癌の種類で得られる卵子の数が変わる
妊孕性温存では、様々な種類のがん患者さんがいらっしゃいます。
最近では、量子標的薬や最近ではがんゲノム医療というものをお聞きになられたこともあるのではないでしょうか。
がんにかかられたとき、正しい情報を持っているか、
あるいは医療関係者から適切な情報の提供を受けることが大切です。
今回は14年間のデータを解析し、妊孕性温存目的で卵巣刺激を行った際の反応が、
がんの種類によって異なる可能性があるという報告をした論文を紹介します。
がんの種類と卵巣刺激の反応
今回紹介するのは以下の論文です。
2000年1月から2014年12月までの間に妊孕性温存目的で治療をした患者さん531名のデータを元に解析を行いました。
このうち実際に治療へ進んだのは306名です。
がんの種類の内訳として、
乳がん:145名
血液疾患:79名
婦人科癌(子宮頚部・子宮体部・卵巣がん):42名
胃腸がん:20名
その他:20名
となりました。
年齢での差を見ると、乳がんの患者の年齢が33.21歳と有意に高く、白血病などの血液疾患では27.76歳と最も低くなりました。
使用したGnRHの量はおおむね各郡に差はなく、卵子を回収できた数でみると、
乳がん:12.89個
血液疾患:14.99個
婦人科癌(子宮頚部・子宮体部・卵巣がん):10.79個
胃腸がん:11.60個
その他:10.65個
となり、血液疾患の群で有意に高い結果となり、婦人科癌で有意に低い結果となりました。
成熟卵の数では、
乳がん:9.64個
血液疾患:13.33個
婦人科癌(子宮頚部・子宮体部・卵巣がん):7.73個
胃腸がん:9.47個
その他:7.23個
となり、血液疾患では得られた卵子に対して成熟卵子の割合が高いですが、その他では概ね7-8割の成熟率でした。
結果をトータルで見ると、婦人科癌に罹患している方が卵回収数が優位に低くなっていると示唆しています。
また、妊娠を試みた22人の患者で32回の胚移植が行われ、胚移植あたりの妊娠率は43.75%であり、累積妊娠率は54.5%でした。
患者さん1人当たりの出生率は22.72%であったと報告しています。
がんの種類によって発症しやすい年齢などが異なることから、患者背景は異なりますし、妊孕性温存といっても、どのような処置が行われているかなど、もう少し詳しく見なければ詳細には言えませんが、印象としては、日本で妊孕性温存が必要になる場合、このデータよりも全体的に年齢が高くなる印象が考えられます。
そうなると、上記のデータに加えて、加齢の要素がかかり、男性側の加齢の影響も少なからず影響してきます。
そうした現地化した情報をきっちりと患者さんにお伝えしていければと思います。
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