですが、
これを回復するための手段がないというのが実情です。
その上、保険診療などの治療回数も限られてきます。
そのため、卵巣反応不良となれば早いうちに、その症状に対して手をうち、
治療を早期に終わらせていくアプローチが求められています。
その一つとして期待されているのが、今回のPFC-FDの卵巣注入です。
対象
今回は卵巣反応不良者を主な対象としています。
早発卵巣不全の方は現時点では対象としていません。
理由は、早発卵巣不全の方への注入は技術的に極めて困難であり、まだエビデンスが少なすぎると判断したためです。
本来は最も早発卵巣不全の方が求めている治療であることは重々承知しておりますが、まずは卵巣反応不良の方々を対象として行うことを決定しました。
卵巣反応不良の定義には、上記の卵巣反応不良のnoteにも記載しているボローニャ基準をベースに採用しています。
要約すると、
・直近の採卵で卵巣刺激を行ったにも関わらず採卵数3個以下であった方
・AMH0.5-1.1ng-mlの方、胞状卵胞数(AFC)が5-7個以下、FSHが10以上に該当する方(すべて月経3日目に測定)
・40歳以上、またはリスク因子※がある方
リスク因子とは、卵巣反応が不良となるような治療歴のある方をイメージすると良いです。最も顕著な例が、子宮内膜症であったり、がん治療のため化学療法を受けたことのある方です。
この方々に対して、PFC-FDの卵巣注入を行います
流れ
採血・PFC-FD作製
PFC=FDを行うには、49mlの採血を行う必要があります。
献血などの量に比べても全く多い量ではないので安心して良いと思います。
9ml分は感染症検査で、ここで陽性となった場合には、PFCーFDの作製ができません。陰性の場合のみ、PFC-FD作製に進んでいきます。
作製には、3週間程度の時間がかかります。
医療機関に返送されてきた後、管理は施設によって異なるようですが、
常温で半年間保管できます。
(患者さんがご自宅で管理するということもあるみたいですね)
月経終了後にPFC-FDを注入
月経中は感染のリスクの観点から、卵巣内に注入するのははばかられるので、月経終了から3-4日の間に卵巣へPFC-FDを注入します。
このとき左右の卵巣、複数箇所に細かく注入していきます。
量としては1−1.5ml程度です。
その周期は、体外受精などの治療は行わず、妊娠判定で陰性を確認した後に治療を始めていきます。
基本は体外受精だと思いますが、ご希望があれば一般不妊治療も可能です。
ただ、最近の報告でも出ているんですが、PFC-FDの効果の持続期間には限界があるという報告も見ています。
そのため、ここまでの治療をしながら、一般不妊治療を行うというのは、
個人的には合理的ではないなと思っています。
効果判定
効果判定には、ボローニャ基準で掲げている項目がそのまま入ってきます。
・採卵個数などの成績
・AMH、AFCの改善
で判断していくということですね。
採卵個数については、難しいところだなと感じるのは、
例えば、同じ患者さんに卵巣刺激を行ったとしても、連続して2ヶ月行った場合に、同じ成績かというとそうではないという点です。
もともと、変動要素が若干あるんですね。
それに加えて、医療者は前回の刺激法と全く同じことをするかというと、当然改良もしていくわけです。
今回、僕のところの計画では原則アンタゴニスト法で行うことにしていますが、カスタマイズは患者さんのためにもするケースが必ず出てきます。
そうなったとき、妊娠への距離は近くなっていきますが、PFC-FDの成果であったかどうかということからは遠ざかってしまうように思います。
AMHやAFCについても、常に同じかというと変動要素もあるのが報告されていますので、この点もなかなかというところでしょう。
こういった臨床家である医療者の視点と、研究者たちの視点を様々に組み合わせて、最大公約数的にベストな研究を作り上げていくのが、うちの場合は倫理委員会です。
多くの方にご参加いただけるような治療となりますので、卵巣刺激がうまく行かない、思ったような成績につながらないという方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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