ゲノム検査とセカンドオピニオンについて
遺伝子検査で“がんリスク”を診断
2015年女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが3月24日、卵巣と卵管を摘出する予防手術を受けたことを明らかにしました。検査で、がんの兆候となりうる炎症マーカーが見つかった後の手術だったそうです。
ジョリーさんは2013年に乳がんの予防のため両方の乳房を切除しており、今回も同じく“予防的切除”だといいます。ジョリーさんは87%が乳がんに、50%が卵巣がんになるリスクをもたらすBRCA1遺伝子(がん抑制遺伝子の一種)を持っており、実母は乳がんを患った末、卵巣がんで亡くなったそうです。
予防的切除については意見の分かれるところでしょうが、分子生物学の進歩により、将来罹患するであろう病気が、簡単な遺伝子検査で診断できる時代になったことは間違いありません。
「卵巣と卵管を摘出する予防手術は、乳房切除手術ほど複雑ではありませんが、影響はより重大です。女性を、強制的に閉経させてしまいます。ですから、私自身、心と体の準備をしてきましたし、医師と、選択肢について話し合ってきました。代替医療のことも調べてきました。エストロゲンやプロゲステロンの補充に備え、自分のホルモンの計測もしていました。ですが、決断までにはまだ月日があるだろう、と思っていたのです」
2週間前、検査で炎症度が高まっていることが分かり、ジョリーさんと医師は手術を決断しました。夫で俳優のブラッド・ピットは、その時フランスにいたが、手術に付き添うため飛行機で駆けつけた。手術名は、腹腔鏡下両側卵管卵巣摘除術。
ジョリーさんによると、手術で卵巣の1つから小さな良性腫瘍が見つかったが、どの組織にもがんの兆候は無かったという。
ジョリーさんの最新の手記では、2つのことが強調されています。1つは、この決断が彼女特有のものだということ。もう1つは、この決断のもとになったのが、ジョリーさんの家族に伝わる病気の歴史だということ。ジョリーさんは、母親、祖母、そして叔母を、がんで亡くしているそうです。
ジョリーさんは手記の中で、自分以外の女性には、別の選択肢もあると綴っています。
「私には、BRCA1の遺伝子突然変異があります。しかし、それだけを理由に、手術を決めたのではありません。私以外の女性の方に、聞いてほしいのです。BRCA検査が陽性だからといって、即手術というわけではありません。私はたくさんの医師や、外科医や、自然療法家と話をしました。他にも選択肢はあります。経口避妊薬を服用する方もいれば、代替医療に頼りつつ、頻繁に検査を受ける方もいます。どんな健康問題に関しても、対策は1つではありません。1番大切なことは、選択肢について知り、その中から自分の個性に合ったものを選ぶことです」
ジョリーさんはこのように付け加えています。もっと若い女性なら、卵管を除去しつつ、卵巣を残すという選択肢もある。そうすれば、閉経せず、妊娠も可能なままなのだと。
「このような選択をするのは、簡単なことではありません」
「ですが、どんな健康問題に関しても、それをコントロールし、正面から立ち向かうことはできます。助言を求め、選択肢を知り、自分に合った選択をする。それは誰にでもできることです。知識は力なのです」
婦人科腹腔鏡下手術とは?
現在婦人科で行われている腹腔鏡下手術は良性卵巣腫瘍、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、異所性妊娠、子宮内膜増殖症、初期の子宮体がんが対象となります。
入院期間・費用は?
手術費用と入院期間の目安、および1割負担の方、3割負担の方の自己負担金額は以下のとおりです。
※70歳未満の方:3割、70歳以上の方:1割として、医療費+食事代を含めた概算。
項目 入院期間 手術費用(入院費含む) 1割負担者 3割負担者
腹腔鏡下附属器切除術 5日 61万円 6.5万円 19万円
腹腔鏡下子宮全摘術 7日 85万円 8.5万円 26万円
異所性(子宮外)妊娠手術 4日 52万円 5.2万円 16万円
アンジェリーナ・ジョリーさんの手記の全文は、ニューヨーク・タイムズで読むことができる。
アンジェリーナ・ジョリーさん、卵巣摘出を告白「簡単なことではなかった」