子宮内ポリープと慢性子宮内膜炎の関係
最近は、慢性子宮内膜炎に関して、多くの紹介をしてきました。
一旦、今回のnoteで連続した紹介はおしまいです。
今回の論文はごく最近の論文で、慢性子宮内膜炎の治療法に一石を投じる内容だと個人的には思っています。
今回の論文は日本の報告です。
2018〜2021年に子宮鏡手術を行い、子宮内ポリープを摘出した不妊症女性350名を対象に、その手術中に子宮内膜を採取して、CD138免疫染色による慢性子宮内膜炎(CE)の診断を同時に実施しています。
診断の基準は、400倍の10視野に5個以上とのことです。
抗生剤投与をせずに、子宮内ポリープの手術後の初回月経周期の黄体期にる慢性子宮内膜炎再検査を実施し、慢性子宮内膜炎が治ったかどうかを確認しています。
コントロール群として、子宮鏡検査で異常を認めなかった89名を設定しています。
その結果として、慢性子宮内膜炎患者には、子宮内ポリープの合併症が多いこと、また、子宮内ポリープ切除によって、約90%の女性が慢性子宮内膜炎が治癒しているということを報告しています。
慢性子宮内膜炎のリスク因子として、子宮内膜ポリープと子宮内癒着を挙げ、逆に中隔子宮はリスク因子低下になることを提示しています。
抗生剤なしの治療で治癒ができることはとても重要なポイントだと思います。
また文中にしめしたように、実は慢性子宮内膜炎に関しては、統一的な診断基準がありません。
今回の論文では、400倍の10視野に5個以上のCD138陽性細胞が認められる場合としていますが、中国の論文では、400倍の20視野に5個以上のCD138陽性細胞が認められる場合に、治療の意義があると紹介しています。
裏を返せば、1-4個などの場合は、病変があっても、慢性子宮内膜炎というほどではなく、治療をしても効果がないということです。
繰り返しになりますが、無病の状態で抗生剤を投与しても、本人の自覚症状として何もないかもしれませんが、将来的に何か別の疾患などで抗生剤を使用したいとなった時に思わぬリスクとなる可能性があることが、かねてから指摘されています。
過剰にならないよう、最適な治療法がこれからも模索されていくものと思います。